ビットコインをはじめとする暗号資産の価格は、今年に入って激しく上下してきた。先月は、トレーダーが米財務省の大転換に賭けてビットコイン価格が反発した。
ビットコイン価格はこの1カ月で20%上昇している。ただし、他の暗号資産はビットコインの上昇率をはるかに上回り、500%の急騰が予想されている。
そうした中、スコット・ベッセント財務長官が厳しい警告を発するなか、米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長と近い関係にある億万長者の投資家スタンレー・ドラッケンミラーが、利下げは「もう必要ない」と語ったと報じられた。
「FF金利(政策金利にあたるフェデラルファンド金利)はすでに景気を抑え込む高い水準にあると言い続けている連邦公開市場委員会(FOMC。FRBの金融政策を決める会合)の一部メンバーは、まったくばかげています」。ウォーシュとベッセントの双方にとって師にあたるドラッケンミラーは今週、ウォール街の経営幹部を集めた非公開の会合でこう語った。フィナンシャル・タイムズが匿名の関係者の話として報じた。
「私は常識を重視しています。世界中の資産価格を見れば、それで十分でしょう」とドラッケンミラーは述べた。そのうえで、いまはウォーシュと話すことを許されていないとしながらも、ウォーシュを「最も親しい友人」の一人であり「すばらしいFRB議長」だと評した。
ドラッケンミラーは、ウォーシュとベッセントに近いことから、FRBと米金融政策についての見解が細かく注視されるようになっている。そのドラッケンミラーが今月初め、ウォール・ストリート・ジャーナルに辛辣な論説を寄せ、かつて師弟関係にあったベッセント財務長官が長期債の利回りを操作して押し下げようとしていると厳しく批判した。
FOMCで投票権を持つ12人のうち、フィラデルフィア連銀総裁のアンナ・ポールソン、FRB理事のマイケル・バーとリサ・クックの3人が、いまのところハト派寄りである。とはいえバーは今月初め、インフレが十分に鈍っていないことをデータが示すのであれば利上げも受け入れる、と述べている。
CMEのFedWatchツールによれば、市場はいま、9月16日のFOMCでの利上げの確率を90%近くと織り込んでいる。
「8月の消費者物価指数(CPI)は、はっきりハト派材料と言える内容ではなく、強弱の入り混じるものでした」と暗号資産ウォレットのBitget Walletでリサーチアナリストを務めるレイシー・チャンは、電子メールでのコメントでこう述べた。
「この結果は、9月16日にFRBが0.25%の利上げに踏み切るという見方を補強します。ビットコインについて言えば、回復が続くためには、米国債の利回りと原油価格が落ち着き、そこに現物ETF(上場投資信託)への資金流入が続くことが必要でしょう。この組み合わせがそろわなければ、ビットコイン価格の反発は一時的な戻りにとどまる公算が大きい。7万5000〜7万6000ドルが当面の下値支持帯で、8万ドルが最初の本格的な上値の試金石になります」
トレーダーは利上げに賭ける動きを強めている。今週の経済指標で、ここ数カ月の物価上昇圧力が期待されたほどには和らいでいないことが示されたためだ。加えて、続く米国とイランの戦争を背景に、原油価格は再び1バレル=100ドル(約1万5400円)を超えている。
「いま起きている転換は異例です」と投資ニュースレターThe Kobeissi LetterのアナリストはXに投稿している。
「市場はいま、2027年7月までに4回の利上げがあることをメインシナリオと見ています。どれほどの変化かと言えば、2026年の年明け時点では、同じ期間に4回の利下げがあると見られていました。9カ月前といまとで、金利の見通しには2%もの開きが生じたことになります」。
ビットコインをはじめとする暗号資産の価格は、一般に金利の低い環境で恩恵を受けると見られている。金利が低いあいだは、トレーダーがリスクの高いテクノロジー株とともに、ビットコインにも資金を振り向けやすくなるからだ。
「これは、FRBが利上げを始めた2022年3月以降で、群を抜いて最もタカ派的な金融政策の見通しです」とコベイシ・レターの調査担当者は書いている。
「はっきりしています。市場は『より高く、より長く』(higher for longer。政策金利の高い水準が長く続くという見方)が戻ってきたと考えており、インフレは居座ると見ています。水曜日は波乱含みの一日になるでしょう」と米国時間9月16日のFRBの政策金利の発表を指して、そう続けた。
FRBの政策金利の決定と同時に、市場はFRB当局者による最新の経済見通し要約(Summary of Economic Projections、SEP。FOMC参加者が示す成長率・失業率・インフレ率・政策金利の予測をまとめたもの)も受け取ることになる。
「全体として、市場がFOMCの決定を待つあいだ、ビットコインは来週も上値の重い展開が続くとみられます」。東京に本社を置くビットバンクで暗号資産のマーケットアナリストを務める長谷川友哉は、電子メールでのコメントでこう述べた。
「FRBが利上げに踏み切った場合、あるいは最新のSEPで年内のさらなる利上げを支持する参加者が増えていた場合、短期金利の上昇とイールドカーブ(利回り曲線)のいっそうのフラット化が、ビットコインに追加の下押し圧力をかけることになるでしょう。当面の焦点は、直近のレンジの下限である7万5500ドルをビットコインが維持できるかどうかです。この水準をはっきり下回れば、8月に積み上げた上昇分をさらに吐き出す展開もありえます。その場合は、心理的な節目である7万ドルが、次の主要な下値目標として浮かび上がってくるでしょう」。



