Forbes JAPAN 2026年10月号は、日本発「世界を変える30歳未満」30人特集。
9年目となる今年の受賞者は、AI革命の真っただなかで先頭に立ち、想像力、知性、そして並外れたグリット(やり抜く力)をもって、「自分が思うより良い未来」を目指す30人だ。彼ら彼女らがつくる「新しい社会、新しい経済」から見えてくるものこそが、日本の未来の希望になる。
野球選手やスーパーヒーローなど、幼い頃は誰しも、何かに憧れるものだろう。それでも、その夢を実際に形にするために動く人は、意外と少ないのかもしれない。
和菓子職人、藤田凱斗は、幼い頃から漠然と「後世に名を残したい」と思っていた。一方で、「自分には秀でた才能がない」とも感じていた。その頃よく見ていた「ドラえもん」。発想の転換で物事を解決するドラえもんの姿に憧れ、自分にしかできないこと、自分の「生かし方」を考えるようになったという。
その後の選択は常に「適応」だったと振り返る。中学卒業後の進路を選ぶ際、学業に励むよりも、子供の頃から好きだった甘いものとものづくり、その両方の要素を併せもつ菓子づくりの道に進んだ。
全国的な食のコンテストでの優勝者を輩出する、三重県立相可高等学校食物調理科製菓コース。クラスのほぼ全員が洋菓子を専攻するなか、あえて和菓子を選んだのも「独自の強み」の探求から。学校を訪れたフランス人パティシエの「フランス人である自分がフランスの食材でつくるのがフランス菓子だ」という言葉に刺激され、日本人として和菓子の世界を新しく捉え直して表現したいと考えた。
高校では、「卒業までに三度、なんらかの賞を受賞する」という目標を立てた。しかし、その計画はすぐに頓挫する。クラスには、自分より遥かに器用な生徒が大勢いたのだ。そこで考え方を変え、チームで挑むコンテストに参加。技術面は他の生徒に任せ、自らは「考える力」、つまりアイデアで貢献する役割を選ぶ。
伝統を守る傾向が強い和菓子の世界は、新たなものを生み出す余地が大きいともいえる。藤田は既成概念にとらわれず自由に発想し、金鍔(きんつば)の上下に薄いクッキー生地を貼り付け、春は桜、夏は新生姜、冬は柚子と、季節に応じた味わいを表現した「春夏冬(あきない)きんつば」で、全国和菓子甲子園で優勝。秋の味をあえて抜かした「秋ない」と、さまざまな味で「飽きない」というちょっとした言葉遊びも散りばめた。




