「菓席」は、ゲストの目の前で和菓子3〜5種をつくるコース仕立て。歳時記などに応じて内容を変え、オリジナルの茶とのペアリングで提供する。
たとえば土用の日のメニューは、笹の葉の小舟を皿に見立て、琥珀糖でつくった木の葉に、角切りにしたフルーツと黒豆を乗せた一口大の「フルーツみつ豆」や、土用の時期に「う」の付くものを食べる風習に着想を得て、柔らかなういろうの生地でつくった「土用餅」を供するなど、香りや食感に至るまで、ここでしか味わえない表現となっていた。
「文化を築くには、何十年、何百年とかかる。いつか後世の人が『菓席というのは、藤田凱斗という人がつくったんだって』と話してくれるようになれば。まずは毎日、目の前のお客様を大切にしていきたい」と藤田。

昨年ミシュランガイドのセレクテッドレストランにも選ばれ、海外からのゲストも増えた。和菓子の材料は、基本的に砂糖と豆と米。プラントベースで、多様な食文化になじみやすい食材がメインになっている。その少ない材料で、驚くほど多様な表現を生み出すのが、和菓子の豊かさ。制限があるからこそ、工夫が生まれる。そこから可能性を探るのが面白いのだという。
また、和菓子には季節を映す繊細な感性に加え、その時代の暮らしや価値観、技術など、さまざまな環境条件の中で生まれてきた「理(ことわり)」がある。時代に磨かれてきた理を大切に、現代の感性と環境に適応した和菓子をつくること。藤田はそれが、和菓子の存在価値を高め、未来へつなぐと信じている。
ふじた・かいと◎1997年、三重県生まれ。三重県立相可高校在学時に「全国和菓子甲子園」で優勝、その他受賞多数。老舗和菓子店「夢菓子工房 ことよ」へ。22歳の若さで工場長となる。2024年開業した「九九九」はオープン10カ月で「ミシュランガイド東京2026」のセレクテッドに選出された。
ジャケット49500円、シャツ24200円/ともにポール・スミス(ポール・スミス リミテッド Tel:03-3478-5600)


