食&酒

2026.09.15 13:45

和菓子を現代にひらく 「菓席」を新たな文化に(藤田凱斗):30 UNDER 30

藤田凱斗|和菓子職人

卒業後は、地元の老舗「夢菓子工房 ことよ」の岡本伸治氏に師事、デモンストレーションの際のアシスタントに志願するなど、積極的にその技術を吸収し、22歳で製造全体を司る工場長となった。

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一方で、働くうちに「和菓子は地域に根ざし、変わらない味を求められることも多い。それ自体が大切な価値である一方、この先もそれだけで和菓子を残していけるのかと考えるようになった」という。

消費者の嗜好や生活様式が変わっていくと同時に、和菓子を取り巻く環境も変わりつつあった。入社当初、成人の日には赤飯を2斗炊いていたが、7年後には半分ほどに。また、かつて職人が手で行っていた工程が機械化されるなど、製造環境が変化するなかで、職人の技術をどのように次代へつないでいくのかにも意識が向くようになった。

フレッシュな旬の食材を、琥珀糖とともに味わう九九九の「中立菓子」
フレッシュな旬の食材を、琥珀糖とともに味わう九九九の「中立菓子」

独立して自分の店をもつか、和菓子の教員になるかと考えていた頃、数々の飲食ブランドを手がける見冨右衛門が和菓子職人を募集しているという情報を目にして応募。もともとはお茶を主とした店にする想定が、藤田が目の前で練り切りをつくる工程に見冨が感銘を受け、コンセプトを変更。

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「茶席に欠かせないものの、引き立て役として捉えられることが多かった和菓子を主役にし、日本の季節感を反映した和菓子体験を生み出すことで、和菓子の魅力を伝える」という思いで意気投合し、「茶席」ならぬ「菓席」の構想が固まった。

約1年半の準備期間を経て、2024年11月、六本木に「九九九」をオープン。忍び笑いにも似たその名前は、茶の湯を大成した千利休への憧れが込められている。利休が後世の茶の湯文化に大きな影響を与えたように、新たな「菓席」という文化を築き上げ、いつか「千になりたい」という思いを込めた。

カウンター8席のみ、野点をイメージした内装だ。通常障子は室内から桟が見えるように設置するが、九九九ではカウンターの向こうの障子には逆に桟が見えない側が使われていて、茶室を外側から見ているような雰囲気がある。難しい作法は気にせず、誰でも気軽に「菓席」を愉しんで欲しい、という想いが込められている。

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文=仲山今日子 写真=帆足宗洋(AVGVST) スタイリング=鹿野巧真 ヘアメイク=MIKAMI YASUHIRO =

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