経営・戦略

2026.09.18 08:15

伝説のバンカー・大櫃が語る、伸びるリーダーの条件(第2回) 弁護士ドットコム・元榮の「逆張り」はなぜ外れないのか


目の前の数字より、時代の変化を見る

advertisement

その執着心が最もわかりやすく表れたのが、弁護士ドットコムが事業として軌道に乗るまでの時期です。

いまではインターネットで弁護士を探すことは珍しくありません。しかし創業した2005年当時は、自分が抱えている問題に詳しい弁護士が誰なのか、一般の人がネットで調べて相談するという行動自体がまだ一般的ではありませんでした。

しかも、弁護士を紹介し、その対価として報酬を受け取ることには法律上の制約があります。元榮さん自身、創業当初は収益化の目途が立っていなかったと振り返っています。それでも弁護士の登録を増やすことを優先し、長い間、弁護士から料金を取らずにサービスを続けました。その結果、会社は8期連続で赤字になります。

advertisement

弁護士業を続けて得た利益を会社の運営資金につぎ込みながら、事業を支え続ける。私が本人から聞いた話では、最後には自宅を引き払い、半年ほど友人の家を転々としていた時期まであったといいます。8期連続赤字というのは、常識的な経営判断であれば撤退を検討すべき局面です。それでも元榮さんは、諦めることなく、逆張りを貫き続けました。

この時期について、元榮さんから印象的な話を聞いたことがあります。事業を続けるべきか悩んだとき、クックパッドなど、自分たちと近いインターネットサービスが黒字になるまでにどれくらい時間がかかったのかを調べたというのです。すると、何年も赤字を続けたあとに事業が立ち上がった会社がある。それなら、自分たちも「まだ失敗と判断する時期ではない」と考えた。

私は、ここに彼の事業を捉える時間軸がよく表れていると思います。ただ我慢していたわけではありません。インターネットで弁護士を探す時代は来る。その前提を持ちながら、利用者を集め、登録する弁護士を増やし、必要なサービスを足していった。そして13年に弁護士向けの有料サービスを本格化させ、翌14年に上場を果たします。

目の前の数字が悪いからといって、すぐに仮説を捨てるわけではない。自分が見ている変化にどれだけ時間が必要なのかを考え、その時間を待てる。これは元榮さんの大きな強みだと思います。

次ページ > 元榮の逆張りの特徴とは

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事