多くの創業者が、素晴らしい数値を並べたダッシュボードを携えて私のところにやってくる。ターゲティングは正確で、ファネルは最適化され、顧客獲得単価(CPA)も妥当だ。しかし、それでもどこか違和感が残ることが多い。最終的に、ブランドを心から愛してくれる人が誰もいないのだ。
ブランドが愛されていないとき、顧客は訪れ、比較し、競合が価格を下げた瞬間に去っていく。創業者は通常、その解決策はターゲティングの精度を上げることだと考えがちだ。だが、原因がそこにあることはほとんどない。
25年にわたり1000以上のブランド戦略を手がけてきた結果、私はブランドが抱える課題のほとんどは、2つの異なる姿に変装した「同一の不具合」なのだと確信するようになった。
ブランドが凡庸になる2つの道
ブランドが平凡、すなわちコモディティ化する第1のパターンは「追従(チェイシング)」だ。創業者は顧客のペインポイント(悩みの種)を特定し、解決策を提示し、ファネルを構築して、それで仕事は終わりだと考える。彼らはあえて深掘りを避けているわけではなく、純粋にそこが底(最深部)だと信じ込んでいるのだ。さらに奥の階層が存在することを誰も教えてくれなかった。そのため、顧客の興味を引くという役割を広告プラットフォームに丸投げしてしまう。そしてプラットフォーム側は、高騰し続ける価格で、彼らに顧客の「関心」をいつまでも喜んでリースし続ける。
その終わりなきトレッドミルの背後にある数字は実証されている。エーレンバーグ・バス研究所のジョン・ドーズ教授による研究(2021年)によると、あるカテゴリーの買い手のうち、特定の時点で実際に購入を検討している状態にあるのはわずか5%にすぎない。残りの95%は、まだ買い物を始めてすらいない。
現在の需要を刈り取るためだけに構築されたファネルは、20人のうち1人の買い手をめぐって、すべての競合と血みどろの戦いを繰り広げていることになる。その一方で、後に購入するであろう19人の記憶には何も残せない。研究者らの発見を要約すればこうなる。記憶されるブランドこそが、選ばれるブランドである。
ブランドがコモディティ化する第2のパターンは「潜伏(ハイディング)」だ。確立された企業にも、かつては独自の「声」があった。しかし、あるステークホルダーが面白いフレーズをボツにしたり、法務部門が神経質になったり、あるいは大胆なキャンペーンが不発に終わったりした。その結果、企業は「革新的なソリューション」や「信頼できるパートナー」といった無難な領域へと退却し、時間の経過とともに、その「慎重さ」を自らのアイデンティティだと勘違いするようになる。それはパーソナリティ(個性)ではない。組織が負った「傷跡」を、パーソナリティと呼び替えているだけだ。
これらは相反する行動に見えるが、動機は同じだ。それは「すべての人に好かれたい」という欲求である。そして、その欲求は決して「恐怖」の姿をして現れることはない。むしろ、プロフェッショナリズム、合理性、あるいは「ブランド保護」といった、もっともらしい顔をして現れる。だからこそ、それを見破るのは極めて難しい。
人が何かを選ぶ「真の理由」
人々が合理的な比較によってブランドを選ぶ機会は、私たちが信じたいと思っているほど多くはない。彼らが選ぶのは、そこに「自分自身を見いだせる」ブランドだ。具体的かつ、あまりに真実を突いたメッセージを発しているため、顧客が「自分と同じように感じている人が、他にもいたのだ」と気づかされるようなブランドである。
その「共感」のひらめきこそが顧客を引き寄せる力(プル)であり、それは貸借対照表(バランスシート)にもはっきりと現れる。モティスタ(Motista)社が主導した調査によると、ブランドと情緒的なつながりを持つ顧客の年間価値は、単に顧客満足度が非常に高いだけの顧客よりも52%高かった。さらに、100以上のブランドにおける10万人以上の顧客を対象とした同社の小売追跡調査でも、同様のパターンが大規模に確認された。情緒的につながっている顧客は、最大2倍の金額を消費し、顧客生涯価値(LTV)は306%高く、ブランドの継続利用期間も3.4年に対して5.1年と長かった。このデータを解釈すると、「満足感」は参加資格にすぎず、「自分を理解してくれている」と感じさせることが最大の成長要因(マルチプライヤー)になるということだ。
また、この共感には、多くのマーケターにとって直感に反するように感じられる法則がある。メッセージが具体的であればあるほど、多くの人がそこに自分自身を重ね合わせるという法則だ。寄せ集めの最大公約数的なメッセージに、自分を見いだす人などいない。誰も遠ざけないようにメッセージの角を削って丸くするとき、ブランドはリスクを減らしているのではない。凡庸であることこそが、最大のリスクなのだ。
あらゆるカテゴリーにおいて、最も愛されているブランドが「最も具体的」である傾向があるのはこのためだ。彼らはまず顧客のリアルな感情を言葉にし、ターゲットではない人々が素通りしていくのを恐れなかった。
「双方向」へ深く掘り下げる
ほぼすべてのブランディング手法は、一方向にしか掘り下げない。顧客調査主導のアプローチは「外側」にのみ掘り進むため、表面的には適切だが中身の伴わないブランド(調査予算に裏打ちされた「好かれたい」という欲求の塊)を生み出す。一方、パーパス主導のアプローチは「内側」にのみ掘り進むため、誠実ではあっても求められないブランドを生み出してしまう。どちらも、やるべき仕事の半分しかできていない。
私が構築した「リコグニション・コード(The Recognition Code)」というメソッドでは、この2つの掘り下げを同時に行うことを不可欠とする。
第1の掘り下げは「外側」へ向かうもので、オーディエンスを動かす要因を探る。彼らがそのカテゴリーや自分の人生について実際にどう感じているか、購入の引き金となる現実世界の瞬間(エーレンバーグ・バス研究所がカテゴリー・エントリー・ポイント(CEP)と呼ぶもの)、そして、単に競合と異なるだけでなく、いかに自社特有の「らしさ」を認知してもらうかを突き詰める。
目指すのは購買行動の奥底にある「人間としての真実(ヒューマン・トゥルース)」であり、それを見つけるための規律がある。「なぜ」と問い続け、ただし最も深い問いではなく、最後の具体的な答えで止めることだ。具体性を超えて掘り下げすぎると、「人は幸せになりたい」といった、ありふれた曖昧な結論に行き着いてしまう。これはすべての人に当てはまるが、誰にとってもピンとこない。
第2の掘り下げは「内側」へ向かうもので、自分たちを突き動かすものを探る。企業が何を信じているのか、そのカテゴリーにおいて何に異議を唱えるのか、たとえそれを口にすることで何人かの顧客を失うことになっても、発信し続けたいメッセージは何か。資金力のある企業の多くがこの掘り下げを完全にスキップしてしまうのは、信念を持つことは、調査を行うことよりもリスクが高く感じられるからだ。
この2つの掘り下げが交わる場所、すなわちオーディエンスが抱く人間としての真実と、企業が実際に抱く揺るぎない信念が重なるポイントに、競合が絶対に真似できない唯一無二のメッセージが存在する。なぜなら、それを語るには、その企業そのものでなければならないからだ。
今四半期に問いかけるべき3つの質問
1. もし自社のロゴを競合他社のウェブサイトのロゴと入れ替えたとしたら、誰かが気づくだろうか? もし誰も気づかないのであれば、語っているのは自社のブランドではなく、そのカテゴリーの一般的な説明にすぎない。
2. 自社が信じていることで、これまで公に語ってこなかったことは何か? 私の経験上、そのようなメッセージは必ず存在し、それこそが顧客を最も引きつける強力な武器になる。
3. 顧客に「なぜ買ったのか」と問いかけているか、それとも「なぜそのような行動をとったのか」を観察しているか? 問いかけることは、後付けの合理化を生み出す。行動こそが、真実を語る。
パフォーマンスマーケティングは顧客の関心をレンタルし、ブランディングはそれを複利で蓄積する。これは単なるスローガンではない。マーケティングの費用対効果に関する研究において、最も頻繁に実証されている知見の1つだ。
レス・ビネットとピーター・フィールドが1000件近くのIPA(英国広告代理店協会)の有効性事例を分析したところ、市場シェア、価格決定力、顧客獲得コストの削減といった、最も強力な長期的成果をもたらしたのは、予算の約60%をブランド構築に、残りの40%をアクティベーション(直接的な購買行動喚起)に割り当てたケースだった。アクティベーションに偏りすぎたキャンペーンは、創業者が私のオフィスに持ち込む課題とまったく同じパターンをたどる。すなわち、短期的には急成長するものの、長期的には衰退していくのだ。
したがって、次の10年を制する企業は、最も効率的にターゲティングを行った企業ではない。具体的で真実味のある言葉をいち早く語る勇気を持ち、それによって最適な顧客に「自分たちのことだ」と気づかせることができた企業なのだ。



