米国との貿易交渉が決裂したことを受け、カナダは欧州連合(EU)の「準加盟国」となる可能性も視野に、同連合との関係強化に向けた交渉を進めている。米紙ウォールストリート・ジャーナルが12日報じた。
EUはこれまで、個々の国に対して柔軟な加盟形態を認めることに消極的だったが、同連合とカナダ双方の関係筋が同紙に語ったところによると、欧州側は同国が準加盟国となることには前向きな姿勢を示しているという。これが実現すれば、カナダにとってここ数十年で最大規模の方向転換となる。長年にわたり、カナダにとって最大の貿易相手国は米国であり、昨年も輸出の約72%が同国に向けられていた。
ウォールストリート・ジャーナルによると、カナダとEUの合意に向けた詳細は協議中だが、北極海を経由した肥料の輸送や新たな天然ガスパイプラインの敷設などが盛り込まれる可能性があり、欧州にとってはロシア産天然ガスへの依存から脱却する一助となるかもしれない。また、大西洋の両岸で米国のテクノロジー企業に対する警戒感が強まる中、カナダとEUが協力して新たな海底ケーブルの敷設や人工衛星の打ち上げ、データセンターの建設などに取り組む可能性もある。
カナダのマーク・カーニー首相はかねてより欧州との深い結び付きを維持してきた。同首相は英オックスフォード大学で学び、2013~20年まで英イングランド銀行(BOE、中央銀行)の総裁を務めていた。ウォールストリート・ジャーナルの報道によると、カーニー首相はフランスのエマニュエル・マクロン大統領をはじめとする欧州の首脳と定期的に連絡を取り合っており、カナダ人がビザ(査証)なしでEU加盟国に居住・就労できるようにする計画について協議を重ねてきた。さらに、学生が国境を越えて加盟各国の大学で授業を受けられるEUの留学制度への参加も模索していると伝えられている。
カーニー首相は来週、英リバプールと仏ストラスブールを訪問する。同首相は欧州議会で演説するほか、貿易、投資、安全保障の分野でカナダとEUの連携を強化するため、同議会の議員らと会談する予定だ。この訪問で、同首相がEUの準加盟国としての地位に向けた公式な計画を発表するかどうかは明らかになっていない。
カーニー首相は先月、自国の交渉担当官に米国との協議から退席するよう指示したことで、両国の貿易交渉は決裂した。カナダと米国は関税合戦を繰り広げており、対立はここ数日、激化している。ドナルド・トランプ米大統領は先週、カナダ産の乳製品やアルコール類など、一部製品の輸入を禁じたほか、カナダの航空機メーカーであるボンバルディアに対し、米国外で製造された航空機を同国で販売することを禁止すると警告した。
トランプ大統領は昨年の就任以来、カナダを米国の「51番目の州」にすると繰り返し発言しているほか、先月には両国の国境にまたがる五大湖の1つ、オンタリオ湖の名称を「アメリカ湖」に変更するといった極端な措置を取るなど、二国間関係は急速に冷え込んでいる。



