地味なビジネスでも参入障壁を築ける
特許技術や画期的な製品がなければ、競争優位性を築くことができないとは限らない。確立されたサービス業であれば、数十年をかけて地域社会での信用を培い、長年にわたる顧客関係や熟練した従業員、専門知識、ライセンス、仕入先との関係、継続的な契約などを有していることが多い。こうした優位性は、決して華々しいものではない。しかし、競合他社が容易に模倣したり、再現できるものでもない。
これは、起業家が買収を検討する上で重要なポイントである。買収で手に入れるのは、単に今期の売上だけではなく、将来にわたって売上を生み出し続けることを可能にする事業基盤なのだ。
さらなる価値を生み出す余地もある
既存企業の中には、十分にポテンシャルを引き出せていないにもかかわらず、事業として成功しているケースも少なくない。価格は何年も見直されておらず、財務報告は最低限のレベルにとどまっている。売上は口コミに大きく依存し、業務プロセスは手作業のままだ。テクノロジーは時代遅れになっており、マーケティングはほとんど行われていないといった具合だ。こうした点は、買い手にとって成長の機会となり得る。
価格設定、テクノロジー、財務管理、営業プロセス、業務システムを改善することで、収益性を向上させながら事業を拡大できる可能性があるからだ。起業家は、ビジネスモデルをゼロから生み出すのではなく、既に機能している仕組みを改善すればよいのだ。
地味なビジネスが全て優良企業とは限らない
地味なビジネスの買収を起業の新たなトレンドとして安易にもてはやすことは危険だ。冷暖房の需要が絶えないからといって、全ての空調設備会社が魅力的な買収対象となるわけではない。利益率が低下していたり、設備が老朽化していたり、特定の顧客への依存度が高すぎたり、従業員に問題を抱えていたりする可能性がある。あるいは、重要な顧客との関係をオーナーが全て個人的に管理しているかもしれない。
既存企業を買収することは、起業に伴うリスクの形が変わるだけであり、リスクそのものをなくすわけではない。買い手となる起業家は、収益の質、顧客基盤の持続性、経営陣の力量、そして現オーナーがいなくなっても事業を円滑に運営できるかどうかを見極める必要がある。
結論
起業家になるために、ネクスト・ビッグ・シング(次の大ヒット)を生み出す必要はない。地味な業界で何十年にもわたって顧客に製品やサービスを提供し、健全なキャッシュフローを生み出し続けてきた企業の中にこそ、チャンスが潜んでいる場合もある。
目指すべきは、地味なビジネスを見つけることではない。ありふれたビジネスの中に隠れた、優れた収益構造を持つ企業を見つけることなのだ。


