選挙もまた、たとえ予想通りの結果であっても多大な影響を及ぼすことがある。昨年末に実施されたチリの大統領選挙では、右派の勝利が広く予想されていたため、専門家やエネルギー企業は、同国が有する膨大なリチウムと銅の行方を注視していた。
いかなる合意であれ、そこには何らかの譲歩が伴うことになるだろう。中国の輸出規制緩和と引き換えに米国の関税を引き下げるといった、相互の変更を伴う「譲り合い」を回避する唯一の方法は、外交上の「切り札」を切ることしかない。
こうした取り組みで、ロシアは「不確定要素」となるかもしれない。ロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官は9日、米中首脳会談の直後に、ロシア、中国、米国による3カ国会談が行われる可能性を示唆した。
この重要鉱物を巡る駆け引きで、中国と米国が主要な役割を担っていることは言うまでもないが、ロシアの存在も決して軽視できない。中国が昨年、輸出規制を発動したタイミングで、ロシアは米国と重要鉱物に関する協議を開始した。この協議は結局実を結ばなかったものの、重要鉱物を巡る影響力を行使するのであれば、クレムリンを抜きにはできないという、ロシアからの警告となった。とはいえ、中国が大幅な譲歩を行う動機がないのと同様、ロシアにもその意思はほとんどない。
ロシアの国内情勢を鑑みても、米国が中国との交渉を有利に進められるような状況は生まれそうにない。ロシアでは18~20日にかけて下院選挙が予定されているため、それまではクレムリンが譲歩と受け取られかねないような動きを見せることはないだろう。同国のウラジーミル・プーチン大統領が率いる与党「統一ロシア」の議会での過半数確保は確実視されている。そうなると、ロシアが改めて提案を行う余地があるのは、習主席が訪米する21~24日までの短い期間に限られることになる。もしロシアが中国の独占状態を弱めるという大義名分を掲げて米国にレアアース分野での協力を持ちかけるとすれば、恐らくこの限られた期間内に行われることになるだろう。
米国は合意を勝ち取ることができるのか
習主席の訪米を控えた現時点で、こうした一連の状況は米国にとって決して好ましい兆候とは言えないが、かといって壊滅的な事態というわけでもない。当面の間、米中間の膠着(こうちゃく)状態は、決定的な解決に至るというよりは、むしろ秩序ある管理へと向かう公算が大きい。それでもなお、両国関係で何らかの合意や進展があるとすれば、エネルギーや重要鉱物の分野だと予想される。
したがって、最も重要な問題は、トランプ大統領が習主席から譲歩を引き出せるかどうかではない。米国がこの会談を利用して、中国への依存を固定化させることなく、いかにして時間を稼ぐかという点にある。中国の輸出規制が一時的に緩和されれば、米国の製造業は安定するだろうが、それによって米国内の精製能力が増すわけではなく、加工処理を巡る地理的構造の根本が変わるわけでもない。
米中間の既存の取り決めが、この問題を如実に物語っている。中国は昨年初頭、レアアースを含む重要鉱物の不足に対する米国の懸念に対処することで合意し、米国は広範な経済的譲歩を引き出したが、中国は同年10月に輸出規制を拡大した。現在は規制が一時停止されているが、その停止措置も11月10日に期限を迎え、それ以降は再び規制が適用されることになっている。したがって、単にその措置を延長するだけの新たな合意は、有用ではあるものの危険を伴う。もし米国が新たな合意を口実に問題の先送りを図れば、中国は単なる交渉上の譲歩を勝ち取るよりはるかに大きな成果を収めることになるだろう。すなわち、そもそも譲歩を必要とする構造的な優位性を維持することになるのだ。


