欧州

2026.09.14 08:00

「サイバーパンク・ウォー」 ウクライナは米国製兵器をどのように転用しているのか

米国製の空対地ミサイル「AGM-114Lヘルファイア」などを転用したウクライナの防空システム「STASH」が、ロシア軍のシャヘド型自爆ドローン(無人機)を迎撃する様子。ウクライナ空軍第208対空ミサイル旅団が公開した動画から

米国製の空対地ミサイル「AGM-114Lヘルファイア」などを転用したウクライナの防空システム「STASH」が、ロシア軍のシャヘド型自爆ドローン(無人機)を迎撃する様子。ウクライナ空軍第208対空ミサイル旅団が公開した動画から

ウクライナでの戦争では、転用された技術が大きな役割を果たしてきた。たとえば、ホビー用のクワッドコプター(回転翼4枚のドローン=無人機)は偵察に使われるようになり、FPV(一人称視点)レーシングドローンは「ミニ誘導ミサイル」に変貌を遂げた。既存の技術を本来は想定されていなかった新たな用途に使うこの種の“ハック”は、「ハイテク・ローライフ」を特徴とするディストピア的SFのジャンル、サイバーパンクの本質でもある。

「ストリートは物の使い道をみずから見つけ出す」──。ウィリアム・ギブスンが1982年のSF短編小説『Burning Chrome(クローム襲撃)』で生み出した一節は、サイバーパンクを象徴するスローガンのひとつになっている。

この言葉はウクライナの現実にも重なる。限界状況を生きるウクライナの人々は、手に入る技術を賢く活用することで生き延びてきた。ガレージで製作されたロボット車両は、前線で物資を補給したり負傷者や遺体を後送したりしている。タブレット端末は戦場の情報ノードになっている。スマートフォンのマイクは、ドローンを探知するネットワークを支えている。

見過ごされがちなのは、ウクライナでは米国製のハイテク兵器も転用されていることだ。それらは元々、かなり違ったタイプの戦争を想定して設計されたものだが、ドローンが遍在する現在の戦争に合わせて別の用途に活用されている。まさに、サイバーパンクの流儀を地で行くものだ。ウクライナの現場では、何であれ手に入るハードウェアは、本来の用途にとらわれず、新たな使い道を探り出していくという発想がはたらいている。

ヘルファイア対戦車ミサイルを転用したSTASH防空システム

米国の空対地ミサイル「AGM-114ヘルファイア」(名称は「ヘリコプター発射ファイア・アンド・フォアゲット=撃ち放し」に由来するとされる)は1980年代、ソ連軍の機甲部隊に対処するために配備が始まった。重量約45kgのレーザー誘導式超音速ミサイルであるヘルファイアは、最も重装甲の戦車さえ撃破できる強力な弾頭を備え、AH-64アパッチ攻撃ヘリコプターなどに搭載される。

派生型の「AGM-114L(ロングボウ・ヘルファイア)」は1990年代に生産が始まった。このミサイルにはミリ波レーダー・シーカーが搭載されており、誘導ではレーザー指示に代え、AH-64Dアパッチの特徴的なマスト(主回転翼の軸上の支柱)搭載レーダーとのリンクを利用する。

ウクライナの戦場では、防空システムの存在により、ヘリコプターが戦車などの目標にミサイルを発射できるほど接近できるケースはめったにない。もっとも、現在はFPVドローンが大量に投入されるようになった結果、戦車は大きな問題ではなくなっている。一方、シャヘド(ゲラニ)型自爆ドローンは大きな問題になっている。そこで考え出された解決策のひとつが、ヘルファイアを対シャヘドの迎撃ミサイルに転用することだ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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