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2026.09.15 12:55

「オープンウェイト」はオープンソースではない──企業が問うべきAIのコスト・制御権・主権

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2026年、私が助言している最高経営責任者(CEO)や取締役会から、同じ質問を繰り返し受けてきた。AIモデルはオープンなものを選ぶべきか、それともクローズドなものを選ぶべきかという問いだ。AIモデルをオープン型とクローズド型のどちらにするかという経営課題は、テクノロジー業界のニュースにも表れている。

データ分析企業パランティアのアレックス・カープCEOは米国時間2026年7月1日、米CNBCに出演し、最先端AIモデルを開発する企業が顧客から「アルファを盗んでいる」と非難した。ここでいうアルファとは、顧客企業が持つ競争優位の源泉となる知的財産(IP)を指す。11日後の2026年7月12日、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOもXへの投稿でカープの問題提起を広めた。エヌビディアは、AIモデルやデータ、アプリを共有できるプラットフォームHugging Faceを129億3000万ドルで買収することで合意し、買収後も同サービスの開放性を維持すると約束した。270を超える企業・団体は「オープンウェイトと米国のAI主導権」と題する書簡に署名している。オープンモデルは、開発者だけが選択する技術ではなく、経営会議で判断すべきテーマになった。

AIモデルの「オープン」は5段階、ウェイト公開だけでは最上位ではない

私の結論は、AI業界ではモデルを「オープン」か「クローズド」かの2種類に分けて語ることが多いが、実際の開放性はそれほど単純ではないということだ。どこまで情報を公開しているかによって、開放性には段階がある。

編注:本稿でいう「開放性」とは、AIモデルについて、ウェイト、ライセンス、学習手法、学習データ、コード、チェックポイントなどを、どこまで第三者に公開し、利用・検査・改変・再現できるようにしているかという度合いを指す

第1段階のAPI利用では、利用者はモデル本体やウェイトを手元に置かず、提供企業が管理するモデルへ外部から接続して使う。そのため、以下の5段階では最も開放性が低い。ウェイトは、学習結果を反映したモデル内部のパラメーターである。開放性が低い順に並べると、次の5段階になる。

1. 提供企業のAPIを利用料を払って使う

2. 制約の厳しいライセンスでモデルのウェイトを公開する

3. 制約の緩やかなライセンスでモデルのウェイトを公開する

4. モデルのウェイトに加えて学習手法も公開する

5. ウェイト、学習データ、コード、学習途中に保存したモデル状態であるチェックポイントまで公開し、第三者がモデルを再構築できるようにする。いわゆる「オープンサイエンス」と呼ばれる考え方だ

「オープン」と宣伝されるモデルの大半は、第1段階か第2段階にとどまる。「オープンウェイトと米国のAI主導権」書簡に署名した270超の企業・団体が作る業界連合も、軸にしているのは、第2段階の「制約の厳しいライセンスでウェイトを公開する」方式だ。規制産業や各国政府のように、学習データやモデルがどこから来たのかという出所・来歴を最も厳しく確認する必要がある買い手ほど、実際には開放性が低い選択肢を提示されている。

私は、オープンウェイトと、データやコードまで公開するオープンサイエンスとの違いについて、OpenAIのgpt-ossモデルがAWSで提供された2025年8月28日から書き続けている。2026年9月3日には、ムハンマド・ビン・ザーイド人工知能大学(MBZUAI)の基盤モデル研究所(IFM)が「オープンサイエンス」と位置づけ、モデルやコードをApache 2.0で公開するK2 Horizonについて、詳しい分析記事も掲載した。本稿では、MBZUAI学長でIFM創設者のエリック・シンにも話を聞いた。なお、IFMは私が率いる調査会社Moor Insights & Strategyの顧客であり、本稿で触れるエヌビディア、IBM、マイクロソフト、メタ(Meta)なども同社の顧客である。

編注:本稿でいう「オープンサイエンス」とは、ウェイトだけでなく、学習データ、コード、学習手法、チェックポイントなども公開し、第三者がモデルを調査・再現できるようにする公開方針・研究アプローチを指す。「オープンサイエンス」はライセンス名ではない。K2 Horizonの例であれば、モデルとコードに適用されるライセンスとしてはApache 2.0を採用している

シンは、開放性の違いを家に例えた。「私たちが考える開放性とは、家を買うときに、すべての設計図、資材の資料、施工の詳細、法的書類も一緒に手に入れることです。問題が起きれば、どこを直せばよいか分かります。改築したければ、さらに手を加えられます」。シンにとって、APIだけを利用する方式はホテルの一室を借りるようなものだ。オープンウェイトは家そのものを手に入れられるが、設計図が付いていない状態に相当する。

ウェイト公開だけでは、オープンソースAIとならない

業界には、開放性を測る代表的な2つの基準がある。非営利団体Open Source Initiative(OSI)が策定した「オープンソースAIの定義」では、モデルのパラメーター、学習と推論に使う完全なコード、実質的に同等のモデルを再構築するために十分な学習データ情報の公開を求めている。この基準では、メタが「オープンソース」をうたうLlamaは要件を満たしていないとOSIは判断した。

AIモデルの性能評価を手掛けるArtificial Analysisの「開放性指数」は、モデルを0~100点で評価する。評価対象は、ウェイトを入手できるか、どのようなライセンスで使えるかという「利用可能性」と、学習手法や学習データをどこまで確認できるかという「透明性」だ。OSIとArtificial Analysisの考え方に共通するのは、ウェイトを公開しただけでは十分にオープンとはいえず、データやコードまで公開して初めて最上位の開放性に達するという点である。

同じモデル群でもライセンス条件は大きく異なる

同じモデル群でも、ライセンス条件は異なる。中国アリババのQwen3.8-27Bは制約の緩やかなApache 2.0で公開されている。これに対し、Qwen3.8-Flash-Nextを第三者向けのモデル提供サービスやAIを使った業務支援サービスとして商用利用する企業は、売上規模にかかわらず、事前にQwenから別のライセンスを取得しなければならない。

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