公開範囲が広くても実務性能が高いとは限らない
Artificial Analysisの開放性指数で上位から見ると、モデルはいくつかの層に分かれる。最高の89点で並ぶのは、IFMのK2 Think V2とK2-V2、アレン人工知能研究所(Ai2)のOLMoシリーズ、スイスの国家規模AI研究プロジェクトSwiss AI InitiativeのApertusだ。企業が開発するモデルでは、Linux Foundationのライセンスで提供されるエヌビディアのNemotron 3 Ultraが83点、IBMのGranite 4.2が72点となっている。
その下では、DeepSeek V4とZ.aiのGLM-5シリーズが44~50点、メタのMuse Glimmerが44点である。OpenAIのgpt-oss-120b、グーグルのGemma 4、MoonshotのKimi K3はいずれも39点だ。Llama 4と、2兆4000億パラメーターを持つアリババのQwen3.8は28点。クローズドな最先端モデルは6点にとどまる。
中国勢は価格当たり性能で優位だが、透明性では順位が下がる
AIとしての性能を示す知能指数と組み合わせると、別の差が見える。同じ費用で得られるAI性能では中国勢が優位だが、透明性は低い。Kimi K3はArtificial Analysisの知能指数で約60点、開放性指数で39点。Qwen3.8は58点と28点、DeepSeek V4 Proは53点と44点である。IFMなど、ウェイトだけでなく学習データやコード、学習手法まで公開する開発者が、性能と透明性の両立という課題をどこまで克服できるかは、まだ分からない。
米国企業は主力モデルを閉じ、他のモデルでウェイトを公開する
メタはアリババと同様、2026年にモデルごとに公開方法を変えた。Muse Sparkは2026年4月にクローズドモデルとして提供されたが、Muse Glimmerは2026年8月にApache 2.0で公開され、DeepSeekと同程度の透明性を備えた。主力モデルはクローズドのまま維持し、主力ではないモデルのウェイトを公開する方式は、OpenAIやグーグルを含む米国企業で共通する形になっている。それでも、最も開放的なモデルでさえ、先に示した5段階では第3段階にすぎない。
企業業務では中国のオープンウェイトモデルが先行する
Signal65のPinnacleで企業のAIエージェント業務を比べると、別の順位になる。測定済みのオープンウェイト構成で最も高性能だったのは、中国のGLM-5.2だ。全モデルではClaude Opus 5、GPT-5.6 Sol、Claude Sonnet 5に次ぐ4位だった。上位10構成のうち6つを中国のオープンウェイトモデルが占めた。
これに対し、Llama 4 MaverickとLlama 3.3は、280件の業務を1件も最後まで完了できなかった。NemotronとK2 Horizonはまだ測定されていない。両モデルの結果が出るまでは、企業業務向けのオープンウェイト競争では中国勢が大差で先行している。
AI企業がウェイト公開で止まるのは投資で生んだ価値を守るためだ
AIモデルの開発企業が、ウェイトだけを公開して、それ以上の情報を開放しないのには合理的な理由がある。「徹底的にオープン」なモデルを作るシン自身が、クローズドを維持する立場の論理を明快に説明した。「AIを商品と捉えるなら、その価値を守る権利も動機も十分にあります」。では、なぜシン自身は開放性を重視するのか。「AIを今なお進化中のインフラと捉えるなら、守ろうとしているものは守る価値がありません。2週間後には、その技術はもう時代遅れになっているからです」
事後学習への投資と非公開データが企業の資産になる
価値がどこにあるかについては、私は徹底的な開放を求める人々と意見が異なる。シンも、OpenAIとアンソロピックが、基礎学習を終えたモデルを幅広い細かな用途に対応させる事後学習へ巨額を投じており、ウェイトを公開すれば、その投資で生み出した価値を手放すことになると認めた。シンは、両社が将来守ろうとするのはモデルの設計そのものではなく、営業秘密とデータになると予測する。私もそう考える。モデル自体はインフラになりつつあり、非公開データを使って特定用途へ最適化する部分が資産になりつつあるからだ。
学習データ公開は著作権問題を招き、ウェイト公開はモデル蒸留を容易にする
企業がクローズドモデルを維持する理由には、より都合の悪いものも2つある。学習データを開示すれば、著作権訴訟を抱える企業が受け入れたくない精査を招く。ウェイトを公開すれば、既存モデルを使ってより安価な複製モデルを学習させる「モデル蒸留」も容易になる。2026年7月の投稿でKimi K3について書いた際、私は「FableなくしてKimi K3なし」と表現した。


