40マイルのバックパッキングの旅に出て4日目、累積標高差が7000フィートを超えたとき、グリット(やり抜く力)は抽象的なリーダーシップ用語ではなくなった。それは、次の遠征に備えてさらに先のキャンプ地まで進むという決断となった。危険な積雪や滑落の危険を避けるために、山を直登することを意味した。1時間以上も雹(ひょう)が地面を叩きつけるなか、テントの中で冷静さを保つことを意味した。そのような瞬間、私はただ耐え抜くしかなかった。しかし、困難な状況に直面したときに、やり抜く力が突然湧き出てくるわけではない。それは、日頃の姿勢や努力、そして習慣を通じて、事前に形成されるものなのだ。
目標は進むべき方向を定めるかもしれないが、実際に動くかどうかを決めるのは習慣である。ビジネスの世界において、ビジョン、戦略計画、重要業績評価指標(KPI)にはすべて価値があるが、それらは目指す成果を伴わない日々の行動を補うことはできない。グリットとは、適切な習慣を築き、状況が困難になったときにそれを強化し、現在のやり方が機能しなくなったときにそれを変える規律のことである。
なぜ、グリットは「決断」から始まるのか
息子が高校1年生のとき、サッカー部の選考に落ちて、私の車に向かって歩いてきたときの姿を私は決して忘れない。彼の目には涙が浮かび始め、私の隣に座る頃には、抑えきれずにむせび泣いていた。チームに残れたかどうかを尋ねる必要はなかった。
コーチから今年はサッカー部でプレーできないと告げられたとき、息子はコーチの目をまっすぐ見て握手を交わし、「機会をいただきありがとうございました」と言った。その後、彼は自分が本当に何を望んでいるのかを決めるために数週間を費やした。落胆は痛切なものだったが、それによって「それでもサッカーを続けたいのか?」という率直な問いに向き合わざるを得なくなった。
彼の答えは「イエス」だった。だから、彼は習慣を変えた。遠征主体のクラブチームに加入し、自宅でトレーニングを重ね、結果が変わる保証がないなかでも努力を続けた。彼は2年生で下部チームに選ばれ、最上級生のときには一軍チームに入った。彼の成長は、一度の劇的な瞬間によってもたらされたのではない。きわめて困難な決断の後に重ねられた、度重なる選択の結果だった。それこそがグリットである。
同じ原則がビジネスにも当てはまる。組織が苦境に立たされるのは、アイデアが不足しているからではないことが多い。優先順位が不明確であったり、アカウンタビリティ(責任の所在)が曖昧であったり、チームの足並みが揃っていなかったり、あるいは日々の行動がリーダーシップの承認した戦略を裏付けていなかったりするからである。
ある複雑な臨床プログラムにおいて、グリットとは、複数の機関がより高いレベルの業務エクセレンスへと進むのを支援することを意味していた。その業務には、役割と責任の明確化、内部対立への対処、アカウンタビリティの確立、そして合意事項の継続的な追跡が必要だった。自分たちが「やる」と言ったことは実行しなければならず、それが実際に実行されたかどうかを可視化する必要もあった。
そのような環境におけるグリットとは、頑固さではなく、規律ある実行だった。それは、困難な問題を避けて通るのではなく、正面から立ち向かうことを意味した。目の前の危機が去った後も役立ち続けるプロセス、ツール、テンプレートを作成することを意味した。そして、組織を自分たちが関わる前よりも強い状態にすることを意味した。
これは重要な区別である。グリットとは、単に力任せに押し進めることではない。時には方向転換し、プロセスを再構築し、あるいは現在の習慣が目標の妨げになっていることを認める必要がある。
グリットを鍛える3つの実践
グリットは生まれ持った資質のように感じられるかもしれないが、リーダーは3つの実践的な規律を通じて、それを身につけることができる。
1. 重要なことを明確にする
すべての山が登るに値するわけではない。グリットは、自分が何を達成しようとしているのか、そしてなぜそれが重要なのかを理解することから始まる。その明確さがなければ、粘り強さは無駄な努力に終わりかねない。
リーダーは、組織の優先事項をチームの責任や個人の行動に結びつけられなければならない。自分の仕事がどのように有意義な成果に貢献しているかを理解していれば、人はより粘り強く取り組むことができるからだ。
明確さは、リーダーが「何をやめるべきか」を決める際にも役立つ。集中とは、目的地を選ぶことだけではない。前進を妨げる障害を取り除くことでもある。
2. 日々の習慣を目標に合わせる
戦略は、繰り返される行動によって現実のものとなる。協働が重要であるなら、リーダーはコミュニケーションや意思決定の共有を支える習慣を作らなければならない。アカウンタビリティが重要であるなら、約束された事柄を文書化し、追跡し、見直さなければならない。イノベーションが重要であるなら、チームには新しいアプローチを試すための時間と許可が必要である。
意図と実行の間のギャップは、多くの場合「習慣のギャップ」である。リーダーは、自身のスケジュール、会議、決定事項、そして評価制度が、重要だと主張する成果を真に強化しているかどうかを、定期的に問い直す必要がある。もしそうなっていないのであれば、本当の優先事項は目標ではなく、その習慣の方なのだ。
3. 責任を持ち、適応する
グリットには粘り強さが必要だが、それは客観的な現状認識を伴うものでなければならない。優れたリーダーは、単に自らの熱意を証明するためだけに、効果のないアプローチを使い続けたりはしない。彼らは進捗を評価し、挫折から学び、目的を放棄することなく調整を行う。
アカウンタビリティがこれを可能にする。明確な期待、可視化された指標、率直な対話は、一時的な困難と根本的に欠陥のあるアプローチをチームが見分けるのに役立つ。
グリットとは、変化を拒むことではない。成果をあきらめることを拒むことなのだ。
目の前にある山
水がゆっくりと石を穿つように、習慣は私たちがどのような人間になるかに深く、持続的な影響を与える。私は、自分の子供たちが拒絶や不安、厳しいスケジュール、そして高い目標に直面したときに、彼らのグリットを目にしてきた。また、不確実性や内部対立、そして誰も解決したことのない課題に直面する組織のなかにも、それを見てきた。どの場合においても、グリットはスローガンではなかった。それは、一連の行動パターンだった。
すべてのリーダーは、遅かれ早かれ、ビジョンだけでは越えられない山に遭遇する。問いは、単にその目標が重要かどうかではない。日々の行動がその目標を裏付けているかどうかである。
あなたは何を達成しようとしているのか。どの習慣があなたを目標に向かわせているのか。どの習慣が、知らず知らずのうちにあなたの邪魔をしているのか。困難が訪れたとき、あなたのルーティンはあなたを前へと運んでくれるだろうか。
グリットとは、一度のドラマチックな瞬間のことではない。その瞬間が訪れる前に、私たちが日々実践していることなのだ。



