リーダーシップ

2026.09.12 22:41

危機のリーダーシップにおいて、透明性と説明責任が「自信」よりも重要となる理由

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1944年6月、連合軍によるノルマンディー上陸作戦の前夜、ドワイト・D・アイゼンハワー将軍は2通のメッセージをポケットに入れていた

1通目は、歴史に記憶されているメッセージである。史上最大規模の水陸両用作戦に臨もうとしていた連合軍への信頼を表明する声明だった。2通目は、人目に触れることを想定していなかった。上陸作戦が失敗した場合、自らが全責任を負うと記した手書きのメモである。

アイゼンハワーは、今日でも多くのリーダーが十分に理解できていないことを理解していた。自信は人々を鼓舞する。説明責任は人々の信頼を勝ち取る。

この違いは重要である。危機の最中に信頼が築かれるという、根強いリーダーシップ神話に異議を唱えるものだからだ。組織は危機の最中に魔法のように信頼に足る存在になるわけではない。危機が訪れる前に、信頼されるための能力を築いていたかどうかが明らかになるのである。

何十年もの間、リーダーシップの手引きは、危機は一度に1つずつ訪れると想定してきた。歴史的にも、それはおおむね事実だった。サイバーセキュリティ事案、製品リコール、地政学的対立、経営幹部の不正行為。リーダーや取締役会は混乱を切り抜け、組織を安定させ、次の課題に備えた。

今日のリーダーが、そのような余裕を持てることはまれである。

危機が同時に押し寄せる時代

ここ数カ月、CEOたちはAI開発に影響を及ぼす輸出規制、サプライチェーンと変化する関税、規制環境を塗り替える裁判所の判断、深まる地政学的不安定性、そしてエージェント型AI(自律型AI)システムの急速な導入に対応してきた。これらの課題は積み重なる。総じて、混乱が同時進行する中でリーダーが重大な意思決定を迫られる環境を生み出している。

コンファレンス・ボードの「C-Suite Outlook 2026」は、「CEOが不確実性を捉える見方に変化」があることを示している。「短期的な混乱と見るのではなく、経営幹部は不確実性を、ビジネス環境における持続的で、さらには構造的な特性として認識し始めているのかもしれない」という。

筆者がForbes Nonprofit Councilに寄稿したように、ステークホルダーはリーダーにあらゆる結果を予測することを期待しているわけではない。彼らが期待しているのは、何が最も重要なのかを説明し、難しい判断を導く原則を伝え、組織に熟慮された前進の道筋があるという確信を示すことである。

現在の環境では、自信を示すだけではもはや十分ではない。自信はその場で人々を安心させるかもしれないが、長期的に信用を維持するものではない。

信用には、判断力、一貫性、率直さ、共感、説明責任、そして感情面での安定が必要である。これらの能力と、それを支える組織文化、人間関係、ガバナンスシステムは、試される前から存在していなければならない。

ディーパ・プルショタマンとコリーン・アマーマンが最近、Harvard Business Review指摘したように(登録が必要)、「この局面で力を発揮するリーダーは、すべての答えを持つ人ではない。不確実性を明確に言語化し、原則に軸足を置き、思いやりをもって導ける人である」。

ブライアン・チェスキーはこう述べている。「楽観的である必要がある。だが、それは妄想的な楽観主義であってはならない。何らかの真実、何らかの現実に根ざしていなければならない」。危機において希望は重要だが、それが事実、健全な判断、透明性と結びついている場合に限られる。リーダーは組織を「抱える」必要がある。不安を受け止め、人々が混乱した出来事を理解するのを助け、明確な方向性を示し、つながりを保つのである。

Harvard Business Reviewが最近発表した、エリートスポーツのコーチに関する研究では、世界最高のコーチたちが勝負どころで本能だけに頼っていないことが明らかになった。彼らは決定的瞬間が訪れる前に、何年もかけてシステムを構築する。シナリオをリハーサルし、信頼を築き、コミュニケーションを強化し、プレッシャー下でも健全な判断が勝るようなルーティンをつくる。

この教訓はスポーツの枠を大きく超えて当てはまる。プレッシャー下で成果を上げる組織が、即興的な対応だけで成功にたどり着くことはめったにない。長い時間をかけて培われた人間関係、意思決定プロセス、文化に依拠しているのである。

サイバーセキュリティ事案やAI導入の失敗のように、技術的問題として始まるものが、瞬く間に評判に関わる帰結を伴う組織的問題へと変わることがある。

OpenAIAnthropicのセキュリティ上の課題を巡る最近の報道は、その変化がいかに迅速に起こり得るかを示している。技術的インシデントは、もはやエンジニアだけの責任にとどまらない。数時間のうちに、消費者の信頼、企業ガバナンス、競争上の位置づけ、公共政策、国家安全保障の問題になり得る。今日の環境では、重要なテクノロジー関連の出来事はすべて、リーダーシップ上の出来事でもある。

IBMの2026 CEO Studyによると、組織はAIを軸に経営陣を再設計しており、現在では4分の3超が最高AI責任者を任命したと報告している。CEOは、10年の終わりまでに業務上の意思決定のほぼ半数にAIが影響を及ぼすと見込んでいる。

テクノロジーは急速に進化している。筆者が見てきたところ、より重要な変革は組織そのものの内部で起きている。リーダーシップは、個別の危機を管理することよりも、サービスを提供する相手からの信頼を失うことなく継続的な変化を吸収できる制度を築くことへと重心を移しつつある。

筆者の所属する組織であるBBB National Programsでは、この原則が繰り返し試されるのを目の当たりにしてきた。混乱を乗り越えながらステークホルダーの信頼を失わない組織は、ほぼ例外なく、説明責任が必要になる前からそれを構造化していた組織である。実証された信頼は、危機対応ではない。日頃の準備の成果なのだ。

信頼される能力を築く

信頼が前提ではなく実証されなければならない市場では、社内のコミットメントだけではもはや十分ではない。その重要な解決策の一つが、業界による独立した自主規制である。

業界の自主規制が最もよく機能するとき、それは組織に対し、市場の混乱、技術変化、公的な監視によって試される前に、共有された基準、独立した説明責任、透明な期待値を確立する機会を与える。危機を待つのでも、規制が追いつくのを待つのでもなく、組織が責任あるイノベーションを進めながら消費者の信頼を強化するための共通の枠組みをつくるのである。

今年の「Forbes Research CxO Growth Survey」も、この現実を裏付けている。経営幹部は、長期的な事業業績を左右する要因として、AIやイノベーションよりも信頼と評判を上位に挙げた。テクノロジーは最大の機会であると同時に、最大の課題でもあった。

この結果は驚くべきものではない。イノベーションは可能性を生み出す。信頼は、その可能性が持続するかどうかを決定する。

アイゼンハワーは2通のメッセージをポケットに入れていた。1通は自信を表明していた。もう1通は責任を引き受けていた。歴史が記憶しているのは前者である。しかし、優れたリーダーシップにはその両方が不可欠なのだ。

forbes.com 原文

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