家族旅行は家族全員の絆を深めるものであるはずだが、実際には親が疲れ果て、子どもたちは画面に釘付けという事態に陥りがちだ。しかし、簡単な工夫をするだけで、ストレスの多い旅行を思い出に残る冒険へと変えることができる。
最初から前向きな空気をつくる
特別な旅行に向けて家族全員の気持ちをひとつにすることが、素晴らしい旅のスタートとなる。『Parenting with Sanity & Joy: 101 Simple Strategies(健全で楽しい子育て:101のシンプルな戦略)』の著者であるスーザン・グローナーが、家族全員が楽しめる旅行を計画するための秘訣を教えてくれた。
- 旅行の計画に子どもを巻き込むことが重要だ。初期の段階から関われば関わるほど、子どもたちは旅行中の体験を楽しめるようになる。これは子どもに敬意を払うことでもある。「あなたたちは家族の大切な一員であり、その意見は尊重される」というメッセージを伝えることになるのだ。
- 体験型の旅行であればあるほど良い。ティーンエイジャーの子どもを無理やり美術館に連れ回すのは疲れるだけであり、成長すれば自分から行くようになる。楽しい料理教室などの体験型アクティビティの方が、家族の絆を深めるには効果的だ。
- 子どもたちの意見を聞く。これには一日の活動開始時間も含まれる。旅行中、ティーンエイジャーは朝7時にベッドから這い出したいとは思わない。特別な日の出を見たり、大混雑を避けるために早めに出発したりするなどの例外を除いては、無理のないスケジュールにすべきだ。やはり本人の納得を得ることが重要で、そうでないと子どもはひどく不機嫌になり、楽しい旅行ではなくなってしまう。
- 毎日、必ず自由時間を設ける。
- 旅行に特別な服が必要な場合は、事前に購入する時間を計画しておく。オンラインショッピングの方が向いているなら、子ども自身にネット注文させてもいいだろう。
- パッキングリスト(持ち物リスト)がある場合は、家族全員にコピーを送り、各自で荷造りをさせよう。パッキングキューブ(衣類整理バッグ)を使うと非常に便利だ。
- 子どもたちが車窓の景色も見ずにスマホばかり見ているのを見るとイライラするものだが、友達と連絡を取ったり、自分だけの時間を過ごしたりすることで、その後に家族で一緒に過ごす時間がより楽しいものになることもある。
- 毎食全員で食べる必要はない。子どもたちが「たまには部屋に残ってルームサービスを頼みたい」と言うこともあるだろう。レストランの予約をキャンセルすることは悪いことではない。柔軟に対応しよう。
- 子どもの調子が万全でないときは、大目に見てあげよう。
ティーンエイジャーとの旅行
子どもがティーンエイジャーに成長するにつれ、家族旅行のあり方も変わってくる。狭い飛行機のトイレで赤ちゃんのおむつを替える必要がなくなるなど、楽になる面もある一方で、複雑になる部分もある。「ティーンエイジャーは発達段階として、自立心、社会的つながり、そしてスリルを求める傾向があります」と、学校カウンセラーの資格を持ち、CultivaTeen Rootsの共同創設者であるアリア・シンは言う。「家族旅行では、自分だけの空間や同年代の友人と過ごす時間が限られることが多く、親が躊躇するようなアクティビティや外出を希望することもあります。こうした様々な要因が重なり合うことで、摩擦や緊張が生じ、本来なら絆を深める絶好の機会が衝突の場へと変わってしまうのです」。シンが勧めるアドバイスは以下の通りだ。
- 気分の浮き沈みを受け入れる心の余裕を持とう。旅行は刺激が強く、疲れやすいものだ。自分自身にも、子どもにも、寛容であってほしい。
- 子どもの態度や反抗を真に受けないこと。感情のコントロールが乱れているのは、親のせいではないことがほとんどだ。
- 感謝の言葉を期待しない。親としては、旅行に連れて行ってくれたことに感謝してほしいものだが、ティーンエイジャーの思考回路はそうはなっていない。感謝を表現するスキルは、これから身につけていく段階なのだ。
- 人前で注意したり批判したりしない。他人の前で行動を正そうとすると恥をかかせることになり、不要な衝突の激化につながる。注意するときは、2人きりになれる機会を待とう。
現実的な期待を抱く
「子どもは『小さな大人』ではないということを忘れないでください」と、Horizon Recoveryの神経心理学ディレクターであるエイミー・セリン博士(BCN)は指摘する。ティーンエイジャーの脳はまだ完全には発達していない。彼らに大人と同じ視点を求めてしまうと、親はただ失望することになる。セリン博士のアドバイスは以下の通りだ。
- ティーンエイジャーの体内時計を尊重する。朝早く起きて5キロ走ったり、午前中に移動のスケジュールを組んだりしたいかもしれない。そして子どもが不満も言わずに早起きすることを期待するかもしれないが、ティーンエイジャーの体内時計は後ろにズレているという事実を変えることはできない。つまり、人生の他のどの時期よりも、この発達段階において朝寝坊を必要としているのだ。子どもがもともと朝型でない限り、睡眠を十分に取れるようなスケジュールを組むことで、すべてがスムーズに進むようになる。
- 普段と違う行動をとることを期待しない。サプライズが嫌いな子が、急なスケジュールの変更をすんなり受け入れるとは思わないこと。情報は事前に共有し、急に予定が変わった場合はある程度の反発があることを想定しておこう。社交不安を抱えている子なら、親戚の集まりや大きなイベントを心待ちにするとは思わないこと。状況をあらかじめ把握しておきたいという子どもの欲求を尊重し、イベントの間には、息抜きや気持ちを落ち着かせるための時間を確保してあげよう。
- 「今のうちに祖父母と一緒に過ごす時間を作ることの大切さ」を理解できないかもしれない。彼らの優先順位は自分中心になりがちだ。友達と離れて家族と「強制的に」過ごさなければならない場合、不満を言うのは当然だと考えておこう。発達段階として自然な考えや感情を抱いている子どもに対して、理解を示し、罪悪感を抱かせるような言動は控えよう。
- できる限り主体性を与える。決定プロセスに巻き込むことで、自分のアイデアではない計画に対しても反発しにくくなる。過密なスケジュールのなかでも自分のニーズが尊重されていると感じられれば、子どもは主体性や当事者意識を持つことができる。
- 子どもの長所や、何に喜びやエネルギーを感じるかを尊重する。大人と同じように、誰もがすべてのことを好むわけではない。子どもが何をしたいかを理解し、寄り添うことで、より充実した体験ができるはずだ。
- その否定的な態度は一時的なものかもしれないと自分に言い聞かせる。たとえ子どもが「家族の恒例行事なんてどうでもいい」と言う時期があったり、予定を立てるたびに不機嫌になったりしても、親が冷静さを保ち、理解を示し続けることで、長期的に良好な関係を維持することができる。
現実的なペナルティを与える
「旅行全体を台無しにしてしまうようなペナルティを与えてはいけません」と、Education Development Centerのシニア・リサーチ・サイエンティストであるジョイ・ロレンゾ・ケネディ博士は言う。楽しみにしていたスキーの日を中止にしたり、エンパイア・ステート・ビルの観光を取りやめたりすることは、適切な対応とは言えない。最も効果的なペナルティは、その問題行動自体に関連したものであるべきだ。たとえば、前の座席を蹴り続けているなら、その乗客に謝罪し、その人の気分を良くしたり快適にしたりする方法を考えさせる、といったことだ。
また、子どもの自主性や興味を尊重しよう。親は車内で「言葉探しゲーム」をしようと意気込んでいるかもしれないが、子どもは親から離れた席に座り、ただ音楽を聴いていたいだけかもしれない。



