次のような場面を想像してほしい。彼女が部屋に入ってくると、周囲は静まり返る。誰かが小声で警告を発する。彼女はまだ一言も発していないのに、すでに誰もが身構えている。
このような女性に、見覚えがあるのではないだろうか。映画やテレビ番組で、これまでに何度も目にしてきたはずだ。朝食前にアシスタントを泣かせる冷徹な編集長。あるいは、笑顔で背後から刺してくるような冷酷なビジネスウーマンだ。
長年にわたり、私たちはリーダーの立場にある恐ろしい女性像を数多く見せられてきた。映画『ワーキング・ガール』のキャサリン・パーカーは、表面上は魅力的でありながら、裏ではアシスタントのアイデアを盗む。ドラマ『アグリー・ベティ』の世界では、残酷さが高級な衣装に包まれており、誰もがそれを「業界の掟」として受け入れていた。そしてもちろん、映画『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じた、記憶に残るミランダ・プリーストリーもその一人だ。ハリウッドは、同じストーリーを何度も繰り返してきた。成功する女性は恐れられる存在であり、成功したいのであれば、温かさなど入り口に置いていくべきだ、と。
私はここ数年、これとはまったく異なるリーダーシップのあり方を築いてきた。その結果を見て、「悪夢のような女性上司」という定型像は、実際には目指すべき姿などではなかったのだと確信している。それは、私たちに語られていた唯一の物語にすぎなかった。
「恐怖の上司」しかモデルがいなかった時代
20代前半のころ、私はロンドンで外国為替(FX)のジュニアブローカーとして働いていた。その職場では、女性はほぼ私一人だった。
当時、そこには暗黙の了解があった。感情を表に出しすぎないこと。不安を見せないこと。自分のトーンを抑えること。温かみや柔らかさを減らし、感情があるように見せるものはすべて削ぎ落とす必要があった。
私は、同じモデルで働く先輩女性たちを見ていた。単に、その道をさらに進んでいただけである。中には、自己防衛のためだったとしか思えない形で、ミランダ・プリーストリーのような振る舞いを取り入れている人もいた。
それは、最も狭い意味においては機能していた。人々は言われた通りに動き、誰も疑問を挟まなかった。しかし、そこで働くことを心から楽しんでいる人は、一人もいないように見えた。
そのルールに従わない世代
私はZ世代とミレニアル世代の境目に生まれた「ジレニアル(Zillennial)」の創業者であり、この世代のことをよく知っている。だからこそ言えるが、ミランダ・プリーストリーのようなマネジメントスタイルは、私のチームでは5分も持たないだろう。
2030年までに、Z世代は「米国の労働人口の約30%を占める」と予測されている。この世代は、仕事生活のあり方に対してまったく異なる視点を持っており、自分たちの期待を極めて明確に示している。
デロイトによると、自分たちと同じ価値観を持つ企業で働くことは、Z世代の仕事満足度に強いプラスの影響を与える。つまり、彼らは単に給与や出世だけを求めているわけではない。尊重されていると感じたいし、自分が信じる目的とつながっていたいのだ。威圧と服従に依存する恐怖ベースのリーダーシップは、そうした一体感と完全に矛盾する。
さらに、Z世代の従業員は、職場でのメンタルヘルスの健全性をいかに重視しているかを一貫して示している。実際に、全体の61%が、より手厚いメンタルヘルス支援を提供する企業へ移るために転職すると答えている。また、4人に3人が、職場でメンタルヘルスについて話し合うことは適切であると考えている。
しかし、同じ調査によると、自身のメンタルヘルスについて気兼ねなく話せると感じている人は61%にとどまる。人事(39%)や経営幹部(30%)に相談するとなると、その割合はさらに低下する。
人々が必要としているものと、それを安心して求められると感じるものとの間にあるこのギャップこそが、エンゲージメントの低下(そして最終的には離職)の始まりなのだ。
「脱・恐怖」のリーダーシップのあり方
会社を共同設立したとき、私は自分が経験してきたような環境は絶対に再現しないと心に決めた。
私たちは、今なお男性中心であり、古いモデルに傾倒しがちな業界(フィンテック)において、複数のタイムゾーンをまたぎ、リモートで仕事を行っている。現在では、世界140カ国以上で展開する、売上高が数百万ドル規模のコンサルティング会社へと成長した。
数多くの試行錯誤を経て、私がたどり着いたのが、自身で「脱・恐怖のリーダーシップ(post-fear leadership)」と呼ぶアプローチだ。
要約すると、以下の3つの要素からなる。
1. 完璧さよりも、弱みを見せること:自分の知らないことを率直に認める姿勢は、どんなに確信に満ちた振る舞いをするよりも、チームとの間に強い信頼関係を築くことができる。
2. エゴよりも、共感:チームのウェルビーイングは、仕事から逸れるものではなく、仕事そのものだ。周囲の人々が良好でなければ、他の何も正しく機能しない。
3. 失敗への恐れよりも、挑戦:イノベーションは、うまくいかないかもしれないことにも挑戦できる、心理的安全性が確保された環境でのみ生まれる。失敗を恐れすぎていては、価値のある挑戦など決してできない。
これは決して、全員の親友になることではない。ハグを交わしたり、納期を曖昧にしたりすることでもない。実のところ、恐怖で支配するよりも難しい。なぜなら、真の自己認識や感情的知性(EQ)、そして時に居心地の悪さを受け入れる覚悟が求められるからだ。しかし、その成果は明らかだ。
終わりに
率直に認めたい。優れたリーダーシップのあり方を理解している今でも、時にあのミランダ・プリーストリーの典型像に惹かれることがある。多くの女性リーダーも同じではないだろうか。
いまだに私たちを過小評価し、女性が受け入れやすい存在であることには報酬を与え、力強くあることには罰を与える世界において、一切謝ることなく場を占め、自分が好かれているかどうかを一度も気にしたことのない人物には、ある種の暗い魅力がある。彼女は身を縮めない。誰も彼女の発言を遮らない。彼女は完全に、恐ろしいほどに彼女自身である。
しかし、その幻想は重要なことを覆い隠している。恐怖と尊敬は同じではない。結果を恐れてあなたに従うチームは、高いパフォーマンスを発揮するチームではない。あなたが部屋を出ていき、ようやく息ができる瞬間を待っている、非常にストレスを抱えたチームである。
「恐怖の女性上司」の本質は、権力欲ではなかったと思う。それはサバイバル、すなわち、自分たちを歓迎しない場に入り込むために、その場が「力強い」と認める存在になり代わるという、女性たちの生存戦略だったのだ。
私たちはもう、そんなことをする必要はない。そして率直に言って、私たちの後に続く世代――Z世代の創業者たちや、25歳のチームリーダーたち、そして現在ゼロから会社を立ち上げている女性たち――は、そのような手法を選ばないだろう。
彼女たちはまったく異なる未来を築こうとしており、それは大いに祝福すべきことなのだ。



