ほとんどの企業経営者は、好奇心から少なくとも一度はChatGPTに自社の社名を入力したことがあるだろう。だが、2回目を実行した人ははるかに少ない。
その習慣は変える価値がある。なぜなら、顧客も同様の質問をしているからだ。彼らは、あなたの会社の価格設定や、サービスの質、弱点を知りたがっている。そして、AIは絶対的な自信を持って回答を返してくるが、その内容は必ずしも真実とは限らない。これは、新しいタイプのビジネスリスクである。
誤った回答がもたらす代償
2025年3月、ミネソタ州の太陽光発電設置業者は、Google(グーグル)の「AIによる概要(AI Overview)」が、同社が不正行為で訴訟を起こされているとユーザーに伝えていることを発見した。そのような事実はなかった。AIによる概要が引用した情報源のどこにも、そのような記述は存在しなかった。
顧客は契約をキャンセルし、その理由がAIによる概要の検索結果であると明かす者もいた。同社は約39万ドル(約6010万円)の減収があったと主張している。それから17カ月が経過したが、いまだ判決は下されていない。その時間の大部分は、どの裁判所がこの訴訟を審理すべきかを巡る争いに費やされた。
私が注目したいのは、この点だ。請求額の大きさではなく、その遅れである。
2026年5月、ミュンヘンの裁判所は、ある出版社が定期購読詐欺を行っていると記述したAIの要約について、グーグルに提供を停止するよう命じた。要約が、引用された情報源のどこにもない内容を述べていたため、裁判所はグーグルを単なる掲示板ではなく、その記述の作成者として扱った。
その2週間前、ドイツの控訴裁判所はさらに踏み込んだ判断を下した。あるクリニックのウェブサイトに導入されていた独自のチャットボットが、所属する2人の医師が保有していない専門医の肩書を持っていると訪問者に伝えた。裁判所はクリニックに誤認広告の責任があると判断した。責任を問われたのは、ソフトウェア会社ではない。クリニック側である。
両方の訴訟とも控訴中であるため、まだ解決はしていない。しかし、その方向性を見過ごすことはできない。AIが自社について誤った情報を流したことで賠償金を受け取れる可能性よりも、AIの発言に対して自社が責任を問われる可能性の方が高いのだ。
そうしている間にも、虚偽の主張は増加している。ニュースガード(NewsGuard)は主要なチャットボットを定期的に検証している。2026年1月には、チャットボットがニュース関連のトピックについて虚偽の主張を繰り返した割合は28%に達し、2024年8月の18%から上昇した。初期のツールは、回答を拒否することがしばしばあった。だが2026年1月までには、すべてに回答し、その28%を誤った。より正確になったのではなく、慎重さを失ったのである。私の見解では、これがリスクを高めている。
考慮すべき2つのリスク
1. 他社のAIが自社について語ること
自社の価格、実績、法的立場などを説明する要約やチャットボット。あなたはそれを管理できず、修正には時間がかかる。
2. 自社のAIが自社に代わって語ること
自社のウェブサイトのチャットボット、自動返信、AI支援によるコピーなど。これらはすべて自社の責任であり、先のクリニックの例のように、大きなリスクをもたらす可能性がある。私が企業の経営陣に「自社のチャットボットの正確性について、誰が責任を持っているか」と尋ねると、たいてい一瞬沈黙が流れる。誰もその仕事を任されていない。なぜなら、それが仕事であるようには見えなかったからだ。
問題は、私が「所有者のいない事実」と呼ぶものである。これに対処するために、実行できる5つのステップを紹介する。
これらのツールは、一貫性があると思われる情報を何でも拾い上げ、企業のイメージを構築する。自社のウェブサイトで明確に説明されている内容は、多くの場合アンカーとなる。しかし、ウェブサイトに何も書かれていなかったり、3年前の古い情報が放置されていたりすると、そのギャップは他から拾ってきた情報で埋められるか、同業他社から推測されてしまう。
「所有者のいない事実」とは、管理の及ばない場所にのみ存在する事実のことだ。ミネソタ州のケースがその一例である。近隣の他社に関する真実の事実が、その隣にある自社に関する1つの虚偽の事実へと変貌してしまったのだ。
注意深く探せば、こうしたギャップは存在する。私の会社にも同様の問題があった。弊社のレビューは、サードパーティ製のJavaScriptウィジェット内に格納されていた。訪問者には問題なく表示されていたが、AIモデルには読み取れなかった。そのため、私たちは適切な「お客様の声」ページを作成した。現在、これは大規模言語モデル(LLM)のソースとして利用されている。それらのレビューは以前から存在していたが、現在ではAIが実際にそれを認識し、参照できるようになった。
AIに対する自社の可視性を高め、AI検索結果の正確性を高めるために、以下の5つのステップを実行することを推奨する。
1. 自社サイトに事実を分かりやすく掲載する
提供しているサービスと提供していないサービス。おおよその費用。対応地域。運営者とその資格。専門知識の具体的な例。今でも古い名称で取引しているかどうか。メタデータだけでも構わないので、ページに日付を入れること。自社でその情報をカバーしなければ、他の何かがその隙間を埋めてしまう。
2. リスティング情報を整理する
Googleビジネスプロフィール、Crunchbase(クランチベース)、Companies House(英国の登記所、英国企業の場合)、業界団体、ディレクトリ、レビューサイトなど。これらの情報が一致していると、ツールはそれを信頼する。一致していない場合、ツールは推測で埋めようとする。
3. 各ツールが何と言っているかを毎月追跡する
顧客が尋ねる質問(価格、サービスの質、他社との比較など)をリストアップする。これを支援するツールは数多く存在し、手動で監査を行うことも可能だ。AIツールが同じ質問に2回とも同じように答えることはほとんどないため、1回限りのチェックではほとんど意味がない。少なくとも毎月実施すること。
4. 最も迅速に修正を申し立てる経路を知っておく
あらゆるプラットフォームにフィードバック用のオプションが用意されている。また、その主張が企業ではなく特定の個人に関するものである場合、それは個人データに該当するため、英国の一般データ保護規則(GDPR)に基づく訂正権が適用される。
5. 顧客よりも先に自社のチャットボットをテストする
どのような保証があるか、料金はいくらか、納品までのスピードはどれくらいか、などを自社のチャットボットに質問してみる。回答が正しいことを確認すること。
これはマーケティング部門の仕事ではなく、経営者の仕事である。
AIモデルが自社について誤った解釈をするのを完全に防ぐことはできない。だが、真実の情報を簡単に見つけられるようにし、AIモデルが自社について何と述べているかを追跡し、誤りがあれば迅速に察知し、適切な対策を講じていることを示すことはできる。ほとんどの企業は、より小さなリスクに対しても、すでに管理台帳を用意し、見直し日を設定している。このAIリスクもそのリストに加えることを検討すべき時である。



