リーダーシップ

2026.09.12 12:14

従業員の90%をAIリスキルした人事責任者が、次に取り組んだ「人間ならではのスキル」

stock.adobe.com

stock.adobe.com

プリンシパル・ファイナンシャル・グループ(Principal Financial Group)の約1万9000人の従業員のうち、90%以上がAIを使いこなすためのリスキリングを完了している。多くの組織にとって、このような数字はゴールラインとなるだろう。しかし、同社の上級副社長兼最高人事責任者(CHRO)であるリサ・コールソン(Lisa Coulson)にとっては、それは方程式の半分にすぎない。

「一方では、従業員の90%以上にAIやデータリテラシーのリスキリングを行い、日々の業務でこれらのツールを自信を持って使えるようにした」とコールソンは言う。「もう一方では、共感、コミュニケーション、信頼構築といった人間ならではのスキルの育成を継続している。AIによって生まれた時間を、顧客や同僚とのより有意義な対話にあてられるようになったとき、当社の社員がより高い自己認識を持ち、より大きな影響力を持って関わり合えるようにするためだ」

コールソンの見解では、組織が際立つのは、強力なテクノロジーの知見と、コミュニケーション、コラボレーション、自己認識、適応力、好奇心、批判的思考といった人間ならではのスキルを組み合わせることによってである。

プリンシパルは、創業147年以上の歴史を持つフォーチュン500選出の金融サービス企業であり、退職年金、投資、従業員福利厚生を通じて、80以上の市場で約8200万人の顧客にサービスを提供している。コールソンは、この広範な事業領域におけるグローバルな人事戦略を率いている。

AIを代替ではなく、能力を拡張・支援する存在と位置づける

「私たちはAIを、人の代替ではなく、人の能力を拡張・支援するものとして捉えている」とコールソンは語る。「そのマインドセットが、現在および将来の人材に対する考え方を形成している」

具体的には、業務の進め方の一部としてAIをワークフローに直接組み込み、従業員がより迅速に動き、より価値が高く、判断を要する業務に集中できるようにすることを意味する。コールソンが言うように、「AIは洞察を提示し、効率を高めることができるが、意思決定と成果に対する責任を負うのは依然として人間である」のだ。

彼女は、その責任が今後何をもたらすことになるかについて、驚くほど具体的に語っている。「今後1から3年を見据えると、そのバランスはさらに重要になる。AIの統合が進み、より高度な機能がワークフローのより大きな部分を担うようになるにつれ、仕事の本質は進化し続けるだろう。役割はシフトし、新たな役割が生まれ、従業員には単にAIを使うだけでなく、AIと協働し、それを導き、監督し、品質、信頼、コンプライアンスを確保することが期待されるようになる」

判断を伴わない洞察は価値を生まない

AIと心の知能指数(EI)が相反するものかどうかを問われた際、コールソンはその前提を否定した。「顧客が期待する通りのサービスを真に提供するためには、AIとEIは同調していなければならないと考えている」と彼女は言う。「AIはスピード、規模、そして洞察を導き出す点において極めて強力だが、そうした洞察は、人間の判断、共感、そして文脈を伴って適用されて初めて、付加価値を生み出すのだ」

CHROや人材育成のリーダーを対象とした数十回に及ぶインタビューを通じて、これとまったく同じ考え方が浮かび上がり続けている。筆者はこれを「方程式」と呼びたい。すなわち、AI + EI = ROI(投資対効果)である。

この方程式からEIを取り除けば、見識のないアイデア、判断を伴わないスピード、そして人間味のない仕事しか残らない。逆に、方程式からAIを取り除けば、効率、生産、イノベーションにおいて競合他社に追いつくことはほぼ不可能になる。

「だからこそ私たちは、適切な判断を可能にするスキル、すなわち適応力、好奇心、コミュニケーション、そしてリーダーシップにも投資している。従業員が、思慮深く、責任を持ち、信頼に基づいた方法で洞察を応用できるようにするためだ」とコールソンは説明した。

EIトレーニングは一部の幹部だけでなく、全階層に届く

多くの企業において、対人関係スキルのトレーニングは、将来を嘱望される役員にのみ提供される特典となっている。しかし、プリンシパルではそれを企業全体に組み込んでいる。「リーダーシッププログラム、コーチング、アセスメント、チームベースの学習を通じて、コミュニケーション、コラボレーション、自己認識といったスキルに焦点を当て、人々が時間をかけて成長し続けられるようにしている」とコールソンは言う。「AIリテラシーの構築を続けるなかで、私たちはチェンジマネジメントとグロースマインドセットに重点を置いている」

一般社員やマネジャー層にとって、これらの能力開発は別個のプログラムとして提供されるのではなく、中核となる育成経験の中に組み込まれている。シニアリーダーは、エグゼクティブ開発、パーソナライズされたコーチング、そしてコールソンの言葉を借りれば「シニアリーダーが複雑な状況を切り抜け、効果的に影響力を発揮し、明確さと共感の両方を持ってリードできるよう設計された」リーダーシッププログラムを通じて、さらに深く学んでいる。

AIが登場するずっと前からコールソンが気づいていたパターン

不変の人間のスキルに対するコールソンの確信は、現在から何十年も前にさかのぼる。それは、彼女がキャリアのなかで何度も目にしてきた、あるパターンから始まった。「私がEQ(心の知能指数)に関心を持つようになったのは、キャリアの中で同じような状況が繰り返されるのを目にし続けたからだ。職場における最も困難な課題が、テクニカルスキルに関するものであることはめったになかった。才能ある人々や強力なチームが苦戦するのは、専門知識が不足しているからではなく、コミュニケーションの崩壊、自己認識の不足、変化への対応の難しさ、あるいは信頼の欠如が原因だった」

したがって、高いパフォーマンスを発揮する人々は、強力なテクニカルスキルだけでなく、優れた社会的・感情的スキルも兼ね備えていることが多かった。「一貫して従業員の力を最大限に引き出している組織において、他社との差別化要因となっていたのは、共感、適応力、コラボレーション、そして変化を通じて導く能力といった人間的スキルだった」とコールソンは説明した。

プリンシパルのアプローチからリーダーが学べること

コールソンの経験は、実践的な教訓を示している。他社を一歩リードする組織とは、最高のテクノロジーや最高の人材を擁している組織ではない。すでに社内にいる人々のベストを引き出す方法を知っている組織であり、EIトレーニングは、組織が人材のポテンシャルを引き出すために利用できる強力なレバーなのだ。

「テクニカルスキルは扉を開けるかもしれない」とコールソンは語る。「しかし、人々が複雑な状況を切り抜け、信頼を築き、従業員とビジネスの双方が繁栄する文化を形成することを可能にするのは、感情的な知性(EI)なのだ」

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事