この手触りの裏にある工程を、ジョニー・スルージ(最高ハードウェア責任者)が語ったが、そのこだわりは経済合理性を考えれば成立しないような話だ。
ヒンジは100点を超える精密部品からなり、個々のヒンジ部品のバラ付きを、AIアルゴリズムで組み合わせ選別し、最も平滑になるよう組み上げる。組み上がった個体は全数、共焦点レーザー(焦点位置の光だけを拾って高さを精密に測る方式)で表面のうねりをスキャンし、わずかに残るうねりの上にフォトポリマー(光硬化樹脂)を最大25レイヤーまで重ねて3Dプリントし、フラットに仕上げる。
これを一台ずつ、すべてのiPhone Duoで行うのだ。印刷される樹脂の厚みと場所は一台ずつ違う。
ディスプレイを構成するレイヤーは、多くの折りたたみが接着せず、曲げた時のズレを逃がしてきたのに対し、Duoでは粘弾性の接着剤で結合したうえで、折り曲げると「本のページのように」滑り、開けば戻る仕掛けを完成させた。折り目の周りで起きる浮きや剥離を、接着で封じるためだ。
2008年にアルミの塊から筐体を削り出した「ユニボディ」を思わせる判断。細部への心血の注ぎ方が、クック時代の15年とは明らかに違うと感じるのは筆者だけだろうか。Duoに関してアップルは「設計チームが集中していたのは、折りたためる『iPhone』を作ることだった。楽しく使え、耐久性があり、美しく、信頼できる。それを達成することが最も苦労した」と語った。
ただし、これらはすべてアップルの言葉である。アップルは折り曲げ試験の回数も、インナーディスプレイの修理費も公表していない。半年後、1年後にどうなるかを知るための数字はまだ、これから積み上げなければならない。
ターナスが作る新しい組織
Duoは、ターナスがハードウェアの責任者だった時期に作られた製品である。新しいCEOが自身が育てた、最も生産工程の複雑な製品だった。所信表明を言葉ではなく、実体として示したものとも言える。
そのターナスは、4月に発表された人事から組織を少しずつ変え始めている。4月20日、アップルはクックの会長就任とターナスのCEO就任を発表し、同じ日にスルージの昇格を発表した。スルージは従来のシリコン部門に加え、ターナスが離れたハードウェアエンジニアリング組織を統合した。2012年に分割された2つの組織が14年ぶりに1つに戻り、数千人規模を率いる、ターナス直属のナンバー2が生まれた。


