ただし、日本向けに伝える場合、その言葉の中身には注釈が必要となる。Siri AIは9月14日配信のiOS 27で英語のベータ版として始まるが、日本語での提供は10月からだ。基調講演でターナスは「一部の機能は強力なサーバーモデルに依存するため利用上限があり、上限の引き上げはほとんどのiCloud+プランで提供される」とも述べた。Siri AIの基盤技術でグーグルと協働したことをアップルは今年1月に認めているが、この日、その名前は一度も出なかった。パーソナルコンテクストのハブになると宣言されたが、その中で動くインテリジェンスの一部は外部に依存しており、利用できるトークン量には上限がある。
理想と現実、その間の距離は今後、少しずつ詰めていかねばならない。
クック時代からターナス時代へ
ティム・クックがCEOに就いた2011年、アップルの売上高は1080億ドルだった。2024年度には3910億ドル。サプライチェーンを磨き、サービス事業を育て、株主還元を積み上げ、世界で最も収益性の高い会社の1つにできたのは、生産管理を専門としていた彼の功績に他ならない。
もちろんその間、クックは製品の品質にはこだわり続けた。2020年にMacをインテルから自社設計のApple Siliconへ移した判断は、クック時代最大のエンジニアリングにおける賭けだったとも言える。
それでも、「新しいことに挑み、これまでできなかった製品を切り開く会社」という意味では、この15年のアップルは常に保守的だったと言わざるを得ない。Apple WatchもAirPodsも、先行する他社製品があるカテゴリーに後から入り、完成度で市場を最大化し、圧倒するプロセスの繰り返しだった。
まったく新しい領域に踏み出したのはVision Pro(2024年、3499ドル)くらいだろうか。しかし、それも片鱗を見せた程度にとどまっている。高い効率ですばらしい品質を生み出し、高い収益をもたらす組織を作ったという評価は、クックへの称賛であると同時に、アップルという会社にとっては物足りなさの表現でもあった。
iPhone Duoもまた、他社に遅れて参入する製品カテゴリーである。折りたたみスマートフォンは、サムスンが2019年から8世代を重ねてきた。後発で参入して市場を支配するのはクック時代の勝ちパターンでもある。しかし、今回は少しばかり違う景色が見えている。
会場でDuoの実機を開く。開き始めはスルスルと抵抗感なく、半分の角度になるとトルクと抵抗感が程よく増す。離しても倒れず角度を保持し、閉じる最後の数ミリは磁石が引き寄せ、小さな音とともに真っ直ぐになる。インナーディスプレイはナノテクスチャ処理で反射が極めて少なく、指で探してようやく折り目らしき段差を見つける。


