重要なお知らせ 「Forbes」の名称を使用した営業活動にご注意ください

アジア

2026.10.06 16:30

若手3人の仕事が1人分に、中国学生を襲うAIの波と深刻化する教育格差

Tomas Ragina - stock.adobe.com

Tomas Ragina - stock.adobe.com

AIが雇用に対して及ぼす世界的な不安は、当分は収まりそうにない。エントリーレベルの仕事を探す若者にとっては特にそうだろう。しかし、現時点での全体的なマイナス面は誇張されている可能性が高く、新たな職種が生まれている分野や、AIの急速な進歩によって最も影響を受けている脆弱な大学や学生への支援には、より一層の注意を払う必要がある。中国の上級エコノミストがインタビューでそう語った。

北京を拠点とするエコノミスト、タン・ミンは、「中国でAIは、多くのフルタイム雇用をなくしているというより、主に業務内容を作り変えている」と話す。タンはこれまでに中国国務院の参事や、アジア開発銀行の駐中国主席エコノミストなど数々の要職を歴任してきた。「AIは労働力の代替効果と新規雇用の創出の両方をもたらしている」と言う。

「中国では、純粋にAIのみに起因する大規模な人員削減はまだ起きていない」とタンは指摘する。「生成AIは既存の労働市場の構造的な圧力を増幅させ、特定の職務を縮小させる一方で、高度なAI人材は依然として不足しているという矛盾を生み出している」

先を見据えた積極的な政策の必要性

米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で博士号を取得したタンは、「AI時代のチャンスを若者の雇用拡大へとつなげ、テクノロジーによって社会的格差が広がるのを防ぐためには、先を見据えた積極的な政策が必要だ」と語る。

中国におけるAIの動向は、同国の経済・地政学的な影響力の大きさゆえ、世界的に重要な意味を持つ。有力なAI関連中国企業の評価額が急上昇したことにより、最近では同国のテクノロジー界において世界有数のビリオネアも生まれている。そこにはDeepSeek創業者の梁文鋒(リャン・ウェンフェン)、Z.ai会長の劉徳兵(リュウ・ダービン)、MiniMax(ミニマックス)創業者の閆俊傑(ヤン・ジュンジエ)などが含まれる。

将来の雇用拡大を示す前向きな兆候として、タンは世界経済フォーラムの『仕事の未来レポート2025』を挙げる。同報告書は、テクノロジーの変化やグリーンエネルギーへの移行、経済的不確実性、地経学的な分断、人口動態の変化といった「マクロトレンド」によって、今後5年間で世界全体では9200万人の雇用が失われる一方、1億7000万の新規雇用が創出され、雇用は正味7800万増となると予測している。

こうした楽観的な見通しがある一方で、「定型的で反復的な作業が自動化されていることからは逃れられない」とタンは話す。「企業はAIを使ってエントリーレベルのホワイトカラー人材を減らしている。かつては若手3人で分担していた仕事、たとえば基本的なコピーライティングや初歩的なデータ分析、初級レベルのコーディング支援、事務文書の作成などは、今ではAIツールを使いこなせる従業員1人で処理できるようになっている」と指摘する。

こうした環境は、新型コロナのパンデミック以降高止まりしている中国若年層の失業率や、世界第2位の経済大国の経済成長の鈍化を改善するものではない。中国国家統計局によると、今年6月の16~24歳の失業率(在学中の学生を除く)は14.9%であり、全国の失業率の3倍に達している。2026年には約1270万人が中国の大学を卒業する見込みであり、エントリーレベルの職をめぐる競争がさらに激化しているとタンは指摘する。

次ページ > AIを使いこなせる人材は不足している?

翻訳=溝口慈子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事