トップレベルの枠組みの多くは有望に見えるものの、構造的な摩擦により、現実の世界では改革が限定的な効果しかもたらさないリスクがあると、タンは見ている。たとえば最近の報告書では、企業と大学の間では、連携に対する関心が一様でないことが明らかにされている。
「大学は教育を重視する公共機関だ。一方、民間企業は商業的な利益を優先する。カリキュラムの綿密な共同設計、企業からの講師の派遣、実際のプロジェクトを使っての訓練には直接的なコストがかかるが、人材育成による利益が得られるのは時間がだいぶたってからだ」とタンは述べ、「数多くの『産学』連携が、形式的な調印式や記念プレートの設置にとどまり、実質的な取り組みはほとんどないと報告されている。産業界が送り込む指導者は、正式な教育訓練を受けていない非常勤講師である場合が多い」と指摘する。「内陸部にある地方の公立大学や私立大学は、価値ある企業投資を呼び込むのに苦労している。政策による恩恵は、すでに有利な立場にある大学に偏っており、教育格差をさらに拡大させている」。「AI技術のサイクルは極めて速い。大学がカリキュラムを改訂するサイクルは通常2~3年であり、教材が実際に教室で使われる頃、それらは事実上時代遅れになっている可能性がある」と指摘する。
対象を絞ってリソースを再分配しない限り、AI時代の高等教育はすでに生じている「マタイ効果」(条件が良い者ほどさらに有利になる格差の拡大)をさらに増幅させ、AIによる改革の恩恵をすでに享受しているトップ大学がさらに優位に立つ一方で、脆弱で不利な立場にある大学はさらに遅れを取ることになると、タンは語る。
脆弱な大学を支援するための政策には、各キャンパスに高価なオンプレミス型ハードウェアを導入する代わりに、共有型のクラウドベースのAI訓練プラットフォームへの資金提供や、中国東部の先進的な企業による内陸部大学生への遠隔による企業メンターシップやバーチャルプロジェクトの機会提供、昇進審査における産学連携への関与や企業での実務経験を正式に評価するための教員評価制度の改定、そして、地域外の企業で実習する際の経済的な障壁を減らすことを目的とした、リソースが限られた学生への奨学金の支給、などが含まれるとタンは説明する。
もう一つの目標は、大学と産業界の連携について第三者による効果の評価を行い、見せかけだけの形式的な連携を排除することだとタンは指摘している。


