かつて米国人はパスポートなしで帰国できた
おそらく米国の旅行者にとって最も驚くべき変化は、空港ではなく国境で起こった。
「西半球渡航イニシアチブ(WHTI)」が導入される以前には、米国とカナダの市民権保持者は、北南米地域から米国に入国する際にパスポートを提示する必要がなかった。国境で提示するべき書類の要件が統一されていなかったためだ。
つまり、9.11以前の旅行者は、さまざまな種類の身分証明書を使用できたほか、状況によっては口頭での国籍申告だけで十分だったのである。
2009年6月1日にWHTIの陸路・海路に関する要件が発効して以降、カナダやメキシコなどから陸路・海路で帰国する米国市民は、パスポートまたは特定の身分証明書を提示しなければならなくなった。
外国人旅行者は米国行きフライト搭乗前の審査が必須に
2009年に義務化された「電子渡航認証システム(ESTA)」により、米国政府はビザ免除プログラムを利用して渡米する旅行者について、米国到着時だけでなく米国行きの便に搭乗する前に審査が可能になった。
入国手続きにおいても、生体認証の活用がますます進んでいる。米税関・国境警備局(CBP)によると、2026年7月17日現在、全米238空港で入国する旅行者の審査に顔生体認証技術が導入されている。
厳格化されたセキュリティ、ただしすべてが永久に続くわけではない
9.11以前の米国の空港保安検査では、乗客が日常的に靴を脱ぐことはなかった。しかし、2001年12月に「シューボマー(靴爆弾テロ未遂犯)」こと英国人リチャード・リードが靴底に隠した爆発物を飛行中の米航空機内で起爆させようとした事件をきっかけに、状況は一変した。
2006年8月以降、TSAはほとんどの乗客に対し、X線検査に際して靴を脱ぐことを義務付けていた。この規則は約19年間にわたって続いたが、新型CTスキャナーの全面導入に伴い全米で段階的に撤廃された。
本人確認も自動化が進んでいる。かつては係員による身分証明書や搭乗券の目視確認が頼りだったのに対し、新しいTSAのシステムでは身分証明書を電子的に認証し、乗客の予約状況や身元審査のステータスを確認できるようになった。
液体・ジェル類の機内持ち込みは現在も厳しく制限されており、2006年9月に導入された「3-1-1ルール」に変更はない。ただ、CTスキャナーが設置された空港では、規定容量内の液体物やノートパソコンを機内持ち込み手荷物に入れたまま、取り出すことなく保安検査場を通過できる場合がある。


