いまLinkedInでは、オープンなコミュニケーションが注目を集めている。リーダーたちは、雑音を切り抜け、表面的なやり取りの先に進み、口にされていないことを理解するためのコミュニケーションスキルを求めている。チームの誰もが、たとえ言いにくいことであっても、重要なアイデアを表現できるような信頼をどう築くかを知りたがっている。信頼を築くことはもともと簡単ではなかったが、AIの普及により、信頼の構築はいっそう難しくなっている。
先日、ある会議の前に、私は共同登壇者に進行表をメールで送った。彼は返信で、そのメールの下書きにAIを使ったのかと尋ねてきた。私は使っていない、すべて自分で入力したと答えた。後で知ったのだが、彼はそのメールがAIで生成されたものではないかと疑った時点で読むのをやめていた。私が時間をかけて書いていないなら、自分が読む時間を割く価値もないと判断したのだ。
コミュニケーションスキルとしてのストーリーテリングの力
では、誰もが疑い深くなっているなかで、どうすれば信頼を築けるのか。私は、ストーリーテリングが重要な答えの1つだと考えている。ストーリーテリングは人間らしさを生み出すものだ。人を引き込み、偽装することはできない。うまく語られ、適切なタイミングで届けられたストーリーは、プレゼンテーションや営業提案を、聞き手にとってより記憶に残り、影響力のあるものにする。人間の脳はストーリーに向くようにできているからだ。「食べ物、住まい、仲間の次に、私たちがこの世界で最も必要としているのはストーリーである」と作家のフィリップ・プルマンは書いている。ストーリーには、私たちが自らの経験から意味を引き出すのを助ける力があるからだ。
だからこそ、誰かが自分の経験を「語る価値のあるストーリー」だと気づく手助けをすることの力を想像してほしい。私はこれをストーリー・ファシリテーションと呼んでいる。
最近、私はあるグローバル企業のバイスプレジデントと仕事をしている。初期の対話の1つは、こんな様子だった。
クライアント:[何気なくストーリーを共有する]でも、とにかく、さっきの話に戻ると……
エスター:待ってください。戻る前に、もう少し詳しく聞かせてもらえますか。
クライアント:[さらに話す]
エスター: とても興味深いですね。それは予想していたことでしたか。
クライアント: まさか。なぜなら[話が続く……]
エスター:それは非常に魅力的なストーリーです。
クライアント:そう思いますか。
エスター:そうです。理由はこうです……
ストーリーとその伝え方に取り組むコーチングセッションを数回行った後、私は彼女に今の気持ちを尋ねた。彼女はこう言った。「自信を与えてくれました」
自分自身のストーリーに自信を得たことで、彼女はいま、職場でより多くのストーリーを語れると感じている。彼女はしばしば、大勢の社員の前でプレゼンテーションを行う。「リーダーとしての影響力が倍になりました」と彼女は私に話した。彼女が力のあるストーリーを定期的に共有するようになったことにチームが気づくと、メンバーもその姿勢にならった。
人が自分のストーリーを見つけるのを助けるとき、私たちはその人が自らの経験の点と点を結び、意味を見いだすのを助けている。ストーリー・ファシリテーションの道具箱にあるツールを使えば、職場でオープンなコミュニケーションを促すことができる。
オープンなコミュニケーションを促すストーリー・ファシリテーションの3つのツール
1. 好奇心を持つ
詩人のポール・ヴァレリーは「見るとは、見ているものの名を忘れることだ」と述べた。これは、何かや誰かを本当に理解するには初心者の心を持たなければならない、ということを巧みに表した言葉である。レッテルや自分の思惑を持ち込んではならない。先入観や決めつけは手放す。その代わりに、好奇心を持つ。すべてを新たに学びたいという意欲を持ち、質問するのだ。
例: あるクライアントが最近、好奇心が誤解を防ぐ助けになることを示す次のような話をしてくれた。
「同僚が、前日の会議について質問があると言って近づいてきました。私は、短い衝突を自分がどう対処したかを批判されるのだと思い込みました。そのことについては、すでに気にしていたのです。身構える代わりに、好奇心を持ち続けることを思い出し、『もう少し聞かせてください』と尋ねました」
「すると、彼女は会議の直前に気がかりなメッセージを受け取っていて、会議中に集中するのが難しく、新しいプロジェクトに関するいくつかの詳細を聞き逃していたことがわかりました。彼女は情報を求めていたのであって、批判しようとしていたのではありません。彼女が最初に話したいと言ったとき、防御的に反応せず、質問して本当によかったと思います」
2. 聴く
聴くことは、ただ座って受け身で情報を取り込むことよりもはるかに多くを意味する。よい聴き方は能動的であり、話し手が共有しながらより深く振り返るよう促す。聴くことは開かれた姿勢を生み、人は自分の立場を見直しやすくなる。説得されたからではなく、受け入れられていると感じるからだ。さらに、あなたが他者の話をよく聴けば聴くほど、相手もあなたの話を聴こうとする。多くの場合、マネジャーとしてのよい傾聴には、聞いた内容に基づいて行動することが求められる。
例: 好奇心を持って率いることについての近著『Winning Without Persuading』で、私は研究者のジェームズ・ディタートとイーサン・バリスが2016年に全国展開のレストランチェーンを調査し、注目すべき結果を見いだしたことを紹介した。マネジャーが現場従業員の提案を上級幹部に伝える形で行動に移したところ、離職率は32%低下し、同社は年間160万ドル(約2億4600万円)超を節約した。理由は明快だ。人は、自分の声が実際に聴かれると信頼できるときにだけ声を上げる。このケースで本当に聴くとは、従業員のために行動することを意味していた。これらのマネジャーのように聴けば、信頼を築くことができる。
3. 映し返す
映し返すことは、「聞いています」と伝えるために相手の言葉を「反響」させたり、繰り返したりすることではない。映し返すとは、その一歩先にある解釈の領域に踏み込むことだ。「あなたの話から、私にはこう見えます」と伝えることである。それは、人が自分自身や自分のアイデアをより明確に見る助けになる。
私たちはしばしば、他者が自分をどう見ているかへの反応を通じて、自分自身を部分的に理解している。リーダーにとって、リフレクションは単なるソフトスキルではない。構造化され、規律があり、思いやりのあるリフレクションは、信頼を築き、意思決定を改善し、人が本当に見てもらえていると感じられる環境をつくる。
例: あるクライアントが以前、両親が彼と彼の姉妹たちに、自分たちには夢見ることしかできなかったことを実現させるために払った犠牲について、心を打つ話を共有してくれた。感動的な話だったが、私は彼に、より難しい問いを投げかけるよう促した。その犠牲は実際に何を意味するのか、という問いだ。
その犠牲があったからこそ、彼の成功は可能になった。しかし、それは単なる出来事の連鎖にすぎない。そして珍しいことでもない。多くの親が、子どもによりよい人生を歩ませるために犠牲を払う。本当に取り組むべきは「だから何なのか」と問うことだ。それは語り手にとって、そしてそれを聞く聴衆にとって、何を意味するのか。
私のクライアントがそのストーリーをうまく語る前に、彼はそれが自分にとって何を意味するのかを振り返る必要があった。それは「両親に報いるために、できる限り多くを成し遂げる義務がある」という意味かもしれない。あるいは、「両親の犠牲は、両親がそうせざるを得なかったように、自分の子どもたちを顧みないで済む自由を私に与えてくれた」という意味かもしれない。同じ犠牲でも、意味は異なる。解釈が異なれば、意思決定、行動、そして最終的な結果は大きく変わり得る。
ストーリー・ファシリテーションのツールがオープンなコミュニケーションを育む
AIは数秒でメールの下書きを作れるが、同僚の意図を読み違えた可能性に好奇心を持つことはできない。誰かが犠牲の本当の意味を見いだすまでそばにいることも、まだ誰も声に出して語っていないストーリーの下にあるパターンに気づくこともできない。その仕事は今も私たちが担うべきものであり、それが信頼の構築を助ける。そして信頼こそが、職場でオープンなコミュニケーションを育む。あなたのドアが文字通り開いていたとしても、相手があなたを信頼していなければ、言いにくいことを抱えてあなたのオフィスに入ってくる人はいない。
ストーリー・ファシリテーションの3つのツール、すなわち好奇心、傾聴、リフレクションは、信頼を築き、オープンなコミュニケーションを促す助けになる。「きっとこうだ」と決めつける代わりに「もう少し聞かせてください」と尋ねるたびに、誰かが共有したことにただうなずくのではなく行動に移すたびに、あなたは自分が信頼に値すること、そしてオープンなコミュニケーションには実際に価値があることを示している。
目の前の言葉が本当に人間のものなのかを人々がますます疑う職場において、時間をかけて聴き、映し返し、他者が自分のストーリーを見つけるのを助けるコミュニケーションスキルを持つリーダーこそが、人々から実際に信頼され、ついていきたいと思われる存在になる。



