AI

2026.09.30 11:00

クリエイターは「仕組みを設計する役割」へ、楽天が推進するクリエイティブの変革

(左から)楽天グループの鈴木英介氏、鍋嶋靖弘氏、宮下尚久氏、吉田ナオヤ氏

(左から)楽天グループの鈴木英介氏、鍋嶋靖弘氏、宮下尚久氏、吉田ナオヤ氏

生成AIの登場により、画像生成やクリエイティブ制作の効率化に取り組む企業やフリーランスは急速に増えている。しかし、本格導入にあたり表現の揺らぎによるブランド価値の毀損や商用利用における著作権リスク、現場への定着といったさまざまなハードルが立ちはだかるのが実情だ。

そうした中、70以上の多角的なサービスを展開する楽天グループは、アドビが展開する画像生成AI「Adobe Firefly カスタムモデル」を導入し、独自ブランドのトーン&マナーを学習させたAI活用を推進している。

単なる作業の効率化にとどまらず、組織全体のクリエイティブ制作プロセスを根底から変革する同社の挑戦について、楽天グループ オペレーティングモデル統合部 GM 鈴木英介氏、クリエイティブデザイン戦略部 GM 鍋嶋靖弘氏、楽天デザインラボ インターメディアクリエイティブグループ マネージャー 宮下尚久氏、楽天デザインラボ ブランドクリエイティブグループ マネージャー 吉田ナオヤ氏に話を伺った。

70以上のサービスを展開する楽天が直面した「壁」

楽天は「楽天エコシステム(経済圏)」として、楽天カード、楽天市場、楽天モバイルなど多様なサービスをシングルブランドのもとで提供している。しかし、生成AI導入以前は、その巨大さゆえの課題に直面していた。

「グループ全体で直面していた課題は大きく3つありました。1つ目は『品質の担保』です。70以上のサービスが存在し、それぞれのカンパニーや外部パートナーに多数のクリエイターが所属しているため、ブランド全体での表現の一貫性や品質の維持に非常に苦労していました。2点目はメディアの多様化に伴う『生産性の向上』、そして3点目がコスト削減とクリエイティブの民主化のための『運用性の拡張』です」(鍋嶋氏)

楽天グループ全体のブランドアイデンティティやプロダクト体験のクオリティを統括する、クリエイティブデザイン戦略部 GM 鍋嶋靖弘氏
楽天グループ全体のブランドアイデンティティやプロダクト体験のクオリティを統括する、クリエイティブデザイン戦略部 GM 鍋嶋靖弘氏

特にSNSなどの環境下では「昨日までの正解がすぐにノイズになる」ほど情報の新陳代謝が激しく、人力中心の制作体制では需要の増大に追いつかなくなりつつあった。さらに、通常の画像生成AIを試したものの、生成される画像のランダム性が高く、プロンプトの試行錯誤を繰り返す労力が運用のネックとなっていた。

そこで同社が導入したのが、アドビが提供する独自の画像生成AI機能「Adobe Firefly カスタムモデル」だ。Adobe Firefly カスタムモデルはテキストによるプロンプトから画像を生成する際、企業やチーム独自の「お手本画像(10〜30枚程度)」を事前学習させることで、自社固有の表現ルールやトーン&マナー(ブランド全体の一貫性や世界観を保つためのルールや指針)を記憶させた独自の画像生成モデルを構築できる機能だ。

次ページ > 「3つの運用体系」で驚異的な効率化を実現

文=布施加奈子

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