エルニーニョ現象は、不規則に繰り返し発生する世界的な気象パターンだ。太平洋の海面水温が平年より高くなることで数年おきに発生し、アジア全域で経済に中規模から深刻な打撃をもたらす。そして、2026年後半から勢いを増すと予想されているエルニーニョの影響は、年初から展開している予測不能な事態、すなわちイランをめぐる紛争によってさらに増幅されるおそれがある。
この気象現象と紛争は、アジア諸国にとって二重の圧迫となっている。海上交通の要衝であるホルムズ海峡を通る物資の輸送が滞る中、アジアでは開発途上国も先進国も、すでに燃料や肥料の価格急騰に苦しんでいる。
気象専門家らは、今回のエルニーニョが非常に強力な「スーパーエルニーニョ」に発達する可能性が高いと警告しており、国連も最新の予測で「極めて強く、異例の規模のエルニーニョ」になると警鐘を鳴らした。観測史上最強となり「2027年まで続く」見通しだという。
アジア全域で長引く高温と少雨による干ばつにより、農業生産の急激な減少は避けられず、各国の政策担当者は困難な選択を迫られることになる。インフレ高進への対抗策として金融引き締めを行う一方で、エルニーニョ現象が国民に及ぼす打撃を緩和するために財政支出を増やさなければならないかもしれない。個人消費は、アジア諸国(特にインド、インドネシア、フィリピン)における経済成長の主たる原動力となっている。物価の上昇は購買意欲を冷やし、成長を鈍化させるだろう。
政策担当者たちは、1997~98年に発生した過去のスーパーエルニーニョが、アジア通貨危機と時期を同じくしていたことを記憶しているだろう。この「双子の危機」の震源地はインドネシアで、干ばつと金融崩壊により最も大きな被害を受け、大規模な社会不安を招いた。1998年以降、アジア諸国がより強固な経済的緩衝力を築いてきたのは事実だ。中国、インド、ベトナム、インドネシアは世界経済の重要な担い手として台頭してきた。
しかし、この間に気候変動のペースも加速し、自然災害や干ばつの発生頻度は憂慮すべきレベルで増加している。インドネシアで最近発生した森林火災、インドの雨季(モンスーン期)の少雨、ネパールと中国での衝撃的な鉄砲水などは、こうした傾向を如実に物語っている。スーパーエルニーニョは、このような自然災害の規模や被害をいっそう甚大なものにする。
自然現象は制御できない。だが、経済的ショックに対処する手段はある。アジアの政策担当者たちは、まず第一に、米や砂糖をはじめとする生活に欠かせない農産物や資源に対して一方的な輸出制限を課さないよう、より緊密に連携すべきだ。一方的な輸出規制は、地域の物資不足やインフレ圧力を悪化させるだけだからだ。過去のこうした措置は景気回復のサイクルを遅らせ、国家間の関係を悪化させてきた。
アジアは依然として世界経済の中で最もダイナミックな地域である。迫り来るスーパーエルニーニョは、アジアが地域的な危機管理において成熟し、自立した段階に達したことを示す好機となる。それができなければ、市井の反発を招き、社会不安や抗議行動が高まることになるだろう。



