本当はライバルじゃない?『北風と太陽』の意外な関係性 〜あの物語を「デカボ視点」で読んでみた #3

「脱炭素」について、暮らしや仕事との具体的な接点を見つけ、「自分の問題」だと感じられている人は、果たしてどれだけいるでしょうか——。

そんな脱炭素(Decarbonization)を「デカボ」と呼び、楽しく自分ごと化してもらうための事業を推進する企業、Earth hacks CEOの関根澄人が、身近な出来事やトレンド、誰もが知る物語などを通し、世の中をデカボ視点で読み替えていく連載。第3回は、イソップ童話の『北風と太陽』を取り上げます。

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『北風と太陽』を令和の脱炭素社会に置き換える

まずは、物語のあらすじをおさらいしましょう。

ある日、北風と太陽が通りかかった旅人の上着をどちらが先に脱がせられるか、力比べをすることになりました。北風が力任せに強く吹きつけると、旅人は寒さに震え、上着をますます強く体に巻きつけました。一方で、太陽が穏やかに照らすと、旅人はやがて暑さに耐えかね、自ら上着を脱ぎました——おしまい。

この結末から私たちが受け取っていたのは、「無理強いは逆効果」「相手の心を動かすのは、力ではなく優しさ」といった教訓だったのではないでしょうか。

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では、この物語を現代の脱炭素の世界に当てはめて読み替えてみましょう。まず、旅人は生活者。上着は、ガソリン車での通勤や冷暖房に頼る暮らしなど、生活者にとって手放しがたい「CO2を生む生活習慣」です。北風は、罰則や義務化を伴う「規制」。太陽は、生活者がエコな選択肢を自発的に選びたくなる「誘因設計」です。この視点で近年行われた脱炭素の取り組みを眺めると、その成否の要因が浮き彫りになります。

「北風政策」が招いた、フランス全土の猛反発

まず、失敗例からご紹介しましょう。2018年11月、フランス全土で約28万人(フランス内務省発表)のデモ隊が黄色いベストを着て、道路を封鎖しました。発端は、同国政府が地球温暖化対策の一環として発表した、燃料税(ガソリン・軽油)引き上げへの反発です。発起人は、パリ郊外で小さな化粧品会社を営んでいた女性、プリシリア・リュドスキー。彼女は公共交通機関だけでは暮らしにくい地域で、商品の配達や移動のために日常的に車を使っていました。

彼女がオンラインで始めた反対署名は、半年ほどで100万人を超える賛同を集め、やがて「黄色いベスト運動」として全土に広がりました。その結果、同国政府は同年12月、燃料税の引き上げ撤回に追い込まれました。

環境負荷が大きい燃料の使用量を抑えるために、その税率を上げる——。環境政策としては筋が通っているはずのこのアプローチは、まさに「北風」でした。地方や郊外に暮らし、車を手放せない人々に重い負担を強いる設計は、多くの人にとって「押しつけられた我慢」としてしか受け取られていませんでした。北風が強く吹きつけると旅人がコートを強く体に巻きつけたように、人は力で迫られるほど、いまの選択にしがみつくのです。

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文=関根澄人

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「デカボ」で変わる世界の見え方」

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