「課題解決より、課題発見が大事」「良い問いが、良い答えを生む」この考え方に共感する、リアルな社会問題をいち早く知りたい方への連載「〇〇問題 – 日本NPOセンターが発見した今月の社会課題」。
著者の日本NPOセンターは、全国5万以上のNPOとのネットワークを生かし、現場の今の課題を常時収集しています。その課題に電通Bチームを中心としたコピーライターが、わかりやすく「〇〇問題」という形で名前をつけてリスト化してきた課題ラボの活動のなかから、毎月ひとつにフォーカスしたコラムを掲載しています。
課題は現場にあり。解きたいと思った課題をみんなで解いていけば、きっと新しい社会が見えてくるはず。
水質は改善したのに、なぜ「湖の幸」は消えたのか
皆さんは「レッドデータブック」をご存知でしょうか。名前からは仰々しい印象を受けますが、絶滅のおそれのある野生動植物の現状をまとめた報告書のことです。島根県は2026年3月、12年ぶりとなる「しまねレッドデータブック」の改訂版を発行しました。
掲載された絶滅危惧種の数は、過去20年で約1.5倍に増加。なかでも私がもっとも驚いたのは、そこにワカサギの名前があったことです。身近な食材が絶滅危惧種になっているとは、思いもよりませんでした。
島根県の中海(なかうみ)とその西隣に広がる宍道湖(しんじこ)は、かつて西日本有数のワカサギの産地でした。今回、両湖の保全活動に20年にわたり携わってきた認定特定非営利活動法人 自然再生センターの小倉加代子副理事長に話を伺いました。
━━中海・宍道湖について教えてください。
中海と宍道湖は国内では珍しい、海水と淡水が混じり合う湖です。すぐ近くに日本海があり、海水が出入りすることによって独自の生態系が築かれています。貴重な水鳥や魚、貝の生息地としても知られ、05年には国際的に重要な湿地を保全する「ラムサール条約」に登録されました。
古くから地域の漁業と食文化を支えてきたふたつの湖ですが、自然環境のバランスはここ数十年で徐々に崩れてきました。その結果、今回レッドデータブックに掲載されたワカサギをはじめ、正月料理の定番だった赤貝(サルボウガイ)など、いくつもの湖の幸が地域の食卓から姿を消しました。
━━なぜ湖の生態系は崩れたのですか。
中海・宍道湖エリアでは、1963年から農地をつくるために干拓・淡水化事業が進められてきました。ところが、水質汚濁やヘドロの堆積といった環境への悪影響から、00年に干拓が、02年には淡水化が中止されました。その結果、両湖の水質は改善され、透明度は上がりましたが、長年湖底に蓄積していたヘドロに太陽光が差し込むことになり、海藻や水草は光合成を活発化させました。そして、大量発生するようになったのです。
海藻や水草は、魚や貝などのすみかになりますが、増えすぎると枯れて湖底にたまることで水質を悪化させ、生き物たちの命を奪う原因になります。また、岸辺に打ち上げられることで腐敗して悪臭を放ち、住民から苦情が出る事態となりました。



