多くのリーダーは、自社に対する最大の脅威は、成長が鈍化したり、競合他社にシェアを奪われたり、市場が予期せず変化したりしたときにやってくると考えている。しかし私の経験では、最も脆弱な瞬間の1つは、すべてがうまくいっているように見えるときに訪れる。
成功は人を欺く。成功を生み出した前提そのものを強化するからだ。顧客が満足し、売上が伸びているとき、リーダーは当然、自分たちが正しい問題を解決していると考える。まさにそのとき、最適化がイノベーションを装うことがある。
私はテクノロジー企業を立ち上げ、売却してきた。そして現在は自動車業界の企業を率いている。事業内容はまったく異なるが、キャリアを通じて変わらず心に残っている教訓がある。成功している企業はいずれ、現在のモデルを改善することが、次のモデルを構築することとは同じではなくなる地点に到達するということだ。
自動車事業に携わり始めた頃、私たちはクラシック車両をレストアし、現代化していた。毎年、職人技、エンジニアリング、顧客体験を改善した。需要は伸び続け、従来のあらゆる指標で見れば、事業は成功していた。
正しい問いを立てる
そのとき私は、すべてを変える問いを投げかけた。顧客はどのような問題を解決しようとしているのか。
答えは、レストアされたヴィンテージ車を所有することではなかった。顧客が求めていたのは、象徴的なデザインが呼び起こす感情的なつながりであり、同時に現代の車に期待される安全性と信頼性を犠牲にしないことだった。
クラシックなスタイルと現代的な性能の間のトレードオフは、顧客が選んだものではなかった。業界が受け入れてきたものだった。
その違いに気づいたとき、私たちは問題への出発点を誤っていたのだと理解した。老朽化した車両プラットフォームの改善を続けるのではなく、完全に現代的な基盤の上に、クラシックに着想を得た高級車をつくることにした。
リーダーシップにおける貴重な教訓
自動車に関する洞察のように見えたものは、その後も私が持ち続けている重要なリーダーシップの教訓となった。
ソフトウェア開発には、ローカルマキシマムという概念がある。特定の前提の範囲内にとどまったまま到達できる最高点のことだ。漸進的な改善を続けることはできるが、結局は同じ問題を同じ方法で解決しているため、やがて1つひとつの改善が生む効果は逓減していく。
成功している企業はいずれ、昨日の成功パターンが今日の制約になる地点に達する。
あるソフトウェア企業は、複雑さそのものが顧客の問題になっていないかを問う代わりに、機能を追加し続ける。あるプロフェッショナルサービス企業は、顧客が価値をどう定義しているかを考え直すのではなく、請求可能時間を最適化する。あるメーカーは、顧客が柔軟性、パーソナライゼーション、サステナビリティをますます重視するようになっているにもかかわらず、生産効率を改善し続ける。
制約としての成功
この罠が危険なのはそこにある。戦略が進化を止めた後も、ダッシュボードの数字は改善し続けるのだ。
業界を再定義する企業は、失敗しているから方向転換するのではない。成功がそれ自体の制約になり得ることを認識できるだけの規律があるから方向転換するのだ。業績が低下する頃には、モデルを見直すための機会はすでに閉じていることが多い。Netflixは、より効率的なビデオレンタル店をつくることで成功したわけではない。Shopifyは、より優れたマーケットプレイスになろうとしたわけではない。Adobeは、パッケージソフトを単に改善したわけではない。それぞれが、業界が恒久的なものとして扱っていた前提に疑問を投げかけた。
ブレークスルーが、失敗の最中に姿を現すことはめったにない。それは事業が勝っているときに現れる。
事業が成長しているとき、リーダーは自然と実行に注力する。オペレーションを改善し、人材を採用し、効率を高め、一貫した成果を出す。こうした規律は不可欠である。一方で、事業の成功は前提を見えなくしてしまうこともある。プロセスは習慣になり、習慣は教義になる。やがてチームは、その土台にある前提がなお存在するに値するのかを問わなくなる。
前提を問い直す
私は、リーダーシップとは実際には2つの異なる仕事だと考えるようになった。1つ目は実行を改善すること。2つ目は、実行がもはや問題ではないときを見極めることだ。企業は、自分たちが運営している事業を最適化する段階から、その土台にある前提を問い直す段階へと移るべきときを理解していなければならない。
ほとんどの組織は、ほぼすべての時間を1つ目に費やす。測定できるからだ。利益率、顧客獲得、製品品質、業務効率は追跡できる。2つ目は難しい。うまく機能しているように見える考えに、リーダーが異議を唱えることを求めるからだ。
私がリーダーシップチームと交わしてきた最も価値ある対話のいくつかは、誰もが事実として受け入れている前提を検証することから始まった。そうした議論は、何年にもわたる最適化では決して見いだせなかった機会を明らかにすることが多い。
複数の企業や業界を振り返ると、私が経験した最大のブレークスルーは、実行そのものの下にある土台を問い直すことから始まっていた。
失敗は企業に内省を迫る。
成功はしばしば、内省は不要だと企業に思い込ませる。
成功している企業のすべてが、自らを再発明する必要があるわけではない。ほとんどはそうではない。重要なのは、そもそも成功をもたらした前提を問い続けることをやめる口実に、成功をしてはならないということだ。



