リーダーが困難な問題への対処を避けてしまうのには、納得のいく理由がある。特に、その話し合いが仕事上の関係に影響を及ぼすのではないかと心配するときだ。その結果、フィードバックを和らげたり、懸念を遠回しに伝えたり、あるいは話し合い自体を先延ばしにしたりすることになる。「いい人」でいることは、最初の気まずさを和らげてくれるかもしれないが、根本的な問題は残されたままだ。時間が経つにつれ、対立を避けることの影響は、リーダー自身だけでなく、チームや組織全体にとっても大きなものになる。
職場の対立を避けることの代償
リーダーにとっての代償
気まずい会話を先延ばしにしても、後で話しやすくなることはほとんどない。行動は定着し、チームメンバーは、過去には容認されているように見えたことを指摘されると、防御的になることがある。
「いい人」であろうとするリーダーは、明確なフィードバックをするのではなく、懸念を遠回しに伝えようとするかもしれない。それで期待は十分に伝わると考えるからだ。しかし、何も変わらないと、苛立ちや不満が積み重なっていく。
チームにとっての代償
職場の対立が、ただ1人や2人の個人だけに影響を与えることはめったにない。放置された対立はチーム全体に広がり、人々が敵味方に分かれたり、派閥が形成されたりして、問題の解決ではなく、問題について話すことに時間が費やされる。また、対立のせいで同僚のパフォーマンスが低下し、他のメンバーがその分の仕事を肩代わりすることで、ストレスや不満が生じることもある。
マネージャーへの信頼も揺らぎ始めるかもしれない。懸念を口にしたメンバーは、耳を傾けられていない、支援されていないと感じることがある。とくに、問題への対応が一貫していないと感じる場合はそうだ。当初は業務に関する対立だったものが、人間関係の対立へと発展し、チーム内のエンゲージメント低下、協働の減少、生産性の低下につながる。
組織にとっての代償
時間の経過とともに、対立の回避が組織全体に浸透すると、それが組織文化に組み込まれてしまう可能性がある。個々のチーム内の緊張が積み重なり、やがて組織全体のパフォーマンスにも影響を及ぼす。対立が発生した初期段階で解決の責任を誰も引き受けないと、人事部門への負担が大きくなる。本来はインフォーマルな会話で処理できたはずの問題が、苦情処理を含むリソース集約的な正式な手続きに発展してしまうこともある。
ほかにも、目に見えにくい代償がある。懸念を示してもほとんど変わらないと従業員が感じれば、声を上げることをやめるかもしれない。その結果、表面的には調和しているように見えても、問題は組織のリーダー層から見えないまま残り、深刻化するまで気づかれないことがある。組織はまた、プロセス改善、イノベーション、より良い関係性など、健全な対立から得られる機会を失うリスクも抱える。
対立回避の代償を減らすためのステップ
状況を変える方法
効果的な変革をもたらすには、個人、チーム、そして組織という3つのレベルでの行動が必要だ。リーダーにとっての第一歩は、気まずい話し合いを避けることは痛みを和らげているのではなく、単に他へ移しているだけだと認識することだ。チームレベルでの目標は、対立を排除することではなく、問題が早期に、オープンに、そして建設的に話し合われる環境を作ることにある。これら両方を支えるのが組織であり、リーダーとスタッフの双方をサポートするための教育や対立解決スキルのトレーニングを提供できる。
対立に適切に向き合える文化とは、対立を避けるのではなく、問題に早期かつ非公式に対処する自信とスキルを誰もが持っている文化だ。そうした文化の中では、「いい人」でいることが「明確に伝えること」の代わりになってしまっている瞬間に気づくことが、リーダーが「いい人」の罠に陥らない助けになる。



