問3:競合への対抗心がAI投資を左右していないか
第3の問いは、OpenAIと同じように、競争相手への対抗心が自社のAI支出を動かしていないかという点だ。
OpenAI自身のアカウントは、競合企業に関するうわさを聞いたため、最も高性能なモデルをこの問題に投入したと投稿した。見出しを競合に奪われることへの恐れを理由に、数百万ドル(数億円規模)を要する1週間の取り組みを進めたことになる。
取締役会は、自社のAI予算が競合企業による2026年第2四半期の発表を基準に決まっているのか、それとも自社が解決すべき問題を基準に決まっているのかを問うべきだ。競争心は動機としては有効でも、戦略としては不十分である。
問4:AIから答えを買うだけか、社内に理解する力を築くのか
第4の問いは、OpenAIから答えを買っているだけなのか、それとも自社の能力を築いているのかだ。
バックマスターは、結果そのものが重要なのではないと述べた。重要なのは、数学者とモデルを組み合わせれば、1年分の仕事を1カ月で進められるようになったことだという。
バックマスターは、学生をどう育成し、功績をどう帰属させるかという数学界の仕組みにとって、これは「ディープ・ブルー対カスパロフ」の瞬間だと表現した。IBMのチェス専用コンピューター「ディープ・ブルー」が世界王者ガルリ・カスパロフを破った出来事になぞらえた比喩だ。
バックマスターは、その代償についても率直だった。機械が生成した証明は「これまで読んだ中で最もひどい」もので、チームは内容を理解するため昼夜を問わず作業していると書いた。自分が急いでまとめたオイラー方程式に関するノートについても、低品質なAI生成物を意味する「AIスロップ」と呼んだ。
最も高い評価を受ける数学者の1人であるテレンス・タオは、2026年9月10日時点でYahoo Techに対し、未解決問題から答えを刈り取るような使い方は、次世代の人材を育てる生態系を壊しかねないと警告していた。
AIに答えを作らせるだけで、チームが理解する力を育てないリーダーは、四半期では勝っても、10年では負ける。
OpenAIの証明が検証に耐えるかどうかにかかわらず、企業がAI事業者と結んだ契約はすでに効力を持っている。2026年9月10日時点で、その契約を改めて読み直す価値はある。


