役立つアドバイスを友人からもらったときのことを思い出してほしい。その友人はあなたが置かれた状況について、あなたより詳しくなかった可能性が高く、似た経験をしたこともなかったかもしれない。にもかかわらず、そのときの会話が役に立ったのは、友人が「こうすべきだ」と、拙速にアドバイスしなかったからに違いない。
それは大半の人が思い描く「知恵」とは違う。一般的に賢い友人とは、人生経験が豊富であり、その経験が他者の参考になるような人物がイメージされる。
ところが、賢明な推論に関する研究は別のことを示している。知恵を実証的に研究する心理学者たちは、人が何を知っているかよりも、目に見えない要素をどのように扱うかに注目している。その意味での知恵は、所有物より事態に向き合う姿勢に近い。だからこそ、同じ人物がある瞬間は賢明な推論をし、次の瞬間には不適切な推論をすることがあるのだ。
有益なアドバイスをしてくれる人には、2つの習慣が見られる。
習慣その1:答える前に、まず相手の状況を尋ねる
相手の立場を想像したからといって、相手の考えを正確に把握できるとは限らない。最終的に思い描く相手の考えは、ほとんどが自分の思い込みから成り立っている。
研究者たちはここで「視点の取得」と「視点の獲得」を区別している。視点の獲得とは、相手に何が起きているのかを尋ね、答えが得られるまで黙っていることだ。些細なことだが、多くの人はこれを飛ばしてしまう。学術誌『フロンティアズ・イン・コミュニケーション』に2021年に掲載された研究では、3つの実験のうち2つにおいて、相手に質問した人の方が相手の考えをより正確に予測できたとしている。問題は、それを十分に行った人がごく一部にすぎず、自信のある人ほどあえて質問しなかったという事実だ。
例えば、友人が仕事を辞めることを考えていると言ったとしよう。多くの聞き手は、すぐに自分の意見をつくり始め、1分もしないうちにまとめる。だが、もっと役に立つ反応は、「眠れない夜に、今の仕事について真っ先に頭に浮かぶことは何か」と尋ねることかもしれない。その答えによって、問題の中身が変わることがあるからだ。友人はキャリアチェンジを真剣に検討しているわけではなく、「違う生き方を望んでもいいのだろうか」と、自問自答している段階なのかもしれない。
だからこそ、良いアドバイスには時間がかかると感じられることがある。相談を受ける側からの質問は、本題に入る前の形式的なものではない。アドバイスをする側が、実際の問題が何なのかを見極める手段なのだ。
習慣その2:自分の知識の乏しさを正直に認める
2つ目の習慣は「知的謙虚さ」だ。これは自己不信とは異なる。学術誌『ネイチャー・レビュー・サイコロジー』に2022年に掲載されたレビューが示すように、自分の知識には限界があり、自分の考えが間違っている可能性があると認識することを指す。実際には、外部から観察している他人の人生について、自分がどこまで知り得るのかを、正確に把握していることを意味する。



