東京・麻布台ヒルズ内のサイネージに映る浮世絵風の鮮やかな画像。「日本における日本のためのAI企業」を目指すSakana AIが手がけたものだ。開発を主導したのはタイ出身のカラーヌワット・タリン。
「欧米企業の汎用AIは日本文化の理解が不十分で、浮世絵をつくらせても和風の“それっぽいイラスト”になってしまう。質感を再現するため、美術館などの所蔵コレクション1万2000枚を学習させました。さらに気象庁の予測データとアメダスの実測データで、天気や四季に応じた画像を表示する仕組みも構築しました」
大学時代、『源氏物語』を漫画化した『あさきゆめみし』のタイ語版に出合って夢中になり、古典文学の研究のため来日。大学院で古注釈研究に勤しむなか、くずし字に苦戦した経験から、もっと簡単に読めるようにしたいと、東大の研究室で機械学習を学び、旧勤務先でくずし字認識アプリ「miwo(みを)」を開発した。
「日本には、埋もれたままの古い書物が山ほどある。アプリでくずし字が読めれば古典が身近になり、従来の説を覆す大発見も生まれるはず」
翻刻時間の大幅な短縮を実現した「みを」は、今や国内外の古典研究の現場で活用されている。
「実利になるかどうかで物事の価値は測れない。私のように古典研究とAI、ふたつの世界に身を置くこともできるし、それによって新たな価値を生み出せると知ってもらいたい」
カラーヌワット・タリン◎タイ・バンコク生まれ。大学院から日本に留学し、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。国立情報学研究所、Google DeepMindを経て、2024年にSakana AIに参画。リサーチサイエンティストとして研究開発に携わる。



