ヘルスケア

2026.09.12 13:00

がん治療のCAR-Tをアレルギー治療に応用、マウス実験で炎症抑制を確認

stock.adobe.com

問題は、通常の制御性T細胞には、どの免疫反応を抑制すべきかがわからないことだ。そこで今回の新しいアプローチでは、制御性T細胞に対して、何をすればいいのかという方向性を与えた。具体的には、カバノキ花粉のたんぱく質を認識する新たな受容体が制御性T細胞に組み込まれた。すると制御性T細胞は、アレルゲンであるそのたんぱく質に遭遇した際、活性化し、その周囲の免疫反応を抑制するようになる。

advertisement

要するにこの細胞は、「標的の特定」と「免疫反応の抑制」という2つの働きを兼ね備えた一つの治療法になるわけだ。アレルゲンを見つけ出すことができれば、続いて起こる炎症をも抑えることも可能になる。

カバノキ花粉が標的に選ばれた理由

最初の実験でカバノキ花粉が標的に選ばれたのは、含まれているたんぱく質の1種が、カバノキ花粉アレルギーを引き起こす大きな要因だからだ。制御性T細胞は、カバノキ花粉のたんぱく質を認識するようプログラムされ、アレルゲンであるそのたんぱく質に遭遇すると活性化し、アレルギー性免疫機能を抑制した。

免疫システムを広範にわたって抑制してしまうと、感染症やほかの問題に対して無防備になりかねない。しかし、特定のアレルゲンに遭遇した場合のみ作用する治療法なら、体の防御システムを全般的に停止することなく、好ましくない免疫反応を抑えられる可能性がある。

advertisement

実験では、マウスのアレルギー反応が軽減

最も厳密な実験では、カバノキ花粉に過敏反応を示すよう誘導されたマウスが使われている。まずはマウスに、改変された制御性T細胞を投与。その後、アレルゲンに曝露させたところ、肺の炎症の低下が見られた。また、それらの改変された細胞は、アレルギー反応に遭遇し得る肺やその周辺の免疫組織へと移動した。

この治療法により、マウスにおける、より広範なアレルギー反応にも変化が現れた。即時型アレルギーの原因であるIgE抗体の値が低下したほか(値が高いとアレルギー反応が出やすい)、アレルギー性炎症に関与する免疫シグナルの一つの産生が減少した。アレルギー性疾患に関連する特定の炎症細胞の数も少なくなっていた。

改変された制御性T細胞は、単に一つの症状を抑えるだけではなく、アレルギー反応を引き起こす免疫環境そのものをも変えたのだ。

CAR-T技術の新たな方向性

最初期のCAR-T療法は主に、がん細胞を見つけて破壊するという目標を中心に設計されていた。しかし、その基盤となっている技術は必ずしも、改変された免疫細胞に破壊的な役割を求めているわけではない。免疫細胞に対して、炎症を制御するよう新たな指示を与えるために活用することもできるのだ。

今回の研究は、まったく異なる可能性の領域を切り開くものだ。これと同じアプローチはいずれ、ほかのアレルゲンにも応用できる可能性がある。また、体の防御システムが本来なら許容すべき対象を攻撃してしまうという免疫反応への対抗手段にもなるかもしれない。

改変した制御性T細胞を、実際のアレルギー治療に活用できるまでには、まだ長い道のりが待っている。現時点では、研究対象はあくまでもマウスであり、人間に使用するなら、安全性や持続性、実用性を確立しなくてはならない。しかし、このアプローチが人間でも効果を発揮すれば、アレルギー治療は、反応を管理するというレベルを飛び越え、もっと野心的な方向へと進んでいく可能性がある。そもそも許容すべき物質には体が反応しないよう、免疫システムに学習させることも可能かもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事