食&酒

2026.09.12 16:00

スコットランドの港町から、潮風をまとって届けられる海のモルト:オールドプルトニー ハーバー

OLD PULTENEY HARBOUR

OLD PULTENEY HARBOUR

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は10月号(8月25日発売)より、「オールドプルトニー ハーバー」。やわらかな風味とレモンケーキのようなさわやかな甘さ、そしてもちろん潮風を思わせるミネラル感があり、カクテルにも使いやすい1本だ。


ヒトの嗅覚は五感のなかでもとりわけ記憶や感情と強く結びついているそうだ。これは、視覚や聴覚の情報はいったん脳の視床を経由してから処理される一方で、嗅覚だけは海馬や扁桃体など大脳辺縁体へほぼ直接届くことによる作用。海馬は記憶、扁桃体は感情をつかさどる場所だから、匂いは感情や思い出を呼び起こす……とは、“プルースト現象”としても広く知られている。

それゆえに、酒はその芳醇な香りで人を追憶の沼に沈めることがあるが、すぐれた酒は飲み手を過去の思い出へ連れ戻すだけでなく、まだ訪れたことのない土地にさえ連れていくことがあるようだ。

スコットランド最北の港町ウィックで200年にわたりつくられてきたシングルモルト「オールドプルトニー」も、そんな不思議な力をもつ一本である。グラスを傾けると立ち上る潮の気配は、北海をわたる風やカモメが飛ぶ灰色の空、切り立つ断崖など遠くスコットランドの海辺の風景をあざやかに描き出し、「The Maritime Malt(海のモルト)」の愛称で親しまれてきた。

「ウィックはかつてニシン漁で栄えた港町。北海から潮風が吹くので、熟成庫にも海の空気が流れ込む。そうした土地ならではの環境が、ほのかな塩味やミネラル感を思わせる個性的な味わいを育んできました……って、ぼくも行ったことはないんですけれどね」と笑うのは、「コクテール」(東京・池袋)オーナーの後藤啓介。

「一般にシングルモルトはストレートやロックで飲むことが多いのですが、この『オールドプルトニー ハーバー』はやわらかな風味とレモンケーキのようなさわやかな甘さ、そしてもちろん潮風を思わせるミネラル感があり、カクテルにも使いやすいウイスキーです」

この日、後藤が焼鳥の「つくね」に合わせてシェーカーを振ったのは、カクテルの女王とも称される「マンハッタン」。通常はライウイスキーでつくられることが多いクラシックカクテルだが、後藤はバナナを漬けこんだ「オールドプルトニー ハーバー」をベースに、ベルモットの代わりに2種のシェリーを加え、驚くほど軽やかな一杯へとツイストさせた。焼鳥のタレとも「オールドプルトニー ハーバー」の潮風を思わせる風味がよくマッチし、思わず「もう一杯」とリクエスト。ささみやせせりにはギムレット、レバーにはネグローニがおすすめとのことで、次なる一杯と一本は? と未知の味わいにワクワクする。

オールドプルトニー ハーバー

容量|700ml
度数|40%
価格|4730円(参考小売価格)
問い合わせ|三陽物産 https://sanyo-brands.jp/

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写真=菅野祐二 文・構成=秋山 都

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