リーダーシップ

2026.09.10 11:39

エージェント型コマースが変える「顧客を所有するのは誰か」

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エージェント型コマースは「顧客を誰が所有するか」をどう変えるのか。

30年にわたり、デジタル戦略は誰もあえて明文化しなかった前提の上に成り立っていた。企業は、顧客が到着する場所を所有している、という前提である。ウェブサイト、アプリ、店舗を構築すれば、人々はそこへやって来る。検索はその道筋の真ん中に位置し、手数料を取っていたが、常に顧客を引き渡していた。取引、アカウント、データ、そして関係性はすべて、自社の領域に着地していた。

変わりつつあるのは、まさにこの部分だ。そして、その仕組みを正確に捉える価値がある。「中抜き」という言葉は大まかに使われがちだが、ここで起きていることは、より限定的で、より重大である。

検索は手数料を取った。アシスタントは仕事を完遂できる。

タスクを完了できるアシスタントは、顧客を引き渡さない。文脈を保持し、好みを記憶し、選択肢を比較し、実行する。チケットを購入し、部屋を予約し、請求を提出し、部品を再注文できるなら、顧客体験が起きた場所は自社チャネルではない。そこはフルフィルメントが行われた場所である。

それはバリューチェーンにおける別の位置であり、異なるマージンを伴う。ある交通事業者は、人々が時刻表を確認するために自社アプリを開かなくなり、アシスタントに尋ねていることに気づき、チケットはその会話の中で購入可能でなければならないと理解する。同じ論理は、顧客の最初の問いが別の場所で答えられ得るあらゆる企業に及ぶ。答えが自社抜きで届くなら、取引もそれに続く可能性がある。

地理的な状況は一様ではなく、決めつけるのではなく把握する価値がある。いくつかの大市場では、カタログ、決済、返品のすべてが企業の所有しないチャネル内にあり、主要な商業インターフェースは何年も前からメッセージングプラットフォームだった。他の市場ではいまだに電話が中心であり、若い顧客は電話に出ようとしない。プレゼンスは自社の好みではなく顧客に合わせなければならない。つまり、制御できない流通を受け入れ、それぞれのチャネルを自社が所有する関係性ではなく、借りているインターフェースとして扱う必要がある。

自社システムが保持するのは「記録」であり、「理由」ではない

インターフェースを借りているのだとすれば、次の問いは、そのインターフェースが再現できないものとして自社に何が残っているのか、ということになる。答えは文脈であり、ほとんどの企業は自分たちが考えているほど多くの文脈を持っていない。

仕組みをたどってみるとよい。記録システムは記録を保持する。推論は保持しない。CRMはステージと数字を知っている。だが、顧客企業のオペレーション責任者が先月退職したこと、前回の納品物が破損して届いたこと、誰も記録しなかった会議で更新交渉がこじれたことは知らない。そうした情報は、メール、カレンダー、チャット、文書、通話記録の中にある。報告ではなく行動しようとするものは、そこに到達しなければならない。そして、自社の外側にいる汎用アシスタントにはそれができない。

これは、多くの企業が現在資金を投じている投資仮説を逆転させるものだ。企業は、より優れた基幹システムがより優れた顧客体験を生み出すという考えに基づき、基幹システムの近代化に多額を投じてきた。もし体験レイヤーが基幹システムの上へ移り、場合によっては企業の外部へ完全に移っているなら、優れた記録システムは、よく運用されたユーティリティにすぎない。それは必要だ。だが、何かが決定される場所ではない。

これにうまく対処している企業が行っているのは、華やかなことではない。記憶、文脈、方針を自社側に保持し、顧客がたまたま使ったチャネルに対して、狭く、統制され、十分に計測可能な接点だけを公開している。会話は移動する。顧客に関する知識は移動しない。

一部の会話はコストではない。「プロダクト」そのものである

もう1つ残るのは、あえて自動化しないと決める一連のやり取りである。あらゆる接点をコストとして扱う発想こそが、それを壊してしまう。

代わりに、接点を分類すべきだ。顧客が、企業側がすでに知っていることを知りたいだけのやり取りは、迅速かつうまく自動化できる。注文はどこにあるのか、これは何をカバーするのか、残高はいくらか、といったものだ。結果として複数の処理が必要になるやり取りは、部分的に自動化できる。そこで限界を決めるのは技術的制約ではなく、リスクに関する判断である。真の専門性と判断を必要とするやり取りは、自動化が最もうまくいかない。そして、その線を越えて押し進めると、顧客がかなり後になるまで気づけない形で誤った、自信に満ちた回答が生まれる。

さらに、コストという枠組みではまったく見えない第4のカテゴリーがある。一部の事業では、人間によるやり取りはプロダクトに付随する間接業務ではない。それ自体がプロダクトなのだ。プライベートバンク、専門アドバイザリー会社、外科診療、ラグジュアリーブランドなどである。そのやり取りを自動化しても、そのものを提供するコストが下がるわけではない。そのものを取り除いてしまうのだ。テストは簡単だが、ほとんど誰も実施していない。そのやり取りを有能な機械に置き換えたうえで、顧客が現在支払っている金額をなお支払うかどうかを問えばよい。

規制業界は、他のあらゆる業界にも応用できる順序を見いだしている。まず従業員向けから始める。訓練を受けた人間がシステムと顧客の間に入り、リスクを封じ込める。その後、証拠が蓄積するにつれて外へ広げる。これは遅い。規制当局に対して説明可能であり、顧客向けへ進む段階を乗り切るための業務上の学習をもたらす。

では、取締役会は何を問うべきか。

今年、どれだけのサービス対応を自動化したか、ではない。顧客はいま、どこで意図を形成しているのか。そして、そのうちどれほどが、自社の存在しない場所で起きているのか。汎用アシスタントが今日、自社の取引を最初から最後まで完了できるとしたら、自社はその選択肢の中に入っているのか、それとも見えない存在なのか。自社のチャネルのうち、借りているインターフェースはどれか。そして、その向こう側で文脈を自社側に保っているのか、それとも相手側に蓄積させているのか。

多くの企業が予想するより早く訪れる問いが、もう1つある。自社が所有していないチャネル内に存在する場合、そこで何を言ってよいかを誰が所有し、どのデータがその境界を越え、答えが間違っていたときに誰が責任を負うのか。これはマーケティング上の判断ではない。そして現在、ほとんどの組織では誰もそれを担っていない。

この変化をうまく乗り越える企業は、最も多くの会話を自動化した企業ではない。どの会話がプロダクトであるかを理解し、顧客がどこから始めることを選んでも、そこに確実に存在する企業である。

もはや玄関口を所有することはできない。それでも、その背後にあるすべてを所有することはできる。

forbes.com 原文

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