「授業中はスマートフォンを片付ける」というルールから、登校から下校まで終日禁止するものにいたるまで、携帯電話の使用を制限する学区が増えている。約半数の州とワシントンD.C.において、登校から下校までの携帯電話使用を「完全禁止」する方針が導入されている。この方針は、スマートフォンが学習の妨げになり、ティーンエイジャーのメンタルヘルス危機の一因になっているとの懸念から、超党派の支持を得ている。
では、学校での携帯電話使用や、それが子どもや若者のメンタルヘルスに与える影響について、科学はどのようなデータを示しているのだろうか。
学術誌『The Lancet Regional Health—Europe』に2025年に掲載された、査読付きの「SMART Schools」研究(SMART Schools study)では、30の異なる中等学校に通う12歳から15歳の若者1200人以上を調査した。スマートフォンの使用を制限している学校の生徒は、制限のない学校の生徒と比べて、登校時間中にスマートフォンを使用する時間が約40分、SNSを利用する時間が約32分短かった。それにもかかわらず、研究グループは、スマートフォンの使用を制限している学校と許可している学校の生徒との間で、全体的な心の健康状態(ウェルビーイング)に有意な差は認められなかったと結論づけている。また、平日の総使用時間や週末の使用時間にも大きな差は見られなかった。これは、生徒たちが単に学校外の時間にスマートフォンの使用をシフトさせただけであることを意味している。一方で同研究は、スマートフォンやSNSの利用時間が増えるほど、不安、うつ、睡眠に関してより悪い結果を招く傾向があることも示している。
学習者によるスマートフォンの過度な使用に懸念を抱くのには、もっともな理由がある。これまでの研究でも、SNSやスクリーンの利用時間が長いほど、自尊心の低下、オンライン上での嫌がらせ、睡眠不足、不安やうつのレベル上昇と関連することが一貫して示されている。スマートフォンの過度な使用は、学業成績にも悪影響を及ぼす可能性がある。1万1000人以上の若者を対象とした2020年の研究では、平日に少なくとも2時間以上スマートフォンを使用していると回答した生徒は、学業成績が振るわない傾向にあり、国語や数学のテストの点数も低かった。
前述の研究結果はあるものの、これらの研究には限界も存在する。2025年に『The Lancet Regional Health—Europe』に掲載された査読付きのレビュー論文は、スマートフォン使用と若者のメンタルヘルスを関連付けるこれまでの研究データの多くが「相関関係」を示すものにとどまっていると警告している。つまり、スマートフォンの使用増加がメンタルヘルスへの悪影響を「直接的に引き起こしている(因果関係がある)」とまでは証明できていないのである。
スマートフォンを排除すれば、教室での気が散る要因をなくすことができる。しかし、生徒がスマートフォンを手にすることには明確なメリットもある。研究では、SNSや携帯電話は、子どもや若者同士のつながりを維持してコミュニティ意識を育み、若者が自己表現をする手段となるほか、問題解決能力の向上を促す可能性もあることが示されている。
したがって、学校での携帯電話禁止は、子どもや若者のメンタルヘルスという観点において、特効薬でもなければ間違いでもない。それは環境へのアプローチ(介入)の1つにすぎず、その効果は、家庭など「禁止ルールが適用されない空間」での過ごし方に大きく左右される。
今後、学校が取り得る現実的な戦略としては、携帯電話の使用制限と、デジタルリテラシー教育を組み合わせることが挙げられる。この教育では、SNS利用がメンタルヘルスに及ぼすメリットとデメリットに焦点を当てるべきだ。さらに、対面での交流の機会を設けることで、友情や人間関係を育み、発展させることができる。そして最後に、保護者も家庭内で積極的な役割を果たし、子どもがSNSや携帯電話を使用する時間について話し合って決める必要がある。目標とすべきは、テクノロジーがいつ役立ち、いつ健康を脅かすリスクになり得るかを子どもや若者に教えることだ。
新学期が始まるなか、携帯電話の使用制限を導入する地域や学区は増えている。それが、より健康で幸福な子どもや若者につながるかどうかは、科学的にはまだ未解決の問いである。



