クックの去り方は、その課題をさらに興味深いものにしている。ターナスはCEOだが、クックは会長職に留まり、アップルの将来に対して相当な経済的エクスポージャーを保持している。アップルは一つの時代からもう一つの時代へと明確に断ち切るのではなく、経験を維持する形で移行を設計したのだ。これは賢明かもしれないが、2人の関係が良好だからといって自動的に効果的なガバナンスになるわけではない。継承が本当の意味を持つのは、新CEOが前CEOならしなかったことをやりたいと思ったときだ。それまでは全員が同意できる。
稼働中のシステムを守るだけなら、ターナスは不要
ターナスは、いまだ並外れた業績を上げ続けているビジネスを引き継ぐという、珍しい課題を抱えている。アップルが最近発表した四半期決算では、iPhone、Mac、サービス部門の4〜6月期売上高が過去最高を記録し、四半期売上高は1094億ドル(約16兆8000億円)に達した。サービス部門の同四半期の売上高は300億ドル(約4兆6000億円)を超え、粗利益率は50%を上回り、同社は引き続き数百億ドルを株主に還元している。切迫した経営危機(バーニングプラットフォーム)は存在しない。まさにそのこと自体が、この仕事を難しくしている。
経営再建を担うエグゼクティブであれば、変革が必要であることが誰の目にも明らかなため、摩擦を生むことも許される。しかし、ターナスが引き継ぐのは、クックが築いたものの大部分が極めて順調に機能している企業だ。したがって、いかなる大きな変更も、「現状維持が最適である」という至極真っ当な意見との戦いを強いられることになる。そして、この対立関係が最も顕著に現れているのがAIの分野だ。
私は7月に書いた記事で、AI投資の次のフェーズは、インフラ投資から、AIを顧客の前に届けて収益化できる企業へと最終的に移行するだろうと書いた。アップルは、それを実現するために世界でも最良のポジションの一つにいる可能性がある。20億台をはるかに超えるアクティブデバイス、ハードウェアとソフトウェアの支配、莫大な流通網、そしてエコシステム内での利便性に対価を支払うことに慣れた顧客基盤を持っているのだ。
しかし、アップルは出遅れた。再構築されたSiriは重要だが、同社はAIサイクルにおいて主導権を握るのではなく、後手に回って対応することに追われてきた。グーグル、OpenAIなどが急速に進化を遂げたため、投資家は現在、消費者とテクノロジーのインターフェースが変化し、アップルが長年享受してきた支配力の一部を弱める結果になるのではないかと考えざるを得なくなっている。
ターナスは、アップルに最大のAIモデルを構築させる必要も、マイクロソフト、メタ、あるいはアルファベットを上回るデータセンター投資をさせる必要もない。むしろ、より優れたデバイス、買い替えサイクルの加速、新しいサービス、あるいはいっそう離脱が困難になるエコシステムを通じて、アップルがAIを顧客が実際に進んで対価を支払うサービスにどう変えていくかという道筋を示すことを、私は期待している。


