スタートアップの創業者は、顧客の抱える問題に徹底的に向き合うよう繰り返しアドバイスされる。彼らは顧客にインタビューを重ね、顧客の不満を洗い出し、仮説を検証しながら開発に協力してくれる顧客を募る。こうした取り組みは規律正しく、顧客中心のアプローチに見える。しかし数カ月、あるいは数年が経つと、熱心に不満を語っていた人々が、完成した製品にはほとんど関心を示さないという現実に直面するケースが多い。
起業家であり、『The Pull Power: What You Need to Know About Customer Demand to Build a Winning Startup』の著者でもあるロブ・スナイダーは、こうした事態は思いがけず起こるものではなく、間違った問いから始めたことによる予測可能な結果であることが多いと指摘する。
スナイダーは、「顧客が何に悩んでいるのか」を問うことに時間を費やすのではなく、「顧客がすでに行動していることは何か」を見極めることに、より多くの時間を割くべきだと主張する。
両者の違いは一見すると些細なものに思える。しかし実際には、「口にするだけの不満」と、「対価を払ってでも解決したい課題」を分ける決定的な違いだと言える。
「痛み」は「需要」ではない
起業の世界では、顧客にとって深刻で、コストがかかり、長く解消されていない「痛み」を見つけ出すことが重要だとされてきた。「十分に切実な問題を発見できれば、顧客はその解決策を喜んで購入する」と考えられてきたのである。
しかし、現実には顧客は驚くほど多くの不便に耐える。時代遅れのシステムや非効率なプロセス、質の悪いサービス、コストがかかる回避策に文句を言いながらも、それらを放置し続けているのだ。スナイダーのメンターは、このことを「不満は製品を乗り換える理由にならない(Bitchin' ain't switchin')」と表現している。
スナイダーは次のように説明する。「起業家の仕事は、大きな痛みやコストのかかる課題を見つけ出し、その解決策を考えることだ。しかし実際には、ほとんどの人は不満を口にしながらも、問題を抱えたまま生活している」



