先月、ある企業が単一のAIツールで30日間に5億ドル(約772億円)の請求を受けた。使用量の上限設定を忘れていたのだ。Uberは4月までに2026年分のAIコーディング予算をすべて使い果たした。Microsoftは請求額が維持不可能になったため、あるエンジニアリング部門全体にAIコーディングアシスタントの使用停止を命じた。そしてNvidiaの応用ディープラーニング担当バイスプレジデント自身もAxiosに対し、自身のチームのコンピューティングコストが、それを使うエンジニアに同社が支払う費用を上回っていると認めた。
AI革命を支えるハードウェアを製造する企業が、そのテクノロジーは人材よりも高くつくと言っているのである。
誰もがツールを買っている。誰もが「エージェントを構築している」。誰もが、次のサブスクリプションこそが成長を解き放つと確信している。だが、3社をスケールさせてイグジットに導いた経験から私が学んだのは次のことだ。テクノロジーは、すでに向かっている方向への加速装置にすぎない。事業にオペレーティングシステムがなければ、AIは混乱をより速く、より高価にするだけである。
85%の墓場
VentureBeatが引用したGartnerの予測(元記事は削除済み)は率直だった。2022年までに展開されるAIプロジェクトの85%は失敗する、というものだ。MITは、生成AIのパイロット案件の95%が損益計算書(P&L)に測定可能な影響をまったくもたらしていないことを明らかにした。「期待を下回る」のではない。完全な失敗である。
私は毎週、「AIエージェントを構築している」と語る創業者と話している。掘り下げてみると、実際に持っているのはウィジェットである。3つの質問に答えるチャットボット。見栄えのよいインターフェースで包まれたプロンプトで、月額20ドル(約1万未満円)のツールがすでにしていることとほぼ同じことをするものだ。
ウィジェット自体に問題があるわけではない。だが、ウィジェットをエージェントと呼ぶのは、サーモスタットを空調システムと呼ぶようなものだ。サーモスタットは温度を読み取る。空調システムは建物全体の気流、湿度、断熱、エネルギー消費を管理する。多くの創業者はサーモスタットを買い、自分の建物がなぜまだ快適でないのかと首をかしげている。
本当の問いは「AIエージェントをどう構築するか」ではない。「このエージェントは、どのオペレーティングシステムの中で動くことを想定しているのか」なのである。
なぜ誰もが行き詰まるのか
創業者が課題を見つける。デモが見事なAIツールを見つける。週末を使って接続する。動く。全員が2週間ほど盛り上がる。
その後、壊れる。静かに。出力がぶれる。それが成果を生んでいるのか、単に活動を生んでいるだけなのか、誰も確認していない。創業者は次の目新しいツールへ移る。これを7回繰り返すと、誰も使っていない7つのAIサブスクリプションに料金を払っている状態になる。
これはテクノロジーの問題ではない。Harvard Business Reviewは、AI導入の失敗の多くは技術的な障壁ではなく、組織的な障壁によって引き起こされると明らかにした。ツールは問題なく機能していた。だが、事業側にそれを組み込むシステムがなかったのである。
ラッパーとオペレーティングシステム
売り込まれているツールの多くはラッパーである。Gartnerによれば、自らを「エージェント型AI」とうたう数千社のうち、真にエージェント型である企業は約130社にすぎない。多くは新しい言葉で装飾しなおしたチャットボットである。
夫と私が睡眠テクノロジー企業を立ち上げたとき、単にマットレスパッドの特許を取得したわけではない。水を使って深部体温を調節する方法の特許を取得したのだ。表層的なものと、その下にあるシステムとの違いがすべてである。AIにおいて、表層的なものはツールだ。その下にあるシステムとは、事業が実際にどのように動いているかである。すなわち、認知を生み出し、収益を最適化し、オペレーションを管理し、顧客を維持する方法だ。
これらのシステムについて明確さがなければ、どんなAIツールも救いにはならない。混乱を自動化するだけである。
本当のコスト
BCGが今年発表した調査によれば、組織の60%はAIを大規模に活用して実質的な価値を得られていない。既存のワークフローに単にAIを重ねた企業の生産性改善は10〜20%だった。一方、先にオペレーティングシステムを再構築した企業は、生産性向上が3倍になり、コスト削減は60%以上に達した。
この差は、500万ドル(約7億7200万円)企業が500万ドル(約7億7200万円)のままにとどまるか、5000万ドル(約77億2000万円)へスケールするかの違いである。本当の加速の瞬間は、新しいツールからは決して生まれない。あらゆるツールをより強力に機能させるシステムを導入することから生まれる。
資金を燃やさずにAIを使う方法
まずオペレーティングシステムを可視化する。新しいAIサブスクリプションを1つ追加する前に、今日の事業が実際にどう動いているかを文書化する。10分以内にホワイトボードに描けないなら、システムはない。あるのは習慣の寄せ集めである。
AIが単なる活動ではなく、レバレッジを生む場所を特定する。自動化はタスクを置き換える。拡張は、人間がそのタスクを遂行する能力を飛躍的に高める。売上2500万ドル(約38億6000万円)未満の多くの企業にとって、本当の価値は拡張にある。
打ち切り基準を設定する。すべてのAIツールには、60日以内に測定可能な成果が必要だ。影響を与えた売上、削減した時間、変化したコンバージョン率。設定した数値に届かなければ、解約する。
最初のエージェントは、オペレーティングシステムの外ではなく、その中に構築する。すでに文書化され、人間によって機能している1つのプロセスから始める。こう問うのだ。反復的な80%をAIが担い、判断を多く要する20%をチームが担ったらどうなるか。これこそが本物のエージェントである。システムの中で動き、ガードレールを持ち、土台の上に構築されているため、85%の失敗率を実際に乗り越えられる。
不都合な真実
AI業界は、テクノロジーこそが答えだとあなたに信じてほしい。だが、そうではない。AIは促進剤である。事業に明確なオペレーティングシステムがあれば、AIはその火に燃料を注ぐ。なければ、AIはごみ箱の火に燃料を注ぐ。そして、その特権のためにあなたは高額を支払うことになる。
だから次のAIプラットフォームに申し込む前に、私は2つの問いに答えることを求めたい。あなたの事業にはオペレーティングシステムがあるのか。成長を動かす中核システムを明確に説明できるのか。
答えがノーなら、最も緊急性の高い優先課題はすでに見つかっている。そしてそれは、人工知能とは何の関係もない。



