「前例のない政治的な衝撃」、フランスのニュース専門局「フランス・アンフォ」はこう伝えた。
宗教改革などで知られるマルティン・ルターの生誕地であるドイツ東部ザクセン・アンハルト州で9月6日に投開票された州議会選挙では、「極右」と称される右派政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が大躍進。得票率は約44パーセントに達し、フリードリヒ・メルツ首相が党首を務める中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)の同17パーセントを大きく引き離す結果となった。
ドイツでは、第二次大戦後、極右主導の州政権が誕生した例はなく、選挙前からAfDが議席の単独過半数を確保できるかが注目を集めていた。
定数83議席の議会でAfDが獲得した議席数は39にとどまり、過半数には3議席届かなかった。それでも、前回2021年の選挙から獲得議席数を一気に16議席伸ばした。一方、CDUの獲得議席数は15で、25議席の減と惨敗を喫した。
州首相候補はドイツでもっとも危険な男
AfD大勝の一因として挙げられるのが、同党の選挙戦略だ。移民の排斥など極右の政策を掲げて選挙イベントや住民との懇談会を頻繁に開催。難民や性的マイノリティを標的にし、「旧東ドイツ地域の衰退に終止符を打つ」とぶち上げた公約が一部の有権者の心に響いた。
ベルリンの壁崩壊から37年が経過したいまも、旧東西両ドイツの経済格差は大きく、旧東ドイツ側には旧西ドイツ地域に反感を抱く住民が少なくない。選挙を通じ、経済情勢の厳しい旧東ドイツ地域で暮らす有権者の反移民・難民感情の根強さが改めて浮き彫りになった。
AfDが州首相候補として擁立した35歳の政治家、ウルリッヒ・ジークムント氏の人気も追い風になったとみられている。今回の結果を受けて、「われわれは歴史を刻んだ」と同氏は述べた。
ドイツの雑誌「シュピーゲル」は8月、「ドイツでもっとも危険な男」との見出しを掲げて、表紙にウルリッヒ・ジークムント氏の写真を掲載した。
だが、ジークムント氏は、選挙戦ではかつて旧東ドイツの人々の足となっていた「シムソン」のスクーターを愛用。精力的に行った街頭演説の場で気さくな笑顔を振りまきながら有権者に接し、ときには会話に何時間も費やした。
そうした親しみやすさがSNSを通じて拡散され、高い支持につながった格好だ。フランスの新聞「ル・フィガロ」は同氏を「SNSのスター」と評した。



