戦略コンサルティング会社のCEOであり、Entrepreneur's Organization(EO)とVistageのメンバーでもある筆者は、創業者たちが自社の評価額を初めて聞く場面に数多く立ち会ってきた。その多くはプレミアム評価を期待している。だが実際には、大幅なディスカウントを告げられることが少なくない。
彼らがその差に驚くのは、創業者らしい見方で事業価値を測ってきたからだ。売上高、成長率、そして会社がどこへ向かっているのかというストーリーである。だが買い手はストーリーに値段を付けない。創業者が一歩退いた後に成果を出し続けなければならない「仕組み」に値段を付ける。そして多くの創業者主導企業では、その仕組みの価値は創業者が考えるほど高くない。
買い手が対価を払うのは可能性ではなく、予測可能性である
投資家や買収者が買っているのは、その事業が将来なり得る姿ではない。事業が業績を維持し続けるという確信を買っている。可能性は創業者の通貨であり、予測可能性は買い手の通貨である。
だからこそ、売上高が同じ2社でも、取引倍率は大きく異なり得る。反復可能な収益、文書化されたプロセス、日々の救済なしに運営できるリーダーシップチームの上に築かれた事業は、譲渡可能である。一方、創業者の記憶、人脈、週70時間労働でつなぎ留められている事業はそうではない。買い手はその違いをすぐに見抜き、表立って口にすることなく価格に織り込む。
筆者の経験では、ディスカウントはデューデリジェンスの最初の質問が始まる前から始まっている。洗練された買い手は、意思決定がどのようになされているか、経営会議に一定のリズムがあるのか、それとも見せかけにすぎないのか、数字がそのまま理解できる形で出てくるのか、それとも何時間もの説明を要するのかを見ている。そうしたシグナルが弱ければ、会話は友好的なままでも、価格は静かに下がっていく。
ディスカウントはどこから生じるのか
創業者依存によるディスカウントは、次のような小さな欠陥の積み重ねであることが多い。
• 重要な意思決定が、いまだにすべて創業者を経由している。
• 重要なプロセスが文書ではなく、人の頭の中に存在している。
• 売上が少数の顧客や月次契約に集中している。
• 損益計算書上は黒字だが、キャッシュの状況には説明が必要である。
• 経営幹部層の厚みが1層しかなく、全員がそれを認識している。
これらはいずれも損益計算書には表れないが、すべてオファー価格に影響する。
かつて筆者は、売却準備を進めていたある企業に関わったことがある。その会社は、取引前にスリム化する目的で、最も上級のオペレーション責任者を削減することを検討していた。もし実行していれば、高くつく過ちになっていただろう。そのリーダーこそが、オーナー不在でも事業が回ることを証明できる理由だったからだ。最終的に同社はそのリーダーを残し、18カ月以内にプレミアム評価で売却された。買い手はクロージング後もその人物を雇用し続けた。買い手は、売り手が見落としかけていたことを理解していたのである。取引において、オペレーション上のリーダーシップは間接費ではない。買われる対象の一部なのだ。
高くつくのはタイミングである
企業価値は何年もかけて形成されるが、多くの創業者がそれを考え始めるのは、出口を迎える数カ月前にすぎない。その時点では、ディスカウントはすでに織り込み済みである。5年分のプロセスを1四半期で文書化することはできない。デューデリジェンスの最中に経営幹部層を構築することもできない。そして市場に出る直前の夏に、顧客集中を解消することもできない。
価値を最大限に取り込む創業者は、実際に売却するつもりがあるかどうかにかかわらず、事業を常に売却可能なものとして扱っている。それは出口が目的だからではない。買い手が対価を払う資質は、会社を持続的にする資質でもあるからだ。明確な収益、利益率の規律、更新される売上、動くキャッシュ、成果に責任を持つリーダーである。
誰かに問われる前に修正すべきこと
自社の本当の価値を知りたいなら、売上高の行を見るのをやめ、より厳しい問いを投げかけるべきだ。
• この事業は、あなた抜きで90日間回るだろうか。
• あなたの数字は、説明役なしで懐疑的な第三者のレビューに耐えられるだろうか。
• 最大顧客2社が離れた場合、何が残るだろうか。
• どのリーダーが「成果」に責任を持ち、どのリーダーが「作業」に責任を持っているのか。
そのうえで、その順序でギャップに取り組むことだ。意思決定を下位に移し、それを定着させる。誰かの頭の中にしかないワークフローを文書化する。収益基盤を多様化する。数字が自ら説明できるようになるまで、レポーティングを引き締める。必要になる前に、リーダーシップの第2層を構築する。
こうした取り組みはどれも華やかではない。だが、そこに価値がある。筆者は、オペレーション上の規律が売却価格に数百万ドルを上乗せする場面を見てきた。理由は1つである。それが疑念を取り除き、信頼を築くからだ。



