人工知能(AI)はビジネスにおいて最も議論されるテクノロジーの1つとなったが、その議論の多くは、AIが何をもたらし得るかではなく、何を奪うかに集中しすぎている。蒸気機関や鉄道からインターネットに至るまで、主要な技術革新はすべて、人々の働き方や企業の事業運営を変え、同時に日常生活への影響について問いを投げかけてきた。
産業が進化するにつれ、一部の業務やビジネスモデルが自然に姿を消していく一方で、そうしたイノベーションは、予測できた人がほとんどいなかった新たな産業、機会、雇用を再構築し、あるいはまったく新しく生み出してきた。AIは過去の技術進歩よりも速く進化し、より多くの業界に広がっているかもしれないが、根本的な課題は変わらない。ビジネスリーダーには、新たなツールを受け入れることで適応し進化し、自社を競争相手に先んじた位置に置くための独自の機会がある。
中小企業はAIをどう活用できるか
より広範な議論の多くは、大企業向けのエンタープライズ級AI提携に集中しており、多くの商業分野の企業や複雑な業務を抱える企業がこの新たなツールの導入に傾いている。一方で、AIによって意義ある効率化を実現する余地が最も大きいのは、米国の中小企業である。
AIは小規模企業や起業家に、かつてはより大きなチーム、潤沢な予算、専門ベンダーを必要とした能力へのアクセスをもたらし得る。これらのツールは、経営者がアイデアを検証し、製品を立ち上げ、より効率的に規模を拡大するのを支援できる。
重要なのは、AIが注目を集めているからという理由だけで導入するのではなく、明確なビジネス課題から始めることだ。従業員の判断を置き換えるのではなく、AIが従業員を支援できる、時間のかかる反復的な業務を特定すべきである。
何から始めればよいか分からず、途方に暮れることもあるだろう。以下に役立ついくつかの方法を挙げる。
- すでに料金を支払っているものから始める。 新たに何かを購入する前に、銀行を含む既存の取引先に、どのようなAI機能をすでに組み込んでいるかを尋ねるべきだ。聞くべきことは2つある。どの具体的な業務を自動化できるのか、そして自社の規模では費用がいくらかかるのかである。
- まず反復的な作業を自動化する。 時間は奪うが本格的な判断を必要としない業務を対象にする。顧客からの質問対応、スケジュール調整、管理業務などだ。AIはこうした機能を支援できるまでに発展しており、日々の業務に効率化をもたらす。
- 最終回答ではなく、初稿として使う。 AIはコンテンツ制作において有用なツールであり、筆者はその活用を勧めたい。自分の考えを取り入れてブログ投稿の構成案にまとめ、それをさまざまなチャネルや場に合わせて再活用するのである。
- 資金とコンプライアンスには人間を関与させ続ける。 起案や要約は任せてもよい。だが、電信送金、採用判断、実質的な財務上または法的な重みを持つことは、引き続き自分の管理下に置くべきである。
- 事業全体ではなく、1つの問題を選ぶ。 すべてを一度に刷新してはならない。多くの時間を費やしているボトルネックや業務を1つ選び、それだけを解決する。時間の節約効果が見えれば、次にAIを使うべき場所が見えてくる。
目的はテクノロジーによる全面改革ではない。週に数時間を取り戻し、その時間を自分にしかできない事業の領域に使うことなのである。
規制業種でも恩恵を受けられる
ConnectOne Bankでは、nCinoのAI機能を導入するにあたり、同様のアプローチを採ってきた。広範で抽象的なユースケースから始めるのではなく、テクノロジーが即座に違いを生み出せるワークフロー上の具体的な課題に目を向けた。その結果、従業員が社内文書を検索する時間は、約20分から最短30秒へと98%削減された。また、個人および法人との関係情報を更新する特定の管理業務に必要な時間も60%削減された。これらは、従業員が顧客、関係構築、より価値の高い業務に集中する時間を増やす実践的な改善である。
中小企業も、日々すでに使用しているツールから始めることで、同じことができる。現在、多くのプラットフォームは、コミュニケーション文書の作成、情報分析、データ整理、定型業務の効率化を支援するAIツールを提供している。反復的または時間のかかるプロセスを1つ特定し、AIで改善できるかを試し、その結果を測定することで、企業は小さく始め、価値が明確な領域へと拡大し、人間による監督がなお必要な場面を従業員が理解できるようにすることができる。
なお残る未解決の問い
AIへの楽観論は、雇用の安定、自動化への過度な依存、人間同士の交流の喪失に関する現実の懸念を小さく見せるものであってはならない。地域社会もまた、データセンターの急速な開発について、エネルギー需要、電力網への圧力、周辺の不動産価値への潜在的影響など、正当な問いを提起している。これらは、私たちが避けて通るべきではない議論である。
政策立案者やビジネスリーダーは、AIの革新と倫理的なセーフガード、責任ある監視とのバランスを取りつつ、妥当な懸念と、不慣れなテクノロジーにつきものの漠然とした恐怖とを区別する必要がある。責任ある導入には、AIが広範な影響を見失うことなく持続的な価値を確実に創出するために、人材育成、インフラ計画、明確な安全策、説明責任が必要となる。
リスクは停滞にある
変化は決して容易ではない。だが、AIの課題だけに目を向けていれば、成長と進歩の機会を逃すことになりかねない。テクノロジーが進化し続けるなか、企業には新たな運営方法を探り、自らの能力を強化し、新たな価値の源泉を引き出す機会がある。
AIは混乱を生み出すだろう。しかし同時に、意義ある進歩への扉を開くこともできる。慎重に実験し、人材に投資し、応用に焦点を当てるリーダーこそが、長期的価値を生み出し、次に来るものを形づくる最大の機会を手にするのである。



