前回の記事では、本連載の共著者、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の平岡美由紀氏が工芸の真価について、臨済宗妙心寺派・退蔵院副住職の松山大耕氏へのインタビューを通じて語りました。
今回は私、岩渕が経営するENND Partners(エンド・パートナーズ)の共同創業者でもあり、デザイン思考とイノベーションの世界的リーダーのティム・ブラウン氏との対話を通じてアートと経営の関係性を読み解いていきます。デザイン思考を世の中に提唱し、デザイン分野への長年の貢献と社会への影響力が評価され大英帝国勲章のCBEを受賞されたティム氏がなぜ今アートが重要だと感じるのか、日本の経営層にとってその意味とは何なのか。インタビューを通じて読み解いていきます。
世界的デザインのリーダーがアートに関心を持つ理由
岩渕:本日は、個人としてもデザインと経営の世界で世界のリーダーを支えてこられたティムさんにアートと経営のことについて伺えるのを本当に楽しみにしています。改めて自己紹介をお願いできますでしょうか。
ティム:私の名前は ティム・ブラウンです。デザインを専門としています。40年間カリフォルニアを拠点とするデザインファームのIDEO(アイデオ)でキャリアを築き、そのうち20年はIDEOの経営を担ってきました。この3年間はボストン コンサルティング グループ(BCG)出身の岩渕さんとともに 新しい事業のENND Partners の共同創業者として、人間中心デザイン(製品、システム、サービスを開発する際、作り手の都合や技術力ではなく、ユーザーの体験を最優先に考えるアプローチのこと)とビジネスの関係を探求し、日本企業の価値向上の支援をしています。
岩渕:長いキャリアを通じて、あなたはデザインという言葉を商品やサービスの設計という意味から、経営の根幹を変えるような取り組みに昇華させてきた数少ない国際的なリーダーだと感じています。元フォード・モーターCEOのジェームズ・ハケット氏や元P&G会長のA.G. ラフリー氏など世界的経営者との改革の取り組み、そして、ソニーやNEC、エプソンなどの日本企業の支援もされてきました。なぜ、今デザインではなくアートが経営にとって大事だと感じているのですか?
ティム:デザインやデザイン思考は問題解決のためのパワフルな手段ですが、それですべてを解決できるわけではありません。私はキャリアを通じてその概念を経営の広い領域に適用することを心がけてきました。しかしAI時代の今は、かつてないほど人間の想像力を解き放ち、新しい価値を創出することの重要性が増しています。そこに私はアートの可能性を感じています。



