たいていの人は、デリゲーション(権限移譲)とは仕事を別の人に任せることだと考えている。しかし、私はその定義はもう古いと信じている。
私が知る優秀なCEOたちは、「スタック(技術や人材の組み合わせ)」に対して権限移譲を行っている。一部の仕事はAIに、一部は人に任せるのだ。自分のスケジュールを取り戻せるリーダーと、仕事に埋もれたままのリーダーを分かつスキルとは、どの仕事がどこに属するのかを見極めることである。
私は完全リモートのエグゼクティブ・アシスタント会社を経営しており、創業者たちが自分の時間を取り戻そうと格闘する姿を日々見ている。そのパターンは、ほぼ常に同じだ。何も手放そうとしないか、あるいはすべてをツールに丸投げして魔法のような結果を期待するかのどちらかである。どちらもうまくいかない。これまでの経験から、本当に効果があると分かった方法をここで紹介しよう。
ツールではなく、委任の棚卸しから始める
リーダーがAIアプリを一つでも開く前に、まずは1週間を奪っているすべてのタスクを書き出すことをお勧めする。
これについては、正直にならなければならない。そうした仕事のほとんどは、次の3つのバケツ(カテゴリー)に分類できる。
• 第1のバケツは、再現可能でルールに基づいたタスクだ。スケジュールの調整、メールの下書き、会議の議事録、あるいはこれまでに40回も作成したようなレポートのフォーマット整理などがこれに該当する。ここでこそ、AIはその真価を発揮する。
• 第2のバケツは、判断、人間関係、あるいは裁量が必要なタスクだ。クライアントとの困難な交渉、採用の決定、あるいは何かしっくりこないときのリーダーシップチームの空気を読むことなどがこれに当たる。これらは人間が担当し続ける必要がある。
• 第3のバケツは、最も興味深いものだ。AIが草案を作成し、人間がそれを推敲する提案書や、AIが整理した大量のリサーチデータを人間が解釈するなど、両者を使用するタスクである。真のレバレッジの大部分は、まさにここ――両者のバトンタッチの瞬間に存在する。
自分のカレンダーの中でこれらのカテゴリーを見分けられるようになるまでは、上手に権限移譲することはできない。
AIに実際に任せるべきものを決める
AIには、最も重要な仕事ではなく、退屈で時間のかかる仕事を任せることを提案する。
AIはこれまで雇った中で最も仕事の早い新人社員だと思うかもしれないが、同時に最も多くの監視を必要とする部下でもある。数秒で最初の下書きを書き上げてくれる一方で、まったくのデタラメをさも自信ありげに主張することもある。したがって、出力されたものはすべて出発点として扱い、決して完成品だと思ってはならない。
私は、白紙のページを前にして大まかな概要をまとめようとしているときや、メールの件名の候補が出ずに困っているときなど、大雑把な「最初の8割」の作成にAIを活用している。そして、残りの仕上げは人間に任せる。最後の2割にこそ「判断」が存在し、その判断こそが、人々が実際にあなたにお金を払う価値となる部分なのだ。
新しいスタッフに説明するときと同じように、AIツールにも文脈(コンテキスト)を与えよう。あいまいなプロンプト(指示)からは、あいまいな成果物しか生まれない。ターゲット層は誰なのか、どのようなトーンを求めているのか、そして優れた回答とはどのようなものなのかを伝えるのだ。返ってくる成果物の質は、あなたが与えた指示の質を映し出す鏡である。
人間のレイヤーがなお重要であることを理解する
私が最もよく目にする間違いはこれだ。創業者がアシスタントをチャットボットに置き換え、その6週間後に仕事が完全に破綻して首をかしげるというケースだ。
AIはフォローアップを行わない。優良なクライアントが静かになったことにも気づかない。関係が冷え込みつつあることを示すメールの微妙な語調の変化を察知することもない。3週間前の電話で交わした約束を覚えていることもなければ、あなたが忘れてしまったやり残しの仕事を追いかけることもない。こうしたことすべてを行うのは、人間である。
創業者は、意図的にこの2つを組み合わせなければならない。AIは「量」を処理する。人間は「ニュアンス」と「責任」を担う。エグゼクティブ・アシスタントは、AIツールと競合しているのではない。彼らはそのツールを走らせ、成果物をチェックし、重要なことを見落とさないように各プロセスを完結させる役割を果たしている。
委任を定着させる
委任は一度きりの出来事になった瞬間に失敗する。そうではなく、それを仕組みにするのだ。
自分の好む仕事の進め方を書き出してみよう。その同じコンテキストをAIツールとチームの両方に共有し、両者が同じプレイブックから動けるようにする。最初の2週間は成果物を注意深く確認し、信頼関係が築かれるにつれて徐々に手を離していく。これは、新しい人材を迎えるときに取るプロセスとまったく同じだ。ツールを相手にしても、同じように機能する。
そうして、新しく生み出された時間を死守するのだ。週に5時間を生み出しても、それをまた別の雑務で埋めてしまっては意味がない。その時間は、あなたにしかできない仕事に振り向けよう。
まとめ
CEOのように権限移譲を行うとは、AIか人かという二者択一ではない。それぞれのタスクを適切なリソースに割り当て、重要な事柄について常に把握し続けることなのだ。
1週間を棚卸しする。退屈な仕事はAIに任せ、判断が必要な仕事は人間に残す。習慣ではなく仕組みを構築するのだ。そうすれば、自分の時間を取り戻すことができる。そして今度こそ、その時間を本当に守り続けられるだろう。



