ある世帯が金を売却するのではなく担保に入れるのは、金は保有しておく価値があると考えていることを示している。これは、伝統的な銀行サービスを利用できない人がまだ多い経済で、金がまさに「お金」として機能している姿でもある。
インドの家計は金の「愛着トレード」から「恐怖トレード」へシフトか
誤解しないでほしいのは、インドの金需要ではモンスーンもなお重要な要素のひとつなのは確かだという点だ。凶作になれば結婚式の挙行数も減るし、それにともなう金宝飾品の購入も落ち込む。
とはいえ、インドの金現物価格が国際価格を下回っている主な原因は輸入関税とルピー安だ。その裏で、世界で最も多く金を保有する国民は購入対象を地金やETFに変えたり、手元の金を担保に借り入れをしたりしている。
これらは、金への信頼を失った人々の行動のようには思えない。
筆者は長年、金相場を動かす2つの原動力について説明してきた。ひとつは「恐怖トレード」と呼ぶもので、財政赤字や通貨の価値低下(ディベースメント)、政府のまずい政策などへの懸念で動く。もうひとつは「愛着トレード」と名づけているもので、主にアジアで文化や結婚式、贈り物などに関連して行われる取引だ。
インドでいま起こっているのは、同じ世帯による金取引が愛着トレードから恐怖トレードに変わりつつあることだとも言える。それを促しているのは、金に対する関税の引き上げという政策と、通貨の価値下落である。


