身体的な表現を選ぶのは、「人の体は社会的なルールに規定されていて自由ではない」という眼差しが原点にある。400年以上続く阿波踊りも、踊りの型は同じでも、踊り子や観客、天気など外的要因によって毎年違ってくる。型やコードがあることで、異なるものが生成される。
「大きな事象から個人的なことをほぐすようにたどっていったら、現代美術の表現になり、社会への問いになっている」と大和。ローカルな身体表現から、政治・歴史・ジェンダーといった普遍的な問題を問い直す作品は国内外で評価され、11月にはシンガポール美術館(SAM)の展覧会「Lost & Found: How We Remember」にも参加予定だ。
その探究心は、大学1年から続ける手書きの月刊『ぽよぽよ新聞』にも一貫する。きっかけは高校時代、絵画教室に通うために始めた新聞配達のアルバイトだった。2016年、熊本地震の翌日の朝刊は真っ黒く、その分インクがかさんで重かった。その重たいものを各家庭に配達する気が進まず、「自分でつくるなら、ふわふわして、それでいて情報が多く真っ黒いものにしたい」と始めたのだった。
自ら取材を行い、A3サイズの紙面いっぱいに書いて発信している。これまでに、車椅子道路調査、沖縄に住む視覚障害者の方、戦後に沖縄から東京へ移住して差別をうけた人…さまざまな体験をインタビュー、調査してきた。
「一貫していることは、あくまでも自分のためにつくること。月1回の配信で、購読者も一定いますが、妥協も無理もせず、ただ、誠実につくっています。完成するたびに、誠実であろう、と思い知らされる。そんな軸になっています」
大和自身は沖縄の出身者ではない。活動には迷いがつきまとい、時には鋭い意見も寄せられる。「いま作品を提示するタイミングなのか、作り続けていいのか、と悩むことも常にある」という。それでも、次の展覧会を目指して走っていく。
「長くお世話になっているキュレーターの方からもらった、『他の誰かではなく、自分がどう思うのか。一人称を手放さないように』という言葉を大切にしています。この社会に慢性的に絶望していますが、それでも生きていくなかで、自分ができることに没頭することが、関わる人たちへの誠意なのだと思っています」
やまと・かえで◎1998年、徳島県生まれ。金沢美術工芸大学美術科彫刻専攻卒業。沖縄県在住。主な展示に、大和楓 個展「シッティング・イン・ザ・タイム」(立命館大学国際平和ミュージアム、2025年)、「開館30周年記念展 日常のコレオ」(東京都現代美術館、25年)など。
シャツ35200円、パンツ35200円/ともにヨンロクサン(UTS PR Tel:03-6427-1030)、イヤーカフ2530円/ゴールディ Tel:0120-390-705


