Forbes JAPAN 2026年10月号は、日本発「世界を変える30歳未満」30人特集。
9年目となる今年の受賞者は、AI革命の真っただなかで先頭に立ち、想像力、知性、そして並外れたグリット(やり抜く力)をもって、「自分が思うより良い未来」を目指す30人だ。彼ら彼女らがつくる「 新しい社会、新しい経済」から見えてくるものこそが、日本の未来の希望になる。
「他の誰かではなく、自分はどう思うのか」。歴史の出来事と世界の課題に、誠実に。現代美術家、大和楓は問い続ける。
出身は徳島県。小学4年生から高校まで阿波踊りの踊り子だった。所属した連は半世紀を超える歴史があり、たおやかな女踊りと勇ましい男踊りのそれぞれに、美しいとされる型が存在する。その型が連綿と受け継がれ、踊る人々によって「場」が立ち上がるのを体感してきた大和が、偶然出会い、驚いたのが彫刻だった。
高校2年の夏、友達と遊びに出かけた高松市で、現代美術家、ヤノベケンジの個展『ヤノベケンジ シネマタイズ』を目にする。「人が動くことによって場が作られるのではなく、空間に作品が置かれることによって場が成立する。主体と客体が逆転している光景がすごく新鮮だった」。彫刻という芸術に興味を持ち、金沢の美大の彫刻科へ進んだ。
卒業後は一転、沖縄へ。「知りたい」という自分のなかの欲求に従った。現地でしか探れない情報を求めていた。一つは、阿波踊りと沖縄の踊りカチャーシーの関連性。もう一つは、生前疎遠だった祖父の足跡。祖父は軍属として沖縄戦に召集後、米軍の捕虜となり復員していた。
大学在学中も沖縄に通っては調べていたものの、通うだけでは見えてこない。現地に住み、図書館の資料や新聞のアーカイブにあたる。「祖父が自ら話さなかったからこそ、社会的な情報から削いでいくことで、その輪郭が見えてくる」と大和。それは、丸太や石を彫って形造る彫刻のプロセスに似ているのかもしれない。
その調査の過程で目にしたある捕虜の写真が、映像作品「シッティング・イン・ザ・タイム」につながった。
「米軍が捕虜の記録として撮影した写真。拒むことはできないなか、その捕虜は、縮こまって自らの尊厳を守ろうと顔を隠すポーズをしていました。重要な写真ですが、そのまま見せて説明すれば、彼の尊厳を脅かしてしまうことになる」
そう考えた大和は、沖縄に点在する約30カ所の捕虜収容所跡地付近にトランポリンを置き、捕虜と同じ姿勢を空中で反復。身体を媒介に、歴史の記憶や、そこに刻まれた暴力と不安を現在へと引き寄せた。作品は、戦後80年をむかえた2025年、公募で選ばれて展示の機会を得る。会場は立命館大学に併設されたミュージアム。それは、祖父の母校でもあった。




