キャリア

2026.09.09 09:29

あなたのキャリアは停滞していない。誤った「欲求の階層」から判断しているだけだ

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キャリアの成功とは、次のレベルに進み、より大きな裁量を持ち、より多くの収入を得ることだと教えられてきたのではないだろうか。さまざまな業界、職種、キャリアステージの幹部たちを20年以上にわたりコーチングしてきたなかで、筆者は共通のパターンを目にしてきた。それは、目指していたレベルに到達し、苦労して手に入れた安定を得たにもかかわらず、虚しさを感じて目を覚ますプロフェッショナルたちの姿だ。野心があるからこそ動き続けられるのだが、その野心を駆り立てているものが何なのか、立ち止まって検証することはめったにない。

前回の記事では、キャリアの不整合が生じ始める5つの階層、「生存(Survival)」「安全(Security)」「つながり(Connection)」「重要性(Significance)」「目的(Purpose)」を紹介した。どの階層が薄れているかを見極めることが第一歩だ。次のステップは、自身のキャリアにおける意思決定を突き動かしている「欲求」を理解することである。

キャリア決断の背景にあるパターン

380人のプロフェッショナルを対象としたキャリア再生調査によると、65%が抱負よりも「生存」や「安全」を第一に考えてキャリアの決断を下していると回答した。これらの階層は持続可能なキャリアの基盤ではあるものの、状況的にそれらを求める必要がなくなった後もその動機から決断を下し続けると、主体的な選択ではなく受動的な対応になってしまう。その結果、転職を繰り返しても、結局は不満がつきまとうことになる。キャリアの問題に見えるものの多くは、実際には意思決定の問題なのだ。

あらゆるキャリアの決断には、根底にある欲求が反映されている。同じ職務、同じ給与、同じ機会の昇進をオファーされた5人のプロフェッショナルを思い浮かべてほしい。「生存」の階層で動いている人は、機会そのものを評価するのではなく、断った場合の不利益を計算している。「安全」を重視する人は、新しい職務がこれまでに築き上げたものを守れるかどうかを知りたがる。「つながり」においては、カルチャーやコミュニティに焦点を当てる。誰と働くのか、価値観は一致しているか、ここに自分の居場所はあるか、といったことだ。「重要性」の階層では、その仕事自体に意味があるかどうかが問いとなる。そして「目的」の階層にいる人は、その仕事が自分にとって最も大切な価値観と一致しなければ、高額な給与や魅力的な肩書を辞退することもある。

機会は同一でも、意思決定は同一ではない。階層は答えに影響するだけではない。そもそも問われる問いを決めているのだ。

5つの階層と、それぞれが導く決断

1. 生存:目先の不利益(リスク)への対処

「生存」の階層では、キャリアの決断は成長の追求というよりも、脅威の回避として捉えられることが多い。一部のプロフェッショナルにとって、そのリスクは明白だ。就労ビザで働く従業員が職を失えば、キャリアの中断だけでなく、法的問題や移民上の問題に直面する可能性がある。資金的な余裕がない唯一の稼ぎ手は、柔軟な対応ができる人とは異なる基準でリスクを評価する。人員削減や業界の先行き不透明感に直面しているプロフェッショナルにとって、自身の成長レベルをはるかに超えた仕事であっても、単に仕事があるだけで十分だと感じてしまうことがある。

ここで意思決定を左右する問いはシンプルだ。「今、このリスクを冒す余裕があるか」というものだ。たとえ答えが「イエス」であっても、失敗への恐れが勝ってしまうことが多い。その結果、「責任感」という名目で取り繕われた停滞を招くことになる。

2. 安全:築き上げたものの保護

ここでの原動力は、住宅ローン、教育費、ライフスタイル、名声、成功に伴う社会的地位など、これまでに築き上げてきたものを失うことへの恐怖だ。それらの成果は守られなければならず、安全第一こそが唯一受け入れられる解決策となる。波風を立てず、経営陣の目に留まらないようにし、安定を維持するために必要なことだけを行う。問題は、目立たないことが裏目に出る場合もあるということだ。自分を守るための行動は、能力を伸ばす仕事(ストレッチ・アサインメント)や戦略的な議論、将来の機会に関わるチャンスをも制限してしまう。リーダーは、存在を認識していない人物を推薦することはめったにない。維持することだけに集中することで、多くのプロフェッショナルは自ら気づかないうちに成長の機会を逃してしまっている。

ほとんどの決断の背景にある問いは、「苦労して手に入れたものをどうやって保護し、維持するか」となる。維持することが可能性に取って代わってしまうため、多くのキャリアがここでプラトー(停滞期)に達する。

3. つながり:帰属と影響力の追求

仕事における人間関係とは、単なる友人関係にとどまらない。自分の意見が聞き入れられ、貢献が重視され、自分の存在が違いを生み出していると実感できることだ。その感覚が失われると、肩書や給与、職務内容が以前と同じであっても、仕事が単なる事務的な作業に感じられるようになる。

その変化は個人的なものであり、原因によって感じ方も異なる。たとえば、組織改編によって新しいリーダーが着任し、それまで影響力や発言権をもたらしていた関係性が断ち切られることがある。人員削減は、仕事に意味を与えてくれていた同僚を失うことを意味する。それでもなお、その喪失感に対処しながら成果を出すことを求められる。変化がもっと微妙な場合もある。かつては参画していた議論から外されたり、重要な決定が自分の知らないところで下されていることに気づいたりする。

多くの決断の根底にある問いは、「ここは今でも、自分が認められ、意見を聞かれ、評価される場所だろうか」というものになる。答えが「ノー」になったとき、退職届よりずっと前に、感情的な離脱は始まっている。

4. 重要性:有意義な貢献の追求

この階層では、意味のある仕事をし、それが認められることを望む。課題となるのは、外部からの評価が結果(遅行指標)ではなく目的(先行指標)になってしまい、仕事における真の意味を求める欲求がかき消されてしまうことだ。昇進を続け、高い業績評価を得ていても、仕事から活力をもらえなくなる。外部の評価シートはすべてが順調であることを示していても、どこか違和感を覚える。

キャリアの後半ステージにいるプロフェッショナルには、別の課題も生じやすい。かつて重宝されたスキルが、もはや価値を失っているかもしれないのだ。新しい技術への適応、期待の変化、進化する働き方への対応は困難を極めることがあり、それに対する投資対効果が限定的に感じられることもある。結果として、仕事自体に意味を感じなくなっていても、過去の強みが評価される職にとどまり続けることになる。

多くのプロフェッショナルが避ける問いは、「自分がしている仕事は、今でも自分にとって意味があるのだろうか」というものだ。答えが否定的であっても、外部の評価が「イエス」を示している場合、大半の人はそのまま走り続けてしまう。これが、「重要性」の階層から抜け出すのを難しくしている要因だ。成功は、不整合を覆い隠してしまう。

5. 目的:仕事と価値観の一致

「目的」の階層から行動するとき、あなたの選択は報酬や地位、安定よりも深い何かによって導かれる。自分が何者であり、何を信じ、何がそれらを反映する仕事なのかを理解している。その明確さによって、機会に対する見方が変わる。たとえば、より高い給与や魅力的な肩書であっても、最も大切なことから遠ざかるのであれば、それだけの価値はないと判断する。昇進を辞退したり、明確な計画もないまま安定した仕事を辞めたり、周囲からは正気とは思えないような選択をすることもあるが、本人にとっては完全に理にかなっている。違いは決断そのものではなく、決断を下すために用いる基準にある。

問いは「この職務は、自分が最も重視する価値観と一致しているか」となる。

一貫して「目的」に基づいて行動できるプロフェッショナルが少ないのは、彼らに野心が欠けているからではない。生存や安全に関する未解決の不安があるため、目的に基づいた決断が「贅沢品」のように感じられるからだ。それでも、不整合な状態にとどまる代償が変化のリスクを上回ったとき、不確実性や経済的犠牲、キャリア上のリスクを受け入れて決断を下す人もいる。「目的」とはリスクがない状態を指すのではない。より大きな大局を描くために、取るべき正しいリスクを受け入れる意志のことだ。

本当の問題:間違った階層から意思決定をしている

多くのプロフェッショナルは、自分が複数の機会の間で選択を行っていると信じている。しかし実際には、十分に検証していない欲求の間での選択を迫られていることが多い。

成長や充足感、価値観との一致を望んでいると言いながらも、いざ決断の時が来ると、しばしば「生存」や「安全」が真っ先に選択を下してしまう。これは自己認識の欠如というよりも、検証不足の問題だ。大半の人は、根本的な問いかけをするために立ち止まったことがない。「どのような欲求が、この決断を後押ししているのだろうか」と。

前回の記事に寄せられた、ある読者のコメントがそれをよく捉えている。

「私たちはキャリアをハシゴのようなものだと教え込まれ、次の段に登れば、今の段での痛みが癒やされると聞かされてきました。しかし、多くの人がハシゴの頂上に達したとき、なぜ何も満たされないのだろうと、今も自問しています」

この指摘は問題の本質を突いている。ハシゴのどの段に登ろうとも、価値観との不整合という問題への答えは見つからない。

受動的な反応から、主体的な選択へ

どの階層が自分の決断を動かしているのかを理解することは、始まりにすぎない。本当の転換は、状況に流されるのをやめ、意図的な選択をし始めたときに起こる。

自分を支配している階層を特定する1つの方法は、過去3回の大きなキャリア決断を振り返ることだ。「リスク」「保護」「帰属」「承認」「一致(アライメント)」のうち、どの懸念が最も多く現れただろうか。その答えが通常、決断を下している階層を示している。

もし「生存」が決断を動かしているなら、心のゆとりを作る必要がある。資金的な蓄えを作ったり、目の前のプレッシャーを和らげたり、一種のキャリア保険を用意したりすることで、今は手の届かないように思える選択肢を検討できるようになる。

もしデフォルトが「安全」になっているなら、自分を目立たせることが不可欠だ。当事者意識と自信を取り戻すために、ストレッチ・アサインメントを志願したり、影響力の大きい取り組みに関わったり、上級幹部と有意義な会話を始めたりするといい。要点は、今より熱心に働くことではなく、組織の未来と自分をつなぐことだ。

「つながり」が最優先の階層である場合は、人間関係から始めよう。自分が誰に影響を与えるべきか、そして誰が自分に影響を与えるのかを見極め、それらの関係を意図的に強化していく。

「重要性」が意思決定を動かしている場合は、称賛される仕事と、自分を活気づける仕事が必ずしも同じではないことを意識してほしい。この区別を明確にすることで、実績が充足感の代用品になってしまうのを防ぐことができる。

「目的」の階層に移行するには、準備が必要だ。目的を重視した意思決定は、「生存」や「安全」への懸念に同時に対処したほうが、より持続可能なものになる。目的とはリスクを無視することではない。どのリスクが取るに値するかを理解し、取るに値しないリスクに備えることなのだ。

これが意味すること

5つの階層は、キャリアの選択を突き動かしているものを理解するための実用的なアプローチを提供する。「生存」「安全」「つながり」「重要性」「目的」は、それぞれキャリアの異なるステージで役割を果たす。重要なのは、これまで自分を支えてくれた階層が、いつの間にか自分を縛り付ける要因に変わる瞬間を知ることだ。

私たちの多くは、充足感がその先にあると信じて、次の肩書や昇進、節目を追いかけることに何年も費やす。昇進によって責任や報酬、影響力は増すかもしれないが、その仕事が依然として自分の価値観と一致しているかという本質的な問いへの答えにはならない。時が経つにつれ、成功と充足感は必ずしも同じ方向を指し示さなくなる。

どの階層が決断を動かしているかを知ったからといって、異なる結果が保証されるわけではない。しかし、何が自分の選択を形作っているのかが浮き彫りになる。その明確さは、自身のキャリアが自分自身や、自分が果たしたい貢献を反映しているかどうかを見極める助けになる。

次回の記事では、自身の選択を動かしている階層を認識した上で、自覚から行動へと移る方法について解説する。

現在、自身のキャリアの決断をどの階層が動かしているかを確認したい場合は、無料の「キャリア再生調査(Career Renewal Survey)」をこちらから受けることができる。

forbes.com 原文

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