感情労働という概念は、学術用語の枠を越えて比較的よく使われる表現になった、まれな言葉の1つである。難しい状況を丸く収めるための、特に望まない感情面での努力全般を指して使われるのを聞いたことがあるかもしれない。だが、この言葉の起源は実のところ、もう少し厳密だ。航空業界の研究のなかで社会学者アーリー・ラッセル・ホックシールドが生み出した感情労働という概念は、仕事、ジェンダー、日常的な相互作用に関する理論に根ざしている。ホックシールドはこの言葉を、成長するサービス産業において、組織が労働者の感情を管理し、商品化するあり方を特に指すものとして用いた。労働者が仕事の一環として他者や自分自身に感情を生じさせることに、価格をつけるということだ。
大手航空会社で働く客室乗務員と債権回収担当者に焦点を当てることで、ホックシールドは、このプロセスがジェンダー不平等を促進するあり方も観察できた。債権回収担当者として働く男性は、仕事の一環として恐怖や威圧感を抱かせることができ、むしろ奨励されていた。一方、客室乗務員として雇用されることが多かった女性は、乗客に大切にされ、支えられていると感じさせることを求められていた。こうした感情が、女性と男性にふさわしい行動についての文化的な考え方と非常にきれいに一致しているのは偶然ではない。女性はしばしば、より控えめであることを促される一方、男性には攻撃性がより許容される。総じてホックシールドの関心は、企業が外的な製品だけでなく、労働者自身の感情や情動の創出までを、どこまで強制し、管理できるのかという点にあった。
アーリー・ホックシールドが感情労働の概念を提唱したのは1979年のことだ。その後の研究者たちは彼女の研究のさまざまな側面を引き継ぎ、ファストフード店の従業員、警察官、校長などにおける感情労働について調査してきた。最初の研究発表からおよそ50年が経過し、社会は劇的に変化した。それに伴い、感情労働のあり方も変化したのだろうか。
仕事と感情をめぐる規範の変化
この問いに答えるには、2つの点に向き合うことが重要だ。仕事がどのように変化したか、そして感情面での期待を私たちがどのように理解しているかである。まず、仕事は多くの人にとって、はるかに不安定で、不確実で、先行きの見えにくいものになった。労働者を「従業員」ではなく「請負業者」として再分類する動きが広がったことで、企業は人件費を削減できるようになったが、それは同時に、フルタイム雇用に伴う多くの福利厚生を労働者が得られないため、雇用不安の増大とも結びついている。多くの労働者はまた、現在の会社を辞めた場合に他の雇用機会を追求することを禁じる競業避止条項の対象にもなっており、別の仕事を探しにくくなり、多くの人が不満のある仕事や低賃金の仕事に縛られている。今日、多くの労働者にとって全体像は、自分の仕事がかなり不安定に感じられ、その結果、ストレス、不安、心配が増しているというものだ。
同時に、ホックシールドが当初研究を発表した頃に比べて、感情、対人関係、そしてジェンダー的な期待に関する議論がはるかに広く行われるようになっている。今では、女性が家庭内での期待を管理するという目に見えない役割(予定の管理、家族のスケジュール、学校の用事など)を担っていることを指す「メンタルロード」や「認知的労働」という概念がある。また、異性間のパートナーシップにおいて女性がパートナーに感情的なサポートを提供する役割を指す「マンキーピング」という言葉も知られるようになった。これは、男性が女性に比べて親しい友人や感情的な支えとなる存在がはるかに少ないというデータを踏まえたものだ。日常的で、往々にして目に見えないパターンが、女性に対して社会や組織のつながりを維持するための労働をいかに強いているか、そしてそれがどのように見過ごされ、認められないままになっているかについて、語るための言葉や分析が格段に増えている。
今日の感情労働はどのような姿をしているのか
こうした経済的・文化的変化は、今日の仕事における感情労働のあり方を評価する上で重要な文脈を与える。不安定な仕事が増えたことで、サービス業に従事する人々に、顧客に価値ある存在として扱われ歓迎されていると感じさせる圧力がいっそう強くかかるであろうことは想像に難くない。もっとも、低賃金のサービス業についていえば、労働者自身が燃え尽きて過重な負担を抱え、企業が期待するとうたう「笑顔でのサービス」を提供する余裕を失っている場合もある。加えて、企業が労働を投資ではなくコストとして扱う傾向を強めているため、感情労働の負担が大きい低賃金の職(飲食サービスや小売を思い浮かべればよい)を切り離すことに、企業はますますためらいを覚えなくなっているかもしれない。さらに、多くの労働者、とりわけ女性は、家庭や人間関係、そのほか私生活のさまざまな場面で、感情に関わる別種のマネジメントを担っていることも、いまや広く知られている。これらを総合すると、感情労働を必要とする職場の状況が悪化し続ける一方で、感情労働への要求は高まっている、という状況に直面している可能性がある。
研究者・学者として、私は仕事に伴う感情的・社会的要求について、そしてそれらの要求が公的領域と私的領域の双方に存在することについて、より多くのことが分かってきたことを喜ばしく思う。こうした期待が、見過ごされがちなジェンダーの不平等をいかに維持しうるかについての理解が深まったことも有益である。現代の職場における感情労働の帰結に取り組もうとするならば、その影響だけでなく、それを生み出す力学そのものを検討する必要があると、私は考える。



